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8章 我慢はみんな大変です
4.
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「カルシード公爵夫人、少々刺激が強すぎます。ハルトライア様の体調に支障が出ますので、そういった内容はお話にならないでください」
目をえぐったと知った僕の血の気が引いたことに気付いたカシルが、彼女のグロ発言に待ったをかけてくれた。
しかし先生が魔力を見える理由が知れて良かった。僕も魔力量が増えれば見えるはず。他人の魔力が見えれば身を守れる可能性も上がりそう。生きるために頑張ろう。
「あ、ごめんごめん。ま、そういうわけだから、私は浄化魔法の発現にも興味があってねぇ。私の目で見る浄化魔法は瘴気を消滅させているというより、浄化に使用した属性の魔力に変質させて霧散させているように見えるんだよ。瘴気が消える一瞬だけ黒からその浄化の属性色に変わるんだ。つまり私の考える浄化魔法の機構とは瘴気をある属性魔力に変換するということだ。だから、君が瘴気から紫玉を作った、ということでこれが浄化魔法だという判断をしたわけだ」
なるほど、そういうことか。と理解はした。それでもやはり疑問が残る。
「でも、魔物化した人や動物が放つ魔法が紫色なのですから、やはり闇属性は魔物の魔力で合っているのでは?」
「そこなんだよ! 何か理由があるんだよっ。魔物が使う魔法が全部闇属性になっちゃう理由がね。でもそれが分かれば君が闇属性であることの原因もわかるだろうし! だからこの紫玉ちょうだい!!」
カシルの手にある紫玉を指さし叫ぶ先生。結局そこに戻るのか。
「わかりました。そちらは差し上げます」
「ありがとう!! それから今度ぜひ紫玉作るところ見せてほしい! 魔力を固められるなんて本当にすごすぎるよ! やり方私も知りたい! 固めたい!!」
そしてカシルから素早く奪い取った。興味の奴隷だな、この人は。
とりあえず今回は紫玉を渡すことのみで我慢してもらおう。紫玉生成の過程を見せるのは今は無理。僕が一人でタイリートに乗れるまでは。
「紫玉を作るためには瘴気のあるところまで行かねばなりませんので、すぐはできかねます。あと1ヶ月、いや2週間ほど待ってもらえませんか?」
2週間あれば、きっとギリ乗れる。期限切らないと人は頑張れないからね。
「ほんと!? 嬉しい!! じゃぁ再来週は予定空けとく! 殿下の授業もお休みしちゃお~」
「それはなりませんファリア先生。殿下は僕に先生を紹介してくださった大切な方です。殿下のことは何より最優先でお願いします」
そこは正した。流石に失礼すぎる。
「うううううう、そんなぁ~。歴史講義するより楽しいのに~」
泣き言をいうファリア先生にカシルがまたもお説教をした。
「カルシード公爵夫人、どうかご自身の立場をお考えになり、ハルトライア様が諭さなくても正しい行動をなさいますよう、よろしくお願いいたします」
どっちの執事かわかったもんじゃないな。
「あううう、うん……はぁい。私は興味が出ると止まらなくて、昔もルゥに怒られてばかりだったけど、今はトラ君にも怒られちゃって、ダメな教師だよ。ごめん、トラ君」
「いいえ、先生の魔法の研究や情熱は尊敬に値します。そして僕もカシルも絶対的に先生を信頼してます。ダメな教師じゃないです。だからこれからもたくさん教えてください」
先生は魔法探究という欲望に弱いダメなところもあるけれど、裏表なく僕に接してくれる素晴らしい方だから。
「ありがとう。うんっ。トラ君は優しいなぁ。それに本当に賢いし魔力もすごいしっ。もう貴族学園なんて行かずに魔法研究所に所属しちゃわない? トラ君さえ良ければ私の推薦で一発採用だよ!」
突然の申し出に僕はしばし硬直してしまった。
魔法研究所? そんなこと考えてもいなかった。でも貴族学園に通わなくてよければ零に会うこともきっとない。
僕が悪役令息と言われるのは編入生の零をあの手この手でいじめるからだ。嫉妬にかられて教本を破ったり筆箱を捨てたり杖を隠したり。
ゼロエンでも僕は嫌われ者だったが、唯一の王子の婚約者だからえせ取り巻きが何人かいた。彼らに零を階段から突き落とせとかも頼んでいたな。他にも零にいたずらする準備を使用人に頼んでいたような描写があったと思う。ってカシルとユアにそんなことさせてたのか! 絶対だめだ! 学園には通いたくない!
