上 下
23 / 29

田中の準備

しおりを挟む
 多分、世羅は前世でいきなり僕に襲われたのを、結構根に持ってたんじゃないかと思う。
 というか、トラウマになっていたというか。
 そうじゃなかったら、今日僕はいきなり家を訪ねたはずなのに、こんなに準備がいいことなんてあるだろうか……。
 トイレの吊り戸棚にはポンプ式の浣腸器具。
 バスルームには浣腸用シャワーヘッドとローション。
 寝室にも見えるところにゴムとローションがスタンバイ。
 何も知らなければスルーしてたと思うんだけど、変に知識だけはあるもんだから目に入るたびに一々動揺が激しい。
 もしかして元彼女とそういうプレイをしてたの!? ってびっくりして。
 でも、家には入れたことないっていう話だし、どう見てもどれも新品だったから、全てが僕のために用意された品であることは疑いようもなかった……。
 ……そんな訳で、部屋を移動するたびに色んな衝撃とプレッシャーをくらいつつ、一回、自分の体で試したことあるんじゃ?ってくらい、手際よくお尻の穴を洗われてしまった。
 仕上げのシャワーは流石に一人で使わせてもらったけど、出てみたら、用意された着替えが、世羅の黒いTシャツだけ……。
 そして今、完璧に整えられたキングサイズのベッドの真ん中で、ノーパンで布団かぶって、世羅のシャワーを待たされている。
 寝室は、ホテルの一室みたいに清潔感があり、ムーディな柄の遮光カーテンのかかった、暗くて落ち着いた感じの部屋だった。
 僕の、作業部屋兼寝室とは比べ物にならないいい雰囲気で、世羅の付けてる香水のいい匂いもするし、逆にめちゃくちゃ落ち着かない。
 ヘッドボードの上のでっかいローションボトルとゴムの量(綴り式でいっぱいある)も気になって仕方ないし……。
 布団めくったら、いつの間にか、防水用のタオルケットが下に敷いてあるし……。
 いや、何回するつもりなの……?
 色んな意味でドキドキしながら待ってたら、ついに世羅がやってきてしまった。
 しかも相手は潔いほどに全裸。
 今すぐスケッチブックに模写させて頂きたいほどの超絶肉体美を惜しげもなく晒されて、目が潰れるかと思った。
 こんなかっこいい体になるまでダイエット頑張りたかったなぁ……。
 と思った一方、ハッとした。
 なんで僕だけ上を着せられた?
 世羅の趣味か。
 疑いは胸に呑み込み、横向きに丸まってたら、世羅が向かい合うみたいに僕のすぐ隣に入ってきて、ごく近くで見つめ合うような形になった。
 整った顔と見つめ合いながら、ごくんと唾を飲む。
「……田中。怖いなら、別に今日は、いいからな」
 布団の中でぎゅっと抱き寄せられてそう言われたけど、ここまでの準備を無にできるほど、僕も強メンタルじゃない。
 そして、太ももの辺りに切羽詰まった凄いのを当てながら言われると、そっちの世羅もちょっと気の毒だ……。
「いいよ、怖いわけじゃないし……。最後までしてほしい」
 答えると、世羅は僕の肩口に額を擦り付けながら、震える声で言った。
「そっか……。その、前世みたいに、その、絶対に、うっかり妊娠させたりなんかしねぇから安心しろよな……」
 流石の僕も、ポカンと口が開いた。
「うっかり妊娠しないよぉ……」
「わかんねぇだろ……! こんな可愛いし……!!」
 肩を掴まれて力説されたけど、一体世羅の目には何が見えてるんだ。
 でも……。
「僕のこと、大事にしてくれて、ありがとう……」
 世羅の気持ちが嬉しくて、僕も両手を伸ばして、彼の頬を包み込んで、そっと唇にキスした。
 そうしたら、世羅の綺麗な色の瞳がじわっと潤んで、涙が溢れだして……。
 僕も貰い涙してしまった。
 そうだよな……。
 僕が塔に閉じ込められた時から、……アスワドが殺された日から、こんな日はもう二度と来ないと思ってたもんな。
 本当に思い出せて良かったって思うし、世羅に対するいとおしさが止まらなくなる。
 僕も、何かしてあげたい。
 そう思って、勇気を出して布団の中から手を上げた。
「あのー、先生」
「先生じゃねぇけど、なんだ。延期するなら、どんだけ先でもいいぞ」
「ううん、そういう話じゃなくて。前世と違って僕、両性具有じゃあないから、お尻、ほぐさないと多分入らないと思うんですけど」
「それはもちろんこれから俺がする」
 当然!ていう我が物顔で、世羅が僕のお尻をがしっと両手で握った。
 いや、それは一応僕のであって、君の所有物じゃないぞ……。
「そう言うと思った。……でね、その間僕、手持ち無沙汰になるから、世羅のを舐めてていい?」
 世羅の喉から、ひゅっと音が聞こえた。
 な、何もそんな驚かなくても……。
 反応を待っていると、相手はまるではじめての女の子みたいに、ガバッと上半身を起こし、布団で身体を隠しながら端っこまで後ずさった。
「むむむむむ無理です、そんなことさせられません」
 あ、アスワドに戻ってる。
「いや、何言ってるの。さっき僕のこと全裸でテーブルに載せて好き勝手してたのは誰」
「すみません、お許しを……やっとあなた様に触れられると思ったら欲が止まらず」
「許さぬ。……なーんちゃって」
 僕もふざけてセフィードに戻ってみた。
「じゃあ、そう言う訳で、お尻はよろしくお願いします」
「!?」
 間抜けなお願いをして、四つん這いの姿勢になり、僕は強引に布団に潜り込んだ。
 真っ暗ながら、ちょうど股間のあたりかな~と思う場所に顔を寄せていくと、ビタ、とほっぺの片側に熱くて硬いのが当たる。
 おっと、これ竿だ。
 エロ漫画で何回も描いてて慣れ親しんでる(?)せいもあるのか、世羅のだからなのか、意外に抵抗感はない。
 正直、エロ漫画を描きながら、ちんこを舐めてる時の味とか感触とか、どうなんだろう?って気になってはいたんだよね……。
 匂いも嗅いでみたけど、世羅が念入りに洗ってる上に、多分足首のあたりに香水を付けてるせいか、そっちの匂いに鼻が持ってかれて、いい匂いしかしない。
 イケメンはこんなところまでいい匂いかー。
 じゃあ、味はどうなんだろ。
 と、ほぼ興味本位で舌を伸ばしたところで、お尻に、ヌルヌルのローションを纏った世羅の手が触った。
「ひゃっ」
 何をされるかは分かってはいるけど、流石に緊張感が高まる。
 洗った時は意外と平気だったけど……痛くありませんように……あと、中身が出ませんように……!
 ヒヤヒヤしながら目を瞑っていると、ぬるうっと世羅の指が、僕の中に入ってきた。
「っあ……っ」
 人の指が入ってくるのは、流石に違和感が強い……。
「力、抜け……」
 布団越しに注意されて、メチャクチャに力んでいたことに気付いた。
「う、うん、……」
 ハァハァと息を逃がして、どうにか緊張を解く。
 男同士って、やっぱり大変だ……。
 後悔なんかしないけど。
 息を吐いて、努力して脱力すると、世羅の指が、ちゃんと僕の奥の方まで入ってきた。
 たっぷりの潤滑剤を塗りつけながら、指が中の肉をかき撫でていく。
 ううっ、なんか、変な感じ……!
 まだ気持ち良くはないけど、そんなところ触られると、神経がいっぱいいっぱいになる。
 だけど、僕だって世羅を気持ち良くしたい。
 なるべく腰から下のことは忘れることにして、僕は目の前の……暗すぎてよく見えてないけど……ちんこに集中した。
 竿をチュウチュウ吸ったり、ペロペロしてみると、世羅の膝が小刻みに震えるのが伝わってくる。
 フェラテクニック的なものは、エロ漫画のために一通りマニュアルを読んだことがあるけど、まさかこんな時に役に立つなんてなぁ……。
 でも、お尻の中の指の動きも結構大胆になってきて、僕もやっぱり余裕がなくなってくる。
 その内に――違和感しかなかったお尻の方から、覚えのあるような……微妙な感覚が湧いてきた。
「ン、んん……!?」
 世羅の今、触ったところ……。
 こんなところ、生きてて触られたことなんか無いはずなのに、「知ってる」感覚。
 ああ、これ、セフィードの知っている……。
 世羅も、僕の体の反応から何かを感じ取ったのか、もう一度『そこ』に触れてくる。
「ッ、はぁ……っ、ア……、せら、それ、だめ……っ」
 ――呼び起こされたのは、この世のものではない記憶から勝手に流れ込んでくる、「そこ」でしか得ることのできない、艶かしい快感の記憶だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!

腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。 特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。 毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。 そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。 無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで
BL
塔野 匡(ただし)はバイトと部活に明け暮れる大学生。だがある日目覚めると、知らない豪奢な部屋で寝ていて、自分は第四王子ユールになっていた。 これはいったいどういうことだ。戻れることなら戻りたいが、それよりなにより義兄ガレルの行動が完璧にユールをロックオンしていることに気づいた匡。 これは、どうにかしないと尻を掘られる! けれど外堀が固められすぎてて逃げられないぞ、どうする!? というようなお話です。 剣と魔法のファンタジー世界ですが、世界観詰めてないので、ふんわりニュアンスでお読みください。 えっちは後半。最初は無理矢理要素ありますが、のちにラブラブになります。

処理中です...