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第2章 五歳の誕生日
五願の儀式
しおりを挟む「さ、贈り物も受け取ったわけだし、次に行くわよ」
「え、まだ何かあるの」
もうなんか、どっと疲れてしまった。
「むしろ、これからがメインイベントなんだから、ほらもうちょっと頑張って」
「はーい。それで、何するの?」
「教会へ行くのよ」
「教会?」
教会と聞いて、シルヴァがああ、と納得した。
「そっか、『五願の儀式』か」
「なにそれ」
「『五願の儀式』とはね、五歳を迎えた子供全員がやる儀式よ。神様方に、無事五歳を迎えましたと感謝を伝える儀式なの」
「へえー」
七五三みたいだ。
「その時に、神様方からお祝いとして、一つ贈り物が届くのよ」
「えっ本当に?」
「ええ、人生で一度きり、一人に一つだけの宝物よ」
すごい、そんなものがあるのか。
「それって、何がもらえるの?」
「それは人それぞれね。例えば道具だったり、植物だったり、時には使い魔のような存在だったりもするわ。まぁ、動植物のようなものはとても珍しいのだけど」
「食べ物とかも?」
「勿論あるわ」
「ええー!」
それはちょっと損じゃないかな?一回食べたらなくなっちゃうよ!
「その人に必要なものとか?」
「いいえ、贈られる基準は分かっていないの。例えば、鍛治士を目指す人に、裁縫道具が贈られることもあるわ」
「…………」
もしかして:ガチャ。いや、そんなこと…無いよね?
「まあ、あんま期待すんなよ。何が来るかわかんねえんだから」
「シルヴァもやったんでしょ?何貰ったの?」
「……」
えっ、酷いものなの?
ノエルが近くに寄ってきて、耳打ちで教えてくれた。
「魔道具の筆記用具ですよ」
「えっ、いいじゃん」
「それが、グレイさんと同じものだったようで…」
「国宝級魔道具に、なんの不満がある」
「べつに!!!!」
「本人は、勇者アランフィアードと同じような、魔剣が欲しかったようです」
「シル、ぜいたくもの…」
グレイが実物を見せてくれた。それは、日本でも見たことのある、万年筆だった。紺色の艶やかなボディーに、金の刻印でグレイの名前が刻まれている。
「神からの贈り物は、贈られたものにしか使えません。私のこの筆記用具は、いくら使用してもインクが切れず、破損することもないのです。それに加え、特別な力を持っています」
「特別な力?」
「ええ、使用者制限をかける能力です」
「あっ」
さっきのマジックバッグの使用者制限は、グレイ本人がかけるのか。てっきり道具屋さんがやってくれたり、誰でもできるのかと思ってた。
「使用者制限をかける能力は、この国の中でも限定された人しか使えません。勿論、神からの贈り物の使用者を書き換えるようなことはできませんが、他のものにならなんだって使えます。また、それを解除することも可能です」
「でも、それって悪人に渡ったら大変なことになるよね?」
「ええ、ですから、贈られた物は国に報告しなければならないという義務があります」
「そうなんだ」
そんなすごい道具をもらえる可能性もあるのか。シルヴァは充分いいものを貰ってるじゃん。
「ちなみに、ノエルは?」
「僕はこの靴です」
「靴?」
確かにいつも履いてるけど…特になんの変哲も無い、革のブーツに見える。
「これは、魔道具というほどのものでは無いのですが、五歳でもらった時から履き続けていても、ずっとサイズがピッタリなんです!とても動きやすくてお気に入りなんです」
へえ、そういうのもいいなあ。
余談なんだけど、ノエルはとっても足が速い。その速度はまるで漫画みたいでちょっとびっくりする。そっか、靴のせいもあるのかな。
「母さまも持ってるの?」
「ええ、私はこの髪飾りよ」
母お気に入りの髪飾りだ。まるで女神の月桂冠みたいで僕も大好きだ。少しきつめに見える母が着けると、とても優しく見える。
「これをつけていると、どれだけ仕事をしていてもずっと頭が冴えているのよね」
「レオナ様、ほどほどになさいませ」
「分かっているわ。副作用として、外すとどっと疲れが出るからね。緊急時のみよ」
と、とんだワーカーホリック専用アイテムだったようだ。
うーん、ぼくはどんなものがもらえるんだろう。
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