42 / 50
第3章.地上界編
第42話.『黒い影』の恐怖!(その2)
しおりを挟む
その夜中、和諒の部屋にて。
部屋の引き戸は閉まっており、部屋の灯りも漏れては来ていません。
和諒は、もう寝た様ですね……
……!
いや、何やら声がします。
どうやら、扉の向こうから聞こえるみたいです。
引き戸からそっと聞き耳を立ててみると……寝言とかの類ではありません。
これは……悲鳴です!
……く……来るな……黒い影が……
……な……何で身体……動か……ないっ……
……やめろっ……うわぁぁっ……
目の前が暗く……あがぁぁぁっ!……
………………
…………
……
月明かりの下、窓から和諒の部屋の様子が見えます。
部屋にいるのは、虚ろな目をして立ち尽くす和諒。
そして、左手首の傷痕と繋がる黒い影。
黒い影は傷痕に吸収され、傷痕は綺麗に無くなったんです。
翌朝、和諒の部屋にて……
朝一番に様子を見に来たのは、京子です。
「おはよう、和諒。
左手首の傷痕の方は、まだズキズキし……」
次の瞬間、京子は言葉を失いました。
和諒の部屋はベッドも布団も箪笥もメチャメチャに荒らされており、壁のあちこちに血糊がついています。
これは、「物盗り」の仕業ではありません。
どちらかと言うとこの部屋から脱出しようとして大暴れして、それでも失敗した跡と見た方が正しいと思われます。
そして部屋の中央にはその大暴れした張本人、和諒が仰向けで倒れていたんです。
シュン……シュン……
和諒の身体からは黒い粒子が、まるで “ 抜けて行く ” かの様に徐々に蒸発して上へと舞い上がっています!
京子は、ココで何かが起こったんだとすぐ悟りました。
そして、その場で足袋を脱ぎ始めました。
裸足になった京子は、気を円で囲む様にイメージすると……
両手両足の升掛け線が発光し始め、そこから伸びる蒼白い線が円となり各々に繋がって行くではありませんか。
白夜輝環紋です!
そして京子は一度目を閉じ、再びゆっくりと目を開けてみると……
そこで京子が月環を通して見たのは、霊体が徐々に肉体から剥がれて行きつつある、半死半生の和諒の姿だったんです!
しかし、そこにはもうひとつの現象が……!
キィン……キィン……
和諒の霊体の上から覆い被さる様に、“ シャンパンゴールドの帯 ” が黒い粒子の蒸発を最小限に喰い止めているんです!
「和諒っ……?
コレじゃ、手を突っ込めないわ!」
しかも京子が和諒の部屋に入ろうと手を伸ばした瞬間、神次元の結界に覆われた部屋の中から伸びるドロッとした何かが京子の腕を押し戻すんです。
これは一体……
まるで、2つの相反する力が和諒の中でせめぎ合ってるみたい。
かつて「白い巫女」と呼ばれ、かつて黒い巫女を打ち倒して地上界破滅の危機を救った私でさえ……この部屋では蚊帳の外。
ここまで無力感に苛まれたのは初めてだわ。
もう、何もしてあげる事が出来ないの?
・精神世界
一方、ここは和諒の精神世界。
和諒は精神を “ 禁忌の力 ” に浸食され、気を失ったまま「霊体の鎖」に雁字搦めに縛られています。
そして、和諒の身体に巻き付く様にへばり付いて離れない黒い影。
黒い影からは漆黒の羽根が伸びています。
そこに、ひた……ひた……と近付く人影があります。
全くもって、悪趣味ですね……ふぅ。
その姿は全身が神々しく輝いており、背中には純白の4対の羽根を纏っています。
そして、一番目に付くのは……神気の糸で編み込んだ純白のきぐるみ。
そう、サクラが着ている “ キュイぐるみ ” にウリふたつなんです!
ナ、ナゼ女神ノオマエガ、ココニ……?
