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9月の嵐の日に
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「よし。出来た」
リネンの優しい手触りの生地のエプロン。
胸元に、コーヒーカップやコーヒー豆、クロワッサン等を刺繍した。
ナチュラルなベージュの布地にぴったりの雰囲気で、中々可愛らしく出来たと思う。
「天気、一気に崩れてきたなぁ」
数時間前はまだ太陽が出ていたので、縁側に座って縫い物をしていたが、今ではどんよりとした厚い雲が空を埋め尽くしていた。
ぽつり ぽつり
地面に雨粒が落ちてきては、瞬く間に染み込んで、土の色が変わっていく。
時刻は午前11時を過ぎたところ。
まだ昼食には早いが、お腹の虫が騒ぎ出したので裁縫道具を仕舞ってキッチンに向かうことにした。
ほかほかの白いご飯に、梅干しを1つ。
百合子のお店の、まっしろでふるふるな絹ごし豆腐。生姜醤油掛け。
だし巻き玉子は、ちょっぴり焦がしてしまったが、きっとこれはこれで香ばしいはず。
「んー。何ともシンプルな食卓。でもこれが美味しい。いただきます」
手を合わせた時だった。
「にゃあ」
まるで甘えるかのような声が、縁側のある庭から聞こえてきた。
そこには1匹の三毛猫。
その隣には、50歳くらいの女性が立っていたのだった。
「えぇっ。あの、雨降ってますよ。傘は・・・と言うか何か御用でしょうか?」
女性は動揺する私の問い掛けにも表情を変えず「大丈夫です」と静かに答える。
そして、少し間をあけて「美味しそうな匂いにつられて。猫ちゃんと一緒に来ちゃいました」と、ふっと笑顔を見せた。
銀縁の眼鏡越しに、目尻にシワを寄せて笑う瞳からは、悪い人のようには感じられない。
「あー・・・と、とりあえず上がります?」
静かな、奇妙とも言える空気に耐えられなくなったさち子は、思わずそう言った。
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げた女性は、靴を綺麗に揃えてから「お邪魔します」と、部屋に入った。
さち子は猫の足をタオルで拭いてから、部屋に上げた。
料理をもう1人分、急いで用意した。
女性の名は、津田雅美。
それ以上の事は聞いていない。
と言うか、聞くつもりもなかった。
それを聞いたところで、何かが判断出来るわけではないと思っていたからだ。
「美味しい」
さち子が少し焦がした卵焼きを食べて、彼女はそう言った。
「おいしいものって、派手さや手が込んでるかどうかじゃ無いわよね」
そう言って、後は静かに。でも幸せそうに全て食べてくれた。
それだけで十分なのだ。
私は変わり者かもしれないが、ついさっき出会って食事を共にしただけの雅美に、親近感が沸いていた。
「どこか泊まるところはあるんですか?今日はこのまま雨も続くでしょうし。良かったら泊まっていきます?」
「え?良いんですか?」
流石に驚いた様子で少し悩んでいたが「ありがとうございます。宜しくお願い致します」と、深々と頭を下げた。
そんな雅美を見て思わず吹き出してしまった。
こうして、嵐の日に突如やって来た女性、津田雅美と1匹の猫と出会ったのだった。
リネンの優しい手触りの生地のエプロン。
胸元に、コーヒーカップやコーヒー豆、クロワッサン等を刺繍した。
ナチュラルなベージュの布地にぴったりの雰囲気で、中々可愛らしく出来たと思う。
「天気、一気に崩れてきたなぁ」
数時間前はまだ太陽が出ていたので、縁側に座って縫い物をしていたが、今ではどんよりとした厚い雲が空を埋め尽くしていた。
ぽつり ぽつり
地面に雨粒が落ちてきては、瞬く間に染み込んで、土の色が変わっていく。
時刻は午前11時を過ぎたところ。
まだ昼食には早いが、お腹の虫が騒ぎ出したので裁縫道具を仕舞ってキッチンに向かうことにした。
ほかほかの白いご飯に、梅干しを1つ。
百合子のお店の、まっしろでふるふるな絹ごし豆腐。生姜醤油掛け。
だし巻き玉子は、ちょっぴり焦がしてしまったが、きっとこれはこれで香ばしいはず。
「んー。何ともシンプルな食卓。でもこれが美味しい。いただきます」
手を合わせた時だった。
「にゃあ」
まるで甘えるかのような声が、縁側のある庭から聞こえてきた。
そこには1匹の三毛猫。
その隣には、50歳くらいの女性が立っていたのだった。
「えぇっ。あの、雨降ってますよ。傘は・・・と言うか何か御用でしょうか?」
女性は動揺する私の問い掛けにも表情を変えず「大丈夫です」と静かに答える。
そして、少し間をあけて「美味しそうな匂いにつられて。猫ちゃんと一緒に来ちゃいました」と、ふっと笑顔を見せた。
銀縁の眼鏡越しに、目尻にシワを寄せて笑う瞳からは、悪い人のようには感じられない。
「あー・・・と、とりあえず上がります?」
静かな、奇妙とも言える空気に耐えられなくなったさち子は、思わずそう言った。
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げた女性は、靴を綺麗に揃えてから「お邪魔します」と、部屋に入った。
さち子は猫の足をタオルで拭いてから、部屋に上げた。
料理をもう1人分、急いで用意した。
女性の名は、津田雅美。
それ以上の事は聞いていない。
と言うか、聞くつもりもなかった。
それを聞いたところで、何かが判断出来るわけではないと思っていたからだ。
「美味しい」
さち子が少し焦がした卵焼きを食べて、彼女はそう言った。
「おいしいものって、派手さや手が込んでるかどうかじゃ無いわよね」
そう言って、後は静かに。でも幸せそうに全て食べてくれた。
それだけで十分なのだ。
私は変わり者かもしれないが、ついさっき出会って食事を共にしただけの雅美に、親近感が沸いていた。
「どこか泊まるところはあるんですか?今日はこのまま雨も続くでしょうし。良かったら泊まっていきます?」
「え?良いんですか?」
流石に驚いた様子で少し悩んでいたが「ありがとうございます。宜しくお願い致します」と、深々と頭を下げた。
そんな雅美を見て思わず吹き出してしまった。
こうして、嵐の日に突如やって来た女性、津田雅美と1匹の猫と出会ったのだった。
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