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不器用なこども

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 まだ温かいうちに手元のブニェロスを食べ終え、すっきりとした果実水を飲んで一息つく。
 屋敷で口にするものより甘みがなく水っぽいけれど、口の中に残る脂っこい後味を程よい酸味が流してくれる。
 隣同士で出店しているのは、この相乗効果を知ってのことなのだろう。
 もう昼食時をとうに過ぎた時間だが、ブニェロスと果実水の屋台には客足が途絶えることなく、こうして座って眺めている間にも次々と売れていく。
 愛想のよい店主だけでなく、受け取る客もみな一様に笑顔だ。
 おいしいものを食べられるのだから喜ぶのは当然としても、対価を払って食事を入手して、または食事を提供して金銭を受け取って、そこに喜びが生じるのは何となくよいものだなと思えた。
 貨幣と物品の巡り、交易や商業などについて一層の興味が湧いた。またアダルベルトに会える機会があったら、もう少し詳しい話をねだってみよう。

 手の中で残り少なくなった果実水のカップをもてあそびながら隣を見ると、ノーアの持つ紙包みの中身はあと三分の一というところまで減っていた。
 小さく息をつき、ちびちびと果実水を飲んでいる。
 その横顔はポポの店でくつろいでいた時のように落ち着き、血色も回復している。
 肌の色が薄いから、血圧や疲労が顔色に影響しやすい性質なのだろう。

「もう疲れは取れたようだな」

「……別に、大して疲れてはいないよ」

「そうか? ポポの店から結構歩かせてしまったから、そろそろ足がだるいだろう。聖堂まではまだ少しかかりそうだし、今のうちに十分休んでおけ」

 そう言って、少し行儀は悪いが花壇に座って浮いている足をぶらぶらと揺らして見せる。
 前回ここへ座った時は下りるために飛び降りる必要があったけれど、あの時よりも背が伸びたから地面に足が近い。
 座ったまま足がつくようになるまでに、もう一度くらいは来られるだろうか。

「リリアーナ様も、もしお疲れのようでしたら別邸でお休み頂くこともできますので、ご無理はせず仰ってください」

「ああ、あの屋敷か。三年前に寄った時は中に入らないままだったしな。……だが、ここから向かうとなると、聖堂とは正反対ではないか?」

 見上げる聖堂の塔と通りの向きから頭の中で地図を描いてそう言えば、カミロは小さな首肯を返す。
 現在地から見ると、聖堂と別邸はちょうど同じような距離にある。もし寄るとすれば遠回りにはなるが、暖かい室内できちんとした休息は取れるだろう。
 とはいえ、余計に歩くことになってそれで疲れては意味がないのでは……なんて思っていると、「別邸から馬車を出して聖堂までお送りします」とカミロは言い添えた。
 さてどうするか、選択権をノーアに投げて反対側へ顔を向ければ、わかりやすく嫌そうな顔をされた。

「もう休憩は十分だよ、君だって次の目的地があるんだろ」

「えーと、次はフェリバが良く行っているらしい焼き菓子の店だ」

「また食べ物……」

「次は手土産を見繕うのが主な目的だ、もちろん自分用も確保するがな。さすがにこれ以上食べては夕食が入らなくなってしまう」

 正直に言えばまだ満腹ではないし、焼き菓子の一枚や二枚なら軽く入るが、一日に必要な熱量をそろそろ超過しそうだから我慢しておこう。
 できたてが一番おいしいパンケーキやブニェロスとは違い、焼きしめた菓子は日持ちするため急いで食べる必要もない。

「多少歩くくらいは問題ない。普段あまり長く歩かないから、少し鈍っていただけだよ」

「お前は見るからに体を動かしていなさそうだからな。もっと食べてもっと動いたほうが良いんじゃないかと思うが……まぁ、無理にとは言うまい」

「必要ない。最低限食べていれば、死にはしない」

 ノーアは木製のカップに口をつけながら、素っ気なくそんなことを言う。
 確かに食事と睡眠さえ取れていれば死ぬことはないかもしれないが、それは果たして「生きている」と言えるのだろうか。
 それとも、先刻話した自分の生きる理由についての話を揶揄されているのか。
 今まで接したことのある中に類似したタイプに該当するものがなく、どうにも掴みにくい。
 この意欲とか覇気とかいうものが丸きり欠如している少年は、普段は一体どんな生活をしているのだろう。

「……食事と運動と睡眠、これのどれが欠けても発育に影響が出る。わたしはもっと背丈を伸ばしたいし、もう寝込むのは嫌だから健康に過ごしたい。お前はそうは思わないのか?」

「背、は、ともかく、健康管理はされている。問題ないよ」

「あと、体が元気でないと食事もうまくないからな」

「結局君はそれじゃないか……本当に食べることしか頭にないのか」

 柳眉をぎゅっと寄せて呆れを示すが、そうした表情をずっと観察している間に何となくわかってきた。
 この少年が柔軟に表情を動かしているうちは、そう不快に思ったり怒ったりはしていない。
 おそらく台詞とセットで出てくる憎まれ口と同じ、相槌みたいなものだ。
 素直でないというよりは、そういった性質なのだろう。
 一度そうと理解できれば、不可解に思っていた態度や表情の数々も納得できるというもの。難解な技術書の端に求めていた摘要欄を見つけたような心地だった。