「えっと。ものすごくうれしい申し出なのですが、少々考えさせてもらいたいです。まず魔法研究所がどんなところかも知りませんので。ですが僕はこんな体ですから貴族学園に通えるとは思っていません。というか通いたいとも思っていないです。なので前向きに検討したいです」
「魔法研究所はねぇ、トップの所長は国王様だよ。で私が副所長。所長は万年不在で端的に言うと財布だね。国庫から研究費が出ているから。政治と絡む俗物的な人はいないよ。みんな魔法以外に興味ないからねえ。君が来たら連日研究パーティーになるね。8徹くらいは覚悟しなきゃね」
副所長!? てか実質トップ! この人めちゃくちゃ偉い人じゃん! そして魔法オタクの巣窟らしい現状を8徹で察した僕は少々うろたえた。
「カルシード公爵夫人。夜はきちんとお眠りください。そしてハルトライア様を体調不良にさせるような発言、そのような環境の研究所にハルトライア様をお預けすることはできません」
「わかってるよ。とにかく魔法研究所はトラ君を研究所上げて歓迎するってこと! 考えといてね! じゃあ、私は帰るよ、もう時間もないし見送らなくていいよ! それからユア君! 君はその体内魔力の調節をトラ君に教えといてよ。彼の体力を補えるから便利だし。使用時間はトラ君の場合一日30分以内にしたら筋力に負担ないからそれでお願いね! トラ君次回までの宿題それね! じゃ!」
目をえぐったと知った僕の血の気が引いたことに気付いたカシルが、彼女のグロ発言に待ったをかけてくれた。
しかし先生が魔力を見える理由が知れて良かった。僕も魔力量が増えれば見えるはず。他人の魔力が見えれば身を守れる可能性も上がりそう。生きるために頑張ろう。
「あ、ごめんごめん。ま、そういうわけだから、私は浄化魔法の発現にも興味があってねぇ。私の目で見る浄化魔法は瘴気を消滅させているというより、浄化に使用した属性の魔力に変質させて霧散させているように見えるんだよ。瘴気が消える一瞬だけ黒からその浄化の属性色に変わるんだ。つまり私の考える浄化魔法の機構とは瘴気をある属性魔力に変換するということだ。だから、君が瘴気から紫玉を作った、ということでこれが浄化魔法だという判断をしたわけだ」
なるほど、そういうことか。と理解はした。それでもやはり疑問が残る。
「でも、魔物化した人や動物が放つ魔法が紫色なのですから、やはり闇属性は魔物の魔力で合っているのでは?」
「そこなんだよ! 何か理由があるんだよっ。魔物が使う魔法が全部闇属性になっちゃう理由がね。でもそれが分かれば君が闇属性であることの原因もわかるだろうし! だからこの紫玉ちょうだい!!」
カシルの手にある紫玉を指さし叫ぶ先生。結局そこに戻るのか。
「わかりました。そちらは差し上げます」
「ありがとう!! それから今度ぜひ紫玉作るところ見せてほしい! 魔力を固められるなんて本当にすごすぎるよ! やり方私も知りたい! 固めたい!!」
そしてカシルから素早く奪い取った。興味の奴隷だな、この人は。
とりあえず今回は紫玉を渡すことのみで我慢してもらおう。紫玉生成の過程を見せるのは今は無理。僕が一人でタイリートに乗れるまでは。
「紫玉を作るためには瘴気のあるところまで行かねばなりませんので、すぐはできかねます。あと1ヶ月、いや2週間ほど待ってもらえませんか?」
2週間あれば、きっとギリ乗れる。期限切らないと人は頑張れないからね。
「ほんと!? 嬉しい!! じゃぁ再来週は予定空けとく! 殿下の授業もお休みしちゃお~」
