上 下
81 / 120
第一章 始まりの館

Chapter79 ロリポップ

しおりを挟む
街には馬車で出掛けた。
まず郵便局で手紙を出してから、露店の飴屋を探す。
「ほらアレ!」
そう言ってアルベルティーナが指差す露店では、飴を伸ばして細くしてクルクルと巻いて串に刺し、ロリポップにしていた。
「ほんと、よく伸びるわね…」
確か、本に載っていた材料には〝水飴〟と書いてあったが…。
〈飴の元よね…ここで売ってるのかしら?〉
露店に並ぶ商品の中には、瓶に入った水飴が売っていた。
一つ40Gなので、手頃な値段だ。
しかし手のひらサイズなので、多くの飴を作ろうと考えるなら高くなる。
アルシャインは思い切って聞いてみた。
「こんにちわー!美味しそうな飴ですね!」
「そうだろう?色んな着色料を作って入れてるからな!」
飴屋のおじさんは陽気に答える。
「この水飴って作れますか?」
「作りたいのかい?」
おじさんが驚いて見ると、アルベルティーナとマリアンナが前に来て言う。
「金の羊亭でもロリポップを出してみたいの!おじさん、金の羊亭知らない?」
そうマリアンナが聞くと、おじさんは驚いて言う。
「ああ、孤児院宿の!…しかし、ロリポップを作るには難しいと思うぞ」
「なんで?」とアルベルティーナ。
「水飴は見ての通り場所を取る。作り方を教えれば確かに出来るだろうが、他の料理が出来なくなるからさ」
「…あ……」
マリアンナとアルベルティーナは顔を見合わせた。
アルシャインも考え込む。
「そうね~…水飴だけなら売れるかもしれないけど、それはこの飴屋さんだけの物だわ。どうしても作りたかったら、お休みの日に試せばいいのよ」
そうアルシャインが言うと、アルベルティーナが目を輝かせて飴屋のおじさんを見る。
「お願いします、作り方を教えて下さい!あたし、将来レストランをやりたいの!そこのお土産にもいいと思うんです!」
そう熱弁すると、おじさんは苦笑してから頷いた。
「じゃあ中に入って、まずは作ってごらん。ちゃんと手を洗ってからな」
「はい!」
アルベルティーナが答えて中に入って水桶で手を洗ってから、おじさんの言う通りにロリポップを作ってみる。
伸ばす作業が難しくて細すぎたり太くなったりした。
「難しい…」
「そのロリポップはあげるよ。そっちの嬢ちゃんは?」
「あたしはいいわ。お休みの日にティーナと一緒に試すから!」
そう言うとマリアンナは店頭に並ぶロリポップを一つ選んで20Gで買った。
「これを見本に作りましょう!」
「いいわね!…おじさん、水飴の作り方を教えて下さい!」
アルベルティーナは店から出て、背負ってきていたサッチェルバッグからノートと鉛筆を取り出して聞いた。
「…分かった。あのな」
そう言いおじさんは器用にロリポップを作りながら教えてくれた。

その帰りにリサイクル屋を見てみると、ハンクが来て商品を勧めてくる。
「手動球断器!どうだい?木製と鉄製があるよ!」
「…何それ?」
3人で寄って手に取って見るが、使い方が分からない。
「ここに長細くした飴や団子なんかを置いて前後に押し切ると、丸くなってるって話だ!君達にピッタリだと思ってね!」
「なるほど~…買うわ!後ね…石うすは無いかしら?」
「ついに小麦粉も作るのかい?あるよ、こっちにデカいのと小さいのと…コーヒーミルとスパイスグラインダーとか…なんか手動で粉にするタイプのやつ」
「いいわね!じゃあ大きい石うすと~…紅茶用と…スパイスグラインダーと、あ、このグラインダーも!他にオススメある?」
アルシャインが選んでから聞くと、ハンクは棚を案内する。
「ここが調理器具だよ。四角いフライパンとか、魚のウロコ取りとか、スティックポテトチョッパーなんてのも、ほら」
ハンクが手に取って見せる。
「ここにジャガイモ乗せて、このガラスケースで挟んで上から力を入れると、下に四角くなって出て来るらしいよ!」
「いいわね!そんな便利な道具、何処から仕入れたの?」
「隣国のレストランが潰れたらしくてね、先に引き取りに行ったのさ!」
「魚のウロコ取りも欲しいわね…じゃあこれと………」
言いながらアルシャインは周りを見回す。
奥に素敵な石の置物があった。
〈いいな~…お庭に飾りたいな~……〉
そう思うが、子供達の目線も気になりやめておいた。
「今日はそれで!」
「まいど!」
ハンクは手動球断器2つと大きめの石うすとグラインダー2つとスパイスグラインダーと魚のウロコ取りとスティックポテトチョッパーの計算をする。
それらの会計を済ませると、マリアンナがカシアンを呼びに行く。
するとカシアンが重い石うすを持って行き、みんなで他の物を運んだ。
ランチには間に合いそうなので、屋台の肉と野菜のクレープを20個買って馬車の中で一つずつ食べた。
食べ盛りの男の子の為に多く買ったが…早速カシアンが2つ食べたので減っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

処理中です...