だっても何も、和諒と桜はワタシが女神になった後にスキル『輪廻転生』でお母さんに “ 最後の親孝行 ” としてプレゼントした「転生体」ですから。
ワタシの神気でシンクロ出来るのは、当たり前です。
その代わり女神になる代償として、ワタシっていう “ 娘 ” の存在は永久に抹消されてるんですけど……
その為、桜は京子の “ 孫 ” なんです。
京子は桜を孫と認識出来ますが、自分に娘がいたという事実は永久に思い出せません。
ちなみに、ケルピーに襲われてサクラが瀕死になった時にシェリルとサクラ、2人の精神世界に出て来たのもこの女神さまです。
女神のワタシがこのアストラルボディで神界の外に向けて干渉するのって、実は相当なリスクがあるんです。
でも、ワタシの転生体である和諒の精神世界でなら話は別です!
結界を創り出す際に、ワタシの霊体が必要にはなっちゃうんですけど。
貴方と直接勝負するのはあの2人に任せて、ワタシは和諒を……我が子を護るのに専念します!
そうして女神は和諒に直接触れ、“ 禁忌の力 ” の浸食を食い止め始めたんです。
「ナニ、『女神ノ結界』ダト……!
忌々シイ……!」
和諒から漏れ聞こえる声は禍々しく、けれど確かにそう言ったんです!
「この部屋全体に、結界を張らせて貰いました……
ワタシの霊体に賭けても、これ以上は浸食させません!」
しかし、女神が霊体を削って創り出したこの結界、一体いつまで持つんでしょう……?
女神の霊体が尽きる前までに、誰かがこの黒い影への対抗策を見出してくれないと……!
部屋の引き戸は閉まっており、部屋の灯りも漏れては来ていません。
和諒は、もう寝た様ですね……
……!
いや、何やら声がします。
どうやら、扉の向こうから聞こえるみたいです。
引き戸からそっと聞き耳を立ててみると……寝言とかの類ではありません。
これは……悲鳴です!
……く……来るな……黒い影が……
……な……何で身体……動か……ないっ……
……やめろっ……うわぁぁっ……
目の前が暗く……あがぁぁぁっ!……
………………
…………
……
月明かりの下、窓から和諒の部屋の様子が見えます。
部屋にいるのは、虚ろな目をして立ち尽くす和諒。
そして、左手首の傷痕と繋がる黒い影。
黒い影は傷痕に吸収され、傷痕は綺麗に無くなったんです。
翌朝、和諒の部屋にて……
朝一番に様子を見に来たのは、京子です。
「おはよう、和諒。
左手首の傷痕の方は、まだズキズキし……」
次の瞬間、京子は言葉を失いました。
和諒の部屋はベッドも布団も箪笥もメチャメチャに荒らされており、壁のあちこちに血糊がついています。
これは、「物盗り」の仕業ではありません。
どちらかと言うとこの部屋から脱出しようとして大暴れして、それでも失敗した跡と見た方が正しいと思われます。
そして部屋の中央にはその大暴れした張本人、和諒が仰向けで倒れていたんです。
シュン……シュン……
和諒の身体からは黒い粒子が、まるで “ 抜けて行く ” かの様に徐々に蒸発して上へと舞い上がっています!
京子は、ココで何かが起こったんだとすぐ悟りました。
そして、その場で足袋を脱ぎ始めました。
裸足になった京子は、気を円で囲む様にイメージすると……
両手両足の升掛け線が発光し始め、そこから伸びる蒼白い線が円となり各々に繋がって行くではありませんか。
白夜輝環紋です!
そして京子は一度目を閉じ、再びゆっくりと目を開けてみると……
そこで京子が月環を通して見たのは、霊体が徐々に肉体から剥がれて行きつつある、半死半生の和諒の姿だったんです!
しかし、そこにはもうひとつの現象が……!
キィン……キィン……
和諒の霊体の上から覆い被さる様に、“ シャンパンゴールドの帯 ” が黒い粒子の蒸発を最小限に喰い止めているんです!
「和諒っ……?
