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第2章.日本編

第36話.試験の前にすべき事(その2)

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 京子おばあちゃんがシェリルの卒業試験をどうするか考えていると、誰かがツカツカ歩いて近付いて来ます。

「ばあや、さっくー、今帰ったぞー!」

 彼の名前は上村和諒うえむらかずま、年齢は14才で桜の双子の兄です。
双子なだけあって顔は桜に似ていますが、桜が生まれつきダークブラウンの髪なのに対し、和諒は生まれつき黒髪で後ろで束ねています。
背丈は桜とほぼ同じですが、男の子なので全体的にガッチリした印象を受けます。

 全寮制の学校に行っているんですが、今は夏休みで寮にはいられないので全員里帰りしているみたいなんです。
そんな訳で、久し振りに寮から実家へと帰って来た和諒なんです。

 そんな和諒の顔が、一瞬ピシッと引きりました。
妹の桜が知らない男の腕に自分の腕を絡め、幸せそうな顔をしてフニャフニャしているのを見たからです。

「お前、妹のさっくーに何をしてんだぁ!」

 和諒は、非常にプリプリしています。
確かに、兄として妹がいつの間にか見知らぬ男とラブラブモードになっていたら捨て置けないかも。
しかも、お世辞にもシェリルは自分みたいなガッシリタイプではなく、むしろナヨナヨしている印象を受けます。

「和諒お兄ちゃん、私たち結婚を約束してるの!
るるんっ♪」

 桜はニッコリ笑った目が一本筋になり、口元でちっちゃい犬歯がキュートにふにゃんと緩んでいます!

「おい、今のは本当なのか?」

和諒は、慌ててシェリルに問い正します。

「そうよ、私が許したのよ!」

 京子がシェリルの肩に手をかけ、和諒に向かってサムズアップをしています。

「さっくーがひと目惚れ?
誰よりも現実を重視する、超現実主義者のさっくーの人生観をココまで変えるなんて……
お前、一体ナニ者なんだ……?」


 えっ、そうだったの、桜……?
すっごい言われ様……


 桜はシェリルの腕の中で気不味そうにモジモジして、目を逸らして合わそうとしません。
すると、京子が和諒にけしかけます。

「和諒、手っ取り早くこの方の “ 人と為り ” を知る事が出来るイイ方法がひとつあるんだけど……
試してみる?」

 和諒は是非も無し、とウンと頷きます。
そして、京子はシェリルの方にクルリと振り向いて言いました。

「シェリルさん……、卒業試験で闘ってもらうのはこの和諒よ。
もちろん、全力でね。
決着が着いた後の攻撃、または危ないって思った行き過ぎの行為は身体を張って止めに入るからね!」

 シェリルと和諒は、お互いに顔を見合わせます。

「ボクが……桜のお兄さんと?」

 和諒は、シェリルの顔を覗き込みます。
シェリルを見測ろうとしているんでしょうか?

「お前と闘えばヤれば……分かるのか?
でも俺は闘いに関しては未熟だから、手加減は出来ないぞ?」

 元より、シェリルの目は真剣です。
和諒の威圧的なオーラを前にしても、気圧されていません。

「桜への愛を、家族の人みんなにも認めて欲しいんです!
手加減無しは、覚悟の上です!」

 シェリルはそう言いながら、無意識にマジックスクロールを7枚引き抜き小さく折り畳みます。
そして、履いているカルソンの後ろポケットの左側に押し込みます。
ちなみに、右側にはマジックスクロールを入れています。
無意識とは言え、まるでこうなる事が予想出来ていたかの様に……

「お互い、了承の上って事ね。
それで和諒、身体は出来てるの?
ウォームアップの時間を取るわよ?」

 和諒はサムズアップしてそのまま親指を自分の胸にトントンと叩き、最後にピースサインをします。

「大丈夫、学校からココまで走り込んで来たからさ。
身体は出来てるよ!」

 サクラはシェリルの顔を見て、大丈夫?って顔をして心配しています。

「大丈夫だよ、サクラ。
お兄さんにも、必ずボクの全力を認めてもらうから。
いや……認めさせるから!」

 そう力強く言い切るシェリルを見て、サクラはシェリルに頼もしさを感じてもう一度惚れ♡直します。


 こうして祖母の京子と妹の桜、そしてフィリル母さんが見守る中……
シェリルと兄の和諒の卒業試験を兼ねた闘いが今始まったのでした。

















 始まる直前、京子はフィリルにこう聞きました。

「貴女の方の特訓はどうなの?
あの子、闘いの場で2人の横に一緒に立てそうかしら?」

 すると、フィリルはこう京子に言ったんです。

「さすが、全ての海を統べる “ あのお方 ” の娘さんよねぇ~。
あの体躯に余りある魔力容量で、際限無く魔法を唱え続ける事が可能なのが分かったのよ!
でも如何せん、あの子は闘うのが嫌いらしくてぇ~。
実戦経験が殆ど無いのよ、使える魔法も使い道の分からないしょぼいのばかりでね。
でも、もしあの子の中の『古龍王』の血が目覚めたら……
3人の中で一番大化けするのは、あの子かもねぇ~。」



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