「別に食べることしか考えていないわけではないが。わたしはそれでいいんだ、おいしいものを食べるのが生き甲斐だからな」

「……」

「そういえば先ほどは訊きそびれたが、お前のほうはどうなんだ。何のために生きている?」

「僕は……」

 口元へ運びかけていた紙包みをまた下ろして、ノーアは口を噤む。
 これまでのような皮肉が返ってくることはなく、視線も落ちたまま。
 ……これは、あんまりよい話題ではなかったようだ。
 何をするのが好きか、というような軽い質問のつもりだったのだが、どうも違うものを引っかけてしまったらしい。
 答え難いようなことを無理に聞き出すつもりはない。さっさと話の方向転換をしてしまおう。

「そういえば、普段はあまり屋外を歩かないということだが、部屋の中だってある程度の運動はできるだろう?」

「部屋の中を歩き回れってのか?」

「いや、歩かなくてもいい」

「じゃあ走れと?」

「走らなくていい……というか走れないだろう、お前の体力じゃ壁を一往復で息切れするんじゃないか?」

「……」

 唇を線のようにして半眼を向けられるが、虚ろな視線を落としたままよりはずっといい。
 まぁ聞け、と言って軽い身振り手振りを交えながら話をする。

「たとえば、座りながらできることなら――」


 教えるのはそう大した知識でもない、何年か前に侍女たちへも同じようなことを伝授した。
 全身を一度に動かすような激しい動作をしなくとも、要所に力を込めて丹念に動かせば同等とまでいかずとも、それなりの運動にはなる。
 腕、肩、背、腹、脇腹、それから足の各所。フェリバに教えたことよりもう少し簡易な説明をすると、意外にもノーアは文句を挟むことなく真剣な表情で聞き入った。
 これを実践するかは本人次第だが、覚えていても損はないはず。

「大きな筋肉に少しずつ負荷を与えて鍛えておけば、体を動かしても疲労しにくくなる。そうすれば体力作りの運動も少しはたやすくなるだろう、それこそ、ちょっと走っても息切れしにくいとかな」

「世間擦れしていないくせに、何でそういう余計なことばかり詳しいんだ?」

「早く成長し……いや、丈夫に育ちたくて調べたからな」

 書斎にあった生体学に関する書籍の記載以外は、全て生前に得た知識だ。
 キヴィランタの住民も聖王国側のヒトも、二足歩行の体であれば筋量の多寡にこそ差はあれど、骨と筋の造り自体は大差ない。
 魔王城での練兵にあたり初期の鍛錬に用いていた動作だが、まさかヒト相手にも同じことを教えるようになるとは思わなかった。
 蓄えた知識は、何であれ無駄にはならない。
 ひとり満足して、うんうんとうなずいた。


 雑談に興じている間に、残っていたブニェロスはすっかり冷めてしまったことだろう。
 それでもノーアは何も言わずに小さな欠片を三口かけて食べ終え、紙包みを手の中で折りたたむ。
 適当に丸めるのかと思って手元を眺めていると、紙をひっくり返してまた折ってと繰り返すうちに、それはずいぶんと鋭角な形状に仕上がった。
 翼を広げた小鳥のようにも見える。ノーアはその紙の底部をつまむと、手首のスナップだけで斜め上空に投げつける。
 風の隙間を縫うように飛び立った紙の小鳥は、むらのある香茶色の油紙でできているから、さながら細身のコゲラだ。
 向い側の街路樹を目掛けて優雅にすいと飛んでいくが、空気抵抗を受けてすぐに斜め横へと墜落をはじめる。
 薄い紙の鳥など、地面へ落下しただけでたやすく折れてしまうだろう。

「――舞え」

 脆弱な小鳥が何だか惜しく思えて、通行人に魔法師が紛れていてもわからない程度の、極々簡易な構成を描く。
 広い空間、豊富な大気、これなら精霊たちに助力を願うまでもない。
 自力のみで回す微弱な魔法は、傾いだ翼の下にわずかばかりの気流を生じさせた。
 そのままゆるやかな風に乗った紙細工の小鳥は、街路樹の周囲を羽ばたきもせずに回ってみせる。
 通行人の中から幼い子どもらが手を伸ばしてそれを追いかける。
 彼らの指先をするりとかすめ、もう一度木のまわりを旋回し、ゆっくり屋台まで戻ってくると用意されている屑籠の中へすとんと落ちた。
 高い声を上げて騒ぐ子供らを尻目に、隣から何やら呆れを多分に含んだ視線を向けられる。

「無駄に器用なことするね」

「お前は悪態をつかねばものを言えないのか?」

 そんなことを言い返し、ノーアが折っていた様子を思い出しながら、自分の持っている包み紙も同じように折ってみる。
 折紙細工はいくつか見たことがあるけれど、自らの手で作るのは初めてだ。
 長辺に合わせて折って、開き、折り日に沿って両端を折って。
 目で覚えたいくつかの工程を踏み、最後に翼の部分を開いて完成したのは、端々を骨折しているような無残な小鳥だった。
 関節が多いから、どちらかというと虫っぽい。

「……」

「……」

 わずかに落ちた沈黙をなかったことにして、花壇から立ち上がり、そのまま自らの足で屑籠まで行ってその中に包み紙を捨てる。

「不器用……」

「黙れ。やったことがないから、ちょっと失敗しただけだ。いくらか練習すれば綺麗に折れる。はずだ」

 悔し紛れにカミロからも小さく折りたたまれた包み紙をむしり取った。
 掴んだそれは器用に端を揃えられ、ごみとは思えないほど綺麗な四角形に折りたたまれている。
 ぺいっと捨てた。

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