コレじゃ、手を突っ込めないわ!」
しかも京子が和諒の部屋に入ろうと手を伸ばした瞬間、神次元の結界に覆われた部屋の中から伸びるドロッとした何かが京子の腕を押し戻すんです。
これは一体……
まるで、2つの相反する力が和諒の中でせめぎ合ってるみたい。
かつて「白い巫女」と呼ばれ、かつて黒い巫女を打ち倒して地上界破滅の危機を救った私でさえ……この部屋では蚊帳の外。
ここまで無力感に苛まれたのは初めてだわ。
もう、何もしてあげる事が出来ないの?
・精神世界
一方、ここは和諒の精神世界。
和諒は精神を “ 禁忌の力 ” に浸食され、気を失ったまま「霊体の鎖」に雁字搦めに縛られています。
そして、和諒の身体に巻き付く様にへばり付いて離れない黒い影。
黒い影からは漆黒の羽根が伸びています。
そこに、ひた……ひた……と近付く人影があります。
全くもって、悪趣味ですね……ふぅ。
その姿は全身が神々しく輝いており、背中には純白の4対の羽根を纏っています。
そして、一番目に付くのは……神気の糸で編み込んだ純白のきぐるみ。
そう、サクラが着ている “ キュイぐるみ ” にウリふたつなんです!
ナ、ナゼ女神ノオマエガ、ココニ……?
だっても何も、和諒と桜はワタシが女神になった後にスキル『輪廻転生』でお母さんに “ 最後の親孝行 ” としてプレゼントした「転生体」ですから。
ワタシの神気でシンクロ出来るのは、当たり前です。
その代わり女神になる代償として、ワタシっていう “ 娘 ” の存在は永久に抹消されてるんですけど……
その為、桜は京子の “ 孫 ” なんです。
京子は桜を孫と認識出来ますが、自分に娘がいたという事実は永久に思い出せません。
ちなみに、ケルピーに襲われてサクラが瀕死になった時にシェリルとサクラ、2人の精神世界に出て来たのもこの女神さまです。
女神のワタシがこのアストラルボディで神界の外に向けて干渉するのって、実は相当なリスクがあるんです。
でも、ワタシの転生体である和諒の精神世界でなら話は別です!
結界を創り出す際に、ワタシの霊体が必要にはなっちゃうんですけど。
貴方と直接勝負するのはあの2人に任せて、ワタシは和諒を……我が子を護るのに専念します!
そうして女神は和諒に直接触れ、“ 禁忌の力 ” の浸食を食い止め始めたんです。
「ナニ、『女神ノ結界』ダト……!
忌々シイ……!」
和諒から漏れ聞こえる声は禍々しく、けれど確かにそう言ったんです!
「この部屋全体に、結界を張らせて貰いました……
ワタシの霊体に賭けても、これ以上は浸食させません!」
しかし、女神が霊体を削って創り出したこの結界、一体いつまで持つんでしょう……?
女神の霊体が尽きる前までに、誰かがこの黒い影への対抗策を見出してくれないと……!
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
きぐるみ♡女神伝
きぐるみんZ
ファンタジー
【ワタシ、日本一アキラメの悪い女神ですから!】
【ストーリー】
「何かを手に入れる為には、何か大切なモノを犠牲にしなくちゃダメなんです。」
生まれつき、少女は異世界の住人達と『闘う力』を持っていました。
なぜ少女は、普通の人には持ち得ない力を扱う事が出来るんでしょうか?
実は少女には……出生の秘密があったからなんです。
その秘密、一緒に紐解いて行きましょう。
ゆっくりと、ね……
【新しい技をリクエストして頂ければ、新技として登場するかも?】
『胸キュン♡流格闘術』……
それは、女の子らしい可愛らしさ、所作を最大限に活かした、しかし技の威力を疎かにしていない「女の子の、女の子による、女の子の為の」格闘術。
その中には、懇意にして頂いている読者さんのリクエストから生まれた技もあります。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる