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第1章.プロローグ

第15話.真の力へ覚醒します(その2)

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 「魔法に長ける者との闘い」に関しては、闘いの経験値の差がモノを言います。
例えば今回みたいに360度霧に包まれて、視界が完全にホワイトアウトしてしまった時の闘い方……
その正解は、『どういう方法でもいいから、風を起こして霧を吹き飛ばす』。
それがセオリーなのですが、闘いの経験値の少ないサクラにはこのピンチを脱する方法が思い付きません。

「お眠りなさい、ウォーターシュラフ水の寝袋!」

 ケルピーが何やら魔法を唱えましたが、サクラには何をしたのか全く見えません。


 しばらくして、サクラとケルピーの周りだけ真っ白に包まれていた霧がようやく霧散した時……
シェリルは、とんでもない光景を目撃してしまったんです!
何と、ケルピーの水の尻尾がサクラの首に巻き付き、宙ぶらりんにしたまま締め上げています。
サクラはウォーターシュラフのせいで手足の身動きが取れず、水の中で苦しそうにゴボ……ゴボ……と藻掻いています!

「このまま、絞め落としてあげるわねぇ!
ホラ、そこの貴方……
このままじゃあこの子、失神するだけじゃなくて本当に昇天しちゃうかもよぉ……?」

 シェリルは、自分の足を見てみます。
両足とも、情けない程ブルブル震えているのが分かります。

 このままじゃ、無力なボクの目の前で……サクラが……!

 再び、シェリルがサクラの顔を見ると……
シェリルのココロの叫びも虚しく、サクラはウォーターシュラフの中で絞め落とされて失神してしまい、そのままピクリとも動かなくなってしまったんです!

「サクラ~っ!」

 クスクスと笑うケルピーの前でシェリルが泣きながらそう叫んだ瞬間、何と時が止まったんです……



・シェリルの本心


 何も動かない虚無の空間の中、シェリルの脳内に語りかける声があります。
この感じは異世界の住人でも、人間でもない……
とても透き通った、優しい声です。


ねぇ、なぜアナタはそんなに泣いているのですか……?

救いたかった人が自分の目の前で蹂躙されるのを、自分はただ見ているしか出来なかったから……

じゃあ、アナタにもう少し力があればその人を救えたかも知れない、と思っているんですか……?

救えるかどうかは分からないけど、少なくとも救おうと行動を起こす事は出来るよ……


 優しい声がシェリルにまたひとつ、質問を投げ掛けます。


その人は、アナタにとってどんな存在ですか……?

ボクの最愛の女性ひとだよ!
ボクはこの女性が、サクラがココロから好きなんだ……
サクラからは、何度もサインを出してくれていたのに……
失った後じゃないと気付けないなんて……


 シェリルは悔しさで、涙が次から次へとポロポロ流れて来ます。


あの……、まだ手遅れではありませんよ?
本当は干渉してはいけないんですが……
“ 事 ” の原因の一端は、女神であるワタシにもありますから。
想いは、力になるんですよ。
コレを使って今度こそ、その人を助けてあげて下さいね……


 そう言って女神さまが渡してくれたのは、シャンパンゴールドに輝く光の帯の片端だったんです。


さぁ、今こそアナタの、本当のキモチを叫ぶんです!


 シェリルは涙を拭いて自分の胸に手を当て、静かに目を閉じました。


 サクラ、キミを失う思いを味わって初めて自分の本当の想いに気付いたよ。
『本当に大切なモノは、失って初めて気付く』
って、本当だったんだね。

 『言霊の剣』を自在に顕現させる事が出来る様になった時に、
サクラの存在は “ 気になる女の子 ” から「好きな女の子」へ……

 そして、今度はサクラが命の危機に瀕した時に、
サクラの存在は「好きな女の子」から『愛すべき女性』へ……

 まさに、「恋」から『愛』へと昇華したんだよ!


 シェリルは目を開けました。
今この空間にいるのは、愛するべき人が昇天して行くのを、目の前で泣きながら見ている事しか出来ない弱い男ではありません。

 今こそ、想いを力にする時です!


















「キミの事が好きだっ、サクラ!
今度こそ、絶対にキミを助け出すんだぁっ!」

 パリィィィンッ……!!!

 止まっていた時間が、まるで割れたガラス窓の様に砕け散ったんです!






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