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第1章.プロローグ

第07話.許嫁もダダ甘♡です(その2)

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 サクラは、シェリルの元へモジモジと身を捩らせながら歩み寄ります。

「ねぇ……シェリル……くん?
もし良かったら、ココを案内しましょうか?」

「あの……サクラさん?
そうもゆっくりはさせてもらえそうにないんですけど……?」

 シェリルは、震える指でサクラの後ろを指差します。
するとサクラの後方、観光客に混じってレプラコーン達の姿が6匹……
白川郷に迷い込んだ異世界の住人は、どうやらシェリルだけでは無かったみたいです。
明らかに、彼らの姿が “ 視える ” ボクたちだけを標的にしているみたい。


 もう、せっかくいいムードなのに……
人の恋路をジャマする障害は、例えどんなヤツでも……


「じゃあ……ワタシの『胸キュン♡流格闘術』に任せて!
シェリルくんを守りたいの!」


 シェリルくんに、いいトコを見せたいの!


 サクラは、観光客の群れをスルスルッと華麗に避けてレプラコーン達に近付きます。
まるでダンスを踊っているかの様な、洗練された動きです。

 そして、長靴に両脚を突っ込んでピョンピョン跳び跳ねて来るレプラコーンの動きに合わせて……

「タイミングを合わせて……顎クイッ♡!」

 跳び跳ね終わりを狙い、レプラコーンの顎に『胸キュン♡流格闘術』の顎クイ♡をカウンターでヒットさせました!
カウンターの顎クイ♡を喰らったレプラコーンは、大地から引き剥がされて体躯が浮いてしまいます。

「そしてトドメの……壁ドン♡っ!」

 最後に空中で回避も受けも出来ないレプラコーンの土手っ腹に気を込めた掌底突き、壁ドン♡を当てたんです!
まともに喰らったレプラコーンは、放物線では無く真っ直ぐ吹っ飛んで行きます!
シェリルは、この技の威力に目が釘付けになります。


 この技の為の『ワンショルダートップス』だったんです!!!


 あんなヒラヒラした服では、技がレプラコーンに当たった途端に技の威力で袖から肩周りにかけてビリビリになってしまいます。
だからワンショルダートップスで、技を繰り出す方の肩をあえて最初から剥き出しにしていたんです!

 このコンボ攻撃をを全てのレプラコーンを相手に計6回、事も無げにやってのけたんです。
シェリルは、ノびたままピクピクしている6匹のレプラコーンを傍目はために、

「『胸キュン♡流格闘術』……スゴい……」

と今度は技の緻密なコントロールに言葉を失っています。

 この技の威力ではレプラコーンも一発で昇天してしまうハズなのに、あえて技を貫通させて威力が外に抜けて行く様に撃つ事で致命傷を避けています。

「サクラ、これだけの技の威力がありながら結局1匹もレプラコーンを昇天させずに終わらせちゃうなんて……」

  するとサクラはニッコリ笑って、でも胸を張ってこう言ったんです!

「シェリルくん、格闘術には大きく分けて2つの考え方があるの。
拳に殺気を籠める “ 殺人拳 ” と……
拳に慈愛を籠める “ 活人拳 ” 。
闘った結果、モンスターを昇天するにしても、活かしたままにしておくにしても……
ワタシは、モンスターを活かすのが本来の格闘術のあるべき姿だって思ってるのよ。
ワタシはまだまだ未熟だから、殺気に “ 溺れない ” 様に気を付けなくちゃ。
だって、『胸キュン♡流格闘術』は “ 活人拳 ” だもんね!」


 イヤイヤイヤ、ダダ甘♡になってる今のサクラだったら、殺気に溺れる可能性は極めて低いと思いますよー♡


 サクラは、それよりもシェリルに怪我が無かった事の方がとても嬉しそうです。
シェリルも、今回の出来事でサクラが自分と同じ不殺ころさずの誓いを立ててくれている事を確認出来て、サクラと同じ方向を向いて一緒に旅を出来る事が嬉しくて仕方ありません。

「サクラさん、ありがとねっ!」

 だからシェリルはサクラに対し、自然に感謝の言葉が出て来ました。

「どういたしましてっ!」

 サクラもニコニコ笑顔で、とても嬉しそうです。
端から見ると、初対面同士の2人にはとても見えません。


















 ホント、シェリルくんにダダ甘♡よね……ワタシ。
でも、こういう恋の仕方も……アリかもね!










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