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Chapter1 オタクに優しいギャルはいるかわからないけど、ギャルに優しいオタクはいる
Chapter 1-4
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アズサが学校を休んだのは、コタローにとって少なからず衝撃的だった。
――それじゃ、また明日ね、コタローくん!
そう言って別れたときのアズサの顔は、はっきりと思い出せる。あんなに元気そうだったのに、風邪でも引いたのだろうか。スマホを見てみる。
と、ちょうどそこにメッセージが。アズサからだ。
開いてみると、書かれていたのはテキストメッセージと、地図。
それを見た瞬間、コタローは立ち上がった。カバンを持ち、委員長のミウの席へ向かう。
「委員長さん。ごめん、体調が悪いから早退するって先生に伝えておいてくれる?」
「えっ、それはいいですけど、大丈夫ですか?」
「うん、帰るくらいならなんとか。それじゃ、よろしく」
「は、はい。無理はしないでくださいね!」
教室を出ると、ちょうど別のクラスの生徒たちとすれ違う。
「珍しいね、立田くんが休むなんて」
「ねー。でも雰囲気よくなるし、いいんじゃない?」
笑い合う生徒たちの会話を聞き、コタローは昇降口へ急いだ。
正門は閉まっているため、裏門から学校を出る。
――スキル【瞬動】。
コタローはぐっと前傾姿勢になり、足を踏み出した。すると、彼の姿がその場から消える。いや、消えたのではない。誰の目にも見えないほどの速さで移動を始めたのだ。
「ここか……」
そうして向かった先。地図に示されていたのは町外れの倉庫街だった。
六番倉庫の中だと書かれていたが。しかし倉庫の表側はシャッターが閉まっており、出入り口がない。裏側に回ってみると、コタローはそこで見たものに衝撃を受けた。
「ダンジョンの、入口……!?」
そこにあったのは、黒く渦巻く靄のような物体だった。コタローがよく知っているものに酷似しているそれは、間違いないだろう。ダンジョンの入口だ。
しかし、なぜそんなものがここに……? ダンジョンはすべて攻略済みの状態となったはずだ。攻略されたダンジョンは消滅する。つまり事実上、今の世界にダンジョンは存在しないはずなのだ。
考えられる可能性は一つ。これは新たに発生したダンジョンだということだ。だとすればマズい。早く攻略しなければ、中のモンスターが溢れ出てくる可能性もある。
だが、今はそんなことをしている暇はない。倉庫の中で待っている人がいる。どうする……!?
そんなコタローの心理を見透かしたように、スマホから通知音がした。こんなときに、と確認してみると、それは再度のメッセージ。そこにはダンジョンに入るよう指示が書かれていた。
仕方ない。カバンを置き、上着を脱ぐ。軽くストレッチをして、入口に飛び込む準備を整えた。
「あら、あなたそこに入るつもりなの?」
足を踏み出そうとしたそのとき、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこにいたのは銀髪の美女だった。明らかに外国人だったが、言葉は流暢な日本語だった。
「そうですけど……。あなたは?」
「私はそうね……。マリー、とだけ名乗っておこうかしら。それであなた、そこは危険だけど、入るつもりなの?」
「ええ。この先で待ってる人がいるんで」
「そう。なら止めないけど。死なずに帰ってきたら、ここに連絡して。中がどんな風だったか聞きたいわ」
そう言って、マリーと名乗った美女は名刺を差し出してきた。コタローはそれを受け取り、胸ポケットにしまう。
「忘れてなければ。それじゃ、行きます」
「ええ。行ってらっしゃい」
ひらひらと手を振るマリーを置いて、コタローはダンジョンへと足を踏み入れた。
――それじゃ、また明日ね、コタローくん!
そう言って別れたときのアズサの顔は、はっきりと思い出せる。あんなに元気そうだったのに、風邪でも引いたのだろうか。スマホを見てみる。
と、ちょうどそこにメッセージが。アズサからだ。
開いてみると、書かれていたのはテキストメッセージと、地図。
それを見た瞬間、コタローは立ち上がった。カバンを持ち、委員長のミウの席へ向かう。
「委員長さん。ごめん、体調が悪いから早退するって先生に伝えておいてくれる?」
「えっ、それはいいですけど、大丈夫ですか?」
「うん、帰るくらいならなんとか。それじゃ、よろしく」
「は、はい。無理はしないでくださいね!」
教室を出ると、ちょうど別のクラスの生徒たちとすれ違う。
「珍しいね、立田くんが休むなんて」
「ねー。でも雰囲気よくなるし、いいんじゃない?」
笑い合う生徒たちの会話を聞き、コタローは昇降口へ急いだ。
正門は閉まっているため、裏門から学校を出る。
――スキル【瞬動】。
コタローはぐっと前傾姿勢になり、足を踏み出した。すると、彼の姿がその場から消える。いや、消えたのではない。誰の目にも見えないほどの速さで移動を始めたのだ。
「ここか……」
そうして向かった先。地図に示されていたのは町外れの倉庫街だった。
六番倉庫の中だと書かれていたが。しかし倉庫の表側はシャッターが閉まっており、出入り口がない。裏側に回ってみると、コタローはそこで見たものに衝撃を受けた。
「ダンジョンの、入口……!?」
そこにあったのは、黒く渦巻く靄のような物体だった。コタローがよく知っているものに酷似しているそれは、間違いないだろう。ダンジョンの入口だ。
しかし、なぜそんなものがここに……? ダンジョンはすべて攻略済みの状態となったはずだ。攻略されたダンジョンは消滅する。つまり事実上、今の世界にダンジョンは存在しないはずなのだ。
考えられる可能性は一つ。これは新たに発生したダンジョンだということだ。だとすればマズい。早く攻略しなければ、中のモンスターが溢れ出てくる可能性もある。
だが、今はそんなことをしている暇はない。倉庫の中で待っている人がいる。どうする……!?
そんなコタローの心理を見透かしたように、スマホから通知音がした。こんなときに、と確認してみると、それは再度のメッセージ。そこにはダンジョンに入るよう指示が書かれていた。
仕方ない。カバンを置き、上着を脱ぐ。軽くストレッチをして、入口に飛び込む準備を整えた。
「あら、あなたそこに入るつもりなの?」
足を踏み出そうとしたそのとき、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこにいたのは銀髪の美女だった。明らかに外国人だったが、言葉は流暢な日本語だった。
「そうですけど……。あなたは?」
「私はそうね……。マリー、とだけ名乗っておこうかしら。それであなた、そこは危険だけど、入るつもりなの?」
「ええ。この先で待ってる人がいるんで」
「そう。なら止めないけど。死なずに帰ってきたら、ここに連絡して。中がどんな風だったか聞きたいわ」
そう言って、マリーと名乗った美女は名刺を差し出してきた。コタローはそれを受け取り、胸ポケットにしまう。
「忘れてなければ。それじゃ、行きます」
「ええ。行ってらっしゃい」
ひらひらと手を振るマリーを置いて、コタローはダンジョンへと足を踏み入れた。
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