「それはなりませんファリア先生。殿下は僕に先生を紹介してくださった大切な方です。殿下のことは何より最優先でお願いします」
そこは正した。流石に失礼すぎる。
「うううううう、そんなぁ~。歴史講義するより楽しいのに~」
泣き言をいうファリア先生にカシルがまたもお説教をした。
「カルシード公爵夫人、どうかご自身の立場をお考えになり、ハルトライア様が諭さなくても正しい行動をなさいますよう、よろしくお願いいたします」
どっちの執事かわかったもんじゃないな。
「あううう、うん……はぁい。私は興味が出ると止まらなくて、昔もルゥに怒られてばかりだったけど、今はトラ君にも怒られちゃって、ダメな教師だよ。ごめん、トラ君」
「いいえ、先生の魔法の研究や情熱は尊敬に値します。そして僕もカシルも絶対的に先生を信頼してます。ダメな教師じゃないです。だからこれからもたくさん教えてください」
先生は魔法探究という欲望に弱いダメなところもあるけれど、裏表なく僕に接してくれる素晴らしい方だから。
「ありがとう。うんっ。トラ君は優しいなぁ。それに本当に賢いし魔力もすごいしっ。もう貴族学園なんて行かずに魔法研究所に所属しちゃわない? トラ君さえ良ければ私の推薦で一発採用だよ!」
突然の申し出に僕はしばし硬直してしまった。
魔法研究所? そんなこと考えてもいなかった。でも貴族学園に通わなくてよければ零に会うこともきっとない。
僕が悪役令息と言われるのは編入生の零をあの手この手でいじめるからだ。嫉妬にかられて教本を破ったり筆箱を捨てたり杖を隠したり。
ゼロエンでも僕は嫌われ者だったが、唯一の王子の婚約者だからえせ取り巻きが何人かいた。彼らに零を階段から突き落とせとかも頼んでいたな。他にも零にいたずらする準備を使用人に頼んでいたような描写があったと思う。ってカシルとユアにそんなことさせてたのか! 絶対だめだ! 学園には通いたくない!
「えっと。ものすごくうれしい申し出なのですが、少々考えさせてもらいたいです。まず魔法研究所がどんなところかも知りませんので。ですが僕はこんな体ですから貴族学園に通えるとは思っていません。というか通いたいとも思っていないです。なので前向きに検討したいです」
「魔法研究所はねぇ、トップの所長は国王様だよ。で私が副所長。所長は万年不在で端的に言うと財布だね。国庫から研究費が出ているから。政治と絡む俗物的な人はいないよ。みんな魔法以外に興味ないからねえ。君が来たら連日研究パーティーになるね。8徹くらいは覚悟しなきゃね」
副所長!? てか実質トップ! この人めちゃくちゃ偉い人じゃん! そして魔法オタクの巣窟らしい現状を8徹で察した僕は少々うろたえた。
「カルシード公爵夫人。夜はきちんとお眠りください。そしてハルトライア様を体調不良にさせるような発言、そのような環境の研究所にハルトライア様をお預けすることはできません」
「わかってるよ。とにかく魔法研究所はトラ君を研究所上げて歓迎するってこと! 考えといてね! じゃあ、私は帰るよ、もう時間もないし見送らなくていいよ! それからユア君! 君はその体内魔力の調節をトラ君に教えといてよ。彼の体力を補えるから便利だし。使用時間はトラ君の場合一日30分以内にしたら筋力に負担ないからそれでお願いね! トラ君次回までの宿題それね! じゃ!」
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