2 / 19
豆腐屋のゆりちゃん
しおりを挟む
「ゆりちゃん、こんにちは。花村です」
午後1時。家から10分ほど歩いた先にある、古びた商店街の小さな豆腐屋にやって来た。
「あらぁ、さち子!久しぶり!いらっしゃい」
さち子の顔を見るや否や、満面の笑顔で伊藤百合子が濡れた手をエプロンのポケットから出したタオルで拭きながら出てきた。
「やだもう、お互いすっかりおばちゃんねぇ、あはは!」
「まだ45。もう45。若々しくて綺麗にしてる人も居るけど、私は女を捨てて生きてしまってるから仕方無いわね」
さち子はそう言って笑い飛ばす。
普通なら失礼な言葉だと思うだろうが、さち子と百合子の関係はこんな感じなのだ。
一緒に働いていた頃も、誕生日が来る度に老後はどう生活したいかとか、歳を重ねる事を寧ろ楽しんでいた。
百合子がこっちに越したのは10年前。
旦那とまだ小さかった子供を連れて、実家の豆腐屋に戻ったのだ。
「昨日こっちに来たから、お礼にね。家電、大変だったでしょう?本当にありがとう」
「良いのよー!旦那と健太郎にも手伝って貰ったから!むしろあれだけで大丈夫?」
健太郎とは、百合子の14歳になる息子だ。
「うん。さっきここに来る途中にリサイクルショップがあったから、あそこで集めようと思って。帰りに見てみる」
この豆腐屋の並ぶ商店街に、これまたボロボロな佇まいのリサイクルショップがあった。
「あー、滝じぃの所ね!うんうん。良い人よ、仲良くなったら色々貰えるかもしれないし、行ってみな。はいこれ、あげる!」
そう言うと、百合子は絹豆腐を一丁、袋に詰めて持たせてくれたのだった。
「これから宜しくね!」と店先から手を振る百合子に頭を下げてから、滝じぃというらしい人の営むリサイクルショップを目指して、夏の陽が降り注ぐ商店街を歩き出した。
午後1時。家から10分ほど歩いた先にある、古びた商店街の小さな豆腐屋にやって来た。
「あらぁ、さち子!久しぶり!いらっしゃい」
さち子の顔を見るや否や、満面の笑顔で伊藤百合子が濡れた手をエプロンのポケットから出したタオルで拭きながら出てきた。
「やだもう、お互いすっかりおばちゃんねぇ、あはは!」
「まだ45。もう45。若々しくて綺麗にしてる人も居るけど、私は女を捨てて生きてしまってるから仕方無いわね」
さち子はそう言って笑い飛ばす。
普通なら失礼な言葉だと思うだろうが、さち子と百合子の関係はこんな感じなのだ。
一緒に働いていた頃も、誕生日が来る度に老後はどう生活したいかとか、歳を重ねる事を寧ろ楽しんでいた。
百合子がこっちに越したのは10年前。
旦那とまだ小さかった子供を連れて、実家の豆腐屋に戻ったのだ。
「昨日こっちに来たから、お礼にね。家電、大変だったでしょう?本当にありがとう」
「良いのよー!旦那と健太郎にも手伝って貰ったから!むしろあれだけで大丈夫?」
健太郎とは、百合子の14歳になる息子だ。
「うん。さっきここに来る途中にリサイクルショップがあったから、あそこで集めようと思って。帰りに見てみる」
この豆腐屋の並ぶ商店街に、これまたボロボロな佇まいのリサイクルショップがあった。
「あー、滝じぃの所ね!うんうん。良い人よ、仲良くなったら色々貰えるかもしれないし、行ってみな。はいこれ、あげる!」
そう言うと、百合子は絹豆腐を一丁、袋に詰めて持たせてくれたのだった。
「これから宜しくね!」と店先から手を振る百合子に頭を下げてから、滝じぃというらしい人の営むリサイクルショップを目指して、夏の陽が降り注ぐ商店街を歩き出した。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
陽だまりカフェ・れんげ草
如月つばさ
ライト文芸
都会から少し離れた、小さな町の路地裏商店街の一角に、カフェがあります。 店主・美鈴(みすず)と、看板娘の少女・みーこが営む、ポプラの木を贅沢に使ったシンプルでナチュラルなカフェには、日々ぽつりぽつりと人々がやって来ます。 いつの頃からそこにあるのか。 年齢も素性もわからない不思議な店主と、ふらりと訪れるお客さんとの、優しく、あたたかい。ほんのり甘酸っぱい物語。
次元境界管理人 〜いつか夢の果てで会いましょう〜
長月京子
ライト文芸
憧れの先輩と一緒にいたのは、派手なドレスを着たお姫様。
わたしは、見てはいけないものを見てしまったらしい。
大好きな人にはそばにいてほしい。
でも、その願いが世界を終わらせてしまうとしたら--。
SF恋愛ファンタジー。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】皮肉な結末に〝魔女〟は嗤いて〝死神〟は嘆き、そして人は〝悪魔〟へと変わる
某棒人間
ライト文芸
宝生高等学校に通う音無希津奈(おとなしきづな)は、その名前の通り〝絆〟を大事にする女子高生である。
彼女のクラスには二人の回夜がいる。回夜歩美(かいやあゆみ)と回夜光輝(かいやこうき)。二人は双子……という訳ではなく、親戚である。男の回夜光輝はクラスの、そして学校でも評判の美少年。対して女の回夜歩美はクラスでも特に友人もいない孤独な文学少女。
そんな二人をクラスメイトに持つ音無希津奈は、母親が最近になって木田という男性と再婚を考えているという事情があった。木田さんは悪い人ではない。だけど……。音無希津奈は煮え切らない自分の感情にバイト帰りフラフラと夜の街を散策する。そこに――
「こんばんは、音無さん。〝絆〟について、こんなお話を知っている?」
回夜歩美は微笑んで〝絆〟について語り、
「歩美には気を付けろ。あいつは……〝魔女〟だ」
後からやって来た回夜光輝は警告する。
そして――音無希津奈が所属する友人グループでも、変化が起きる。
これは……『回る夜を歩く者』を自称する〝魔女〟回夜歩美が遭遇する少女達のお話。皮肉の効いた、狂気に触れていく少女達の物語。
※表紙はpixivの【えむ】様よりお借り致しました(https://www.pixiv.net/users/23834991)。
■R4/8/13 24hポイントが9,514ptでライト文芸2位になりました。ありがとうございます。
……しかし何故? 完結してから三カ月くらい経っているのに、何故いきなり急上昇したのでしょうか?話分かる方いらっしゃいましたら、感想でお聞かせ下さい。
井の頭第三貯水池のラッコ
海獺屋ぼの
ライト文芸
井の頭第三貯水池にはラッコが住んでいた。彼は貝や魚を食べ、そして小説を書いて過ごしていた。
そんな彼の周りで人間たちは様々な日常を送っていた。
ラッコと人間の交流を描く三編のオムニバスライト文芸作品。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる