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 そ、そういえばこの人……ヤンミンに屋根裏部屋で襲われた時もそうだったけど、足音とか気配、完璧に消して歩く人なんだった……!
「……」
 ミーシャは質問には答えず、俺の着替えの上に手持ちのタオルをバサッと乱暴に置いた。
「……俺も入る」
 えっえっ、何。俺がオナニーしてて遅いから、シャワー浴びるの待ちきれなくなっちゃった!?
「待ってごめん、今出るからっ、待って待ってっ」
「待てない」
 ひええっ。
 俺、お腹に精液付いちゃってるし、指はドロドロだし、せめて洗いたいんだけど……っ!?
 というか、どこまで見たの、聞いたの、うわーっ。
 パニック状態になっている内に、ミーシャが薄手の黒ニットを脱ぎ捨て、黒デニムと下着を放り、逞しい裸体を露わにして同じ浴槽の中に入って来る。
「わあっ……わーっ!」
 全裸で腰の上を跨がれて、目のやり場がない。
 何とかどいて貰わなくてはとミーシャの顔を見上げた途端、俺は固まってしまった。
 あっ、……凄い……顔はいつもの冷静沈着なミーシャなのに、ガッチガチに勃起してる。
 目の前の血管の浮いた巨根と感情の見えない静かな顔が同じ視界で結びつかなくて、何度も視線を行き来させてしまった。
 えっと……何で?
 現実感が無いまま、とにかく彼に断る。
「お、俺……出るから……どいて……」
 ヘリを両手で掴んで浴槽から立ち上がろうとしたら、相手に肩をぐっと上から押さえつけられた。
「ちょっ」
 結局浴槽に膝を曲げて寝転んだ元の姿勢に戻る。
 せめて隅っこで縮こまるように膝を抱えると、浴槽の空いた部分にミーシャが腰を下ろし、同じ目線でじいっと見つめられた。
 うぅっ、裸で見つめ合うとか、心臓がドキドキし過ぎて痛い……。
「マコト、これ何」
 厳しい口調と共に、膝を抱えていた俺の右手首が無理矢理掴まれる。
 切れ長の冷たい目が、白い粘液で汚れた俺の指を見ていた。
「せ、せいえき……です」
 罪悪感で何故か敬語になってしまいながら、視線を外して答える。
「自慰をしてたのか?」
「は、はい……」
 恥ずかしすぎて膝頭に顔を埋めながら、俺はどうにか質問に答えた。
「誰の名前を呼んでた」
「そ、それはっ、言えません……っ、……」
「言え」
 ううっ、こ、これ完全にあれじゃないか。
 スパイ映画でよく見る、拘束して尋問するシーン。
 いや、俺はさっさと吐いて最初に殺されるチョイ役ってところだけど……。
「お前は俺の名前を呼んでただろう……違うか?」
 責めるように詰問されながら、俺の両膝が掴まれ、ぐーっと浴槽の頭側の壁に向かって押し開かれた。
「あっ……」
 左右のかかとが浮き、胸からお腹にかけてべっとりついた精液を見られて、恥ずかしくて死にそうになる。
「お前は前も後ろも両方いじりながら、いやらしく尻の穴を締め付けて俺を呼んでたな?」
「よ、呼びました……っ。ご、ごめんなさい……もう、許して下さい……」
 半泣きで謝ったその時、ミーシャが俺の両膝の間に顔を埋め、ヘソ上から胸にかけてをべろりと舌で舐めた。
「!!!」
 尋問からの突然の行為に、声にならない叫びを上げると、ミーシャが俺の両腿を掴んだまま覆い被さり、耳元に囁く。
「悪いが、もう一秒も我慢できない……っ」
「えっ」
 驚いて聞き返す暇すらなく、俺のお尻の穴に、凶暴なくらいに勃起したペニスの先端が押し付けられた。
「嘘、っア……! えっ……んぁ……っ、ンぐぅ……っ!」
 ギチギチと無理やり襞を押し開き、俺を犯していく、熱い欲望。
 ふた晩かけてそれに何度も穿たれたことが記憶の中で蘇り、すでに幾らかはほぐれているそこが、どうにかミーシャを受け入れていく。
「みっ……しゃ、はぁあ、大きいっ、あ……っ!」
 全然自覚は無かったけど、ミーシャの大きいのが最初から入っちゃうくらい、俺はやらしいカラダになっていたらしい。
「っふ……久々なのに、随分あっさり入るな……っ」
 痛いし苦しいし、あっさりではないと思うけど、確かにこんな太いのがいきなり入ってしまってるなんて、いたたまれない。
「あっ、う……俺……っ、一人で、よくしてたから……っ、ごめんなさい……っ」
「……っ。もっと奥まで入れるぞ……!」
「ん、うん……っ」
 はふっ、はふっと浅い呼吸を繰り返してソコを緩めて相手を迎え入れ、愛しさを込めて相手の首を抱く。
 ミーシャもまた、切迫した呼吸を俺の肩越しに繰り返し、そして直ぐに、腰を激しく打ちつけ始めた。
「んはぁっ、み、っしゃ、ンッ、はげし、ああああっ」
 愛撫もろくになく始まった獣みたいな交わりに、バスルーム中に響くような大きな喘ぎ声が止まらない。
 何よりミーシャが俺に欲情してくれたのが嬉しすぎて、そして久々の、奥まで無遠慮に突かれて擦られる堪らない感覚に、腰から下がずっと痺れてるくらい気持ちよくて……。
 気が付いたら後ろだけですぐに激しい絶頂に導かれて、俺はビクッビクッと痙攣しながらミーシャのペニスをお尻の穴でギュウギュウしぼっていた。
「はぁあ……っ、イク……っ、あぁ……すきっ、ミーシャ、好き……っ」
 そう叫んだ瞬間、相手も俺の奥を擦りながら脈打ち、ビュウッ、ビュウッと精液を長く、激しく注ぎ込んできた。
「ぁ……はぁっ、……俺の中に出てる……っ、う、嬉しい……」
 幸福感で涙が溢れる。
 本物の彼とセックスしてるなんて夢みたいで。
 いや、もしかしたらこれ、夢なのかも……だって、あんなに無表情でダンマリで、性欲なんか無さそうな大人のミーシャが、俺にこんなにがっついてるとか、あり得ない。
 ミーシャがどんな顔をしているのか気になって、俺は固く抱きついていた腕を解き、長い金色の髪の貼りついた美貌を覗き込んだ。
 白い肌が全部真っ赤に染まっていて、眉を寄せた、苦しそうな、でも、快楽に溺れかけた淫らな表情をしていて、あっと驚いた。
 それは、俺を限界まで抱いたあの夜のミーシャと同じだったから。
 やっと俺の知る彼に会えた気がしてむせび泣きそうになるのを我慢しながら、お願いした。
「ミーシャ、俺……っ、もっと、ベッドでちゃんと、したい……っ」
 ミーシャが僅かに頷き、萎えきらないペニスがずるりと俺の中から抜けてゆく。
 太く逞しい両腕が湯船の中で俺の膝をかかえ、しっかりと持ち上げた。
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