ショートショート集

やりたかったこと

Y2

俺は小さい頃から不運だった。
俺がまだ保育園に通っていた頃、母親が交通事故で死んだ。
俺が小学校にあがってしばらくすると、父親が通り魔に刺されて死んだ。
そして、俺を引き取ってくれた叔父も、俺が中学生の時に病気が見つかり死んだ。
俺の近くにいると死んでしまう。
そう考えた俺の親戚は、誰も俺を引き取ろうとしなくなった。
俺は仕方なく、施設に入れられた。
施設では、俺と似たような不運な子供がたくさんいた。
その中でも、俺は同じ年齢の男の子と親しくなった。
俺はその子に、俺の身近で人が死んでいくんだ、と言ってみた。
その子は言った。
Y3「この施設には、悪運の強い子供しかいないから、簡単には死なないよ。」
俺は、少しだけ心が軽くなった気がした。
それから、俺は充実した中学校生活を送った。

そして、中学校の卒業式前日。
俺たちは、施設で行われる一足早い卒業式で、今までの感謝を込めて贈り物をしようと計画した。
そして、二人でお金を出し合い、サッカーボールや色鉛筆を買った。
施設に戻ると、施設は燃えていた。
消防隊の人が、必死に消火活動を行っていた。

施設の子供たちは、俺たち二人以外全員死んだ。

そして、数年後。
俺が、就職し真面目に働いていた頃。
ある男が会いに来た。
施設にいたあの男の子だった。
俺たちは、久しぶりの再開を喜んだ。
しかし、そいつはすぐに話の内容を変えた。
Y3「僕は、僕のような子供たちのために新しい施設をつくりたい。だから、僕の保証人になってくれ。」
そんな内容だったと思う。
俺は、そいつの意見に賛同し、躊躇することなく書類にサインした。

数日後、そいつは行方不明になった。

俺は、この世界に絶望した。
俺の周りでは人が死んでいき、唯一の親友にも裏切られた。
Y2「もう、死のう。」
そう思っていた時、出会ったのが矢野だ。

矢野といる時間は、俺の人生の中で一番楽しかった。
Y2「よし、いくか。」
Y1「はい。」
今から死ぬというのに、矢野は笑っていた。
俺はその笑顔に安心した。
もっと早くに出会っていれば...