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第一章 始まりの館

Chapter33 珍客

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 ランチには、飾っていたコースターやチェスのコマの置物も売れてしまった。
ついでにリースも2百Gで3つも買われた。
「ありがとうございますー…」
言いながらアルシャインは明らかに落ち込んでいた。
「急いで作らないと!」
それを見たクリストフとリュカシオンとレオリアムが家具作りの合間にリースを作る。
「なんで落ち込むのに売るんだ?」
ロレッソが聞くと、アルシャインが苦笑して言う。
「だって、欲しいと思ってくれるのは嬉しいし、経営にはお金もいるし……でも淋しくて」
そう言うとみんなが笑った。

午後に手が空いたので、アルシャインはヴァイオリンを取り出して〝雨の恵みを喜びたもう〟という聖歌を弾いた。
日照り続きの村が神の奇跡によって雨を降らせてもらったという内容だ。
「イテリー、イテリー、おお我らがイテリー」
ペンキ屋のダグラムが歌う。
〝イテリー〟とは聖人の一人の事だ。
ここでは神の御使いとしての聖人が5人いて、各地を巡って助けてくれたという聖書の話にある。
アルシャインの元居た国では、それが聖女に変わっているだけだ。
元々は一つの国が分かれたらしいが、詳しくは知らない。
アルシャインはヴァイオリンをケースにしまってミシン部屋に置く。
ミシン部屋では、アルベルティーナが布団の布を縫っていた。
「え…あれ?」
アルシャインがふと窓から庭を見ると、真ん中辺りに何か小動物が見えた。
気になったので下に降りてレインコートを着て外に出る。
ハーブの隣りで両手で持てるくらいの鳥がうずくまっていた。
そっと持つとおとなしかった。
「可哀相に…もう駄目なのかしら…」
そう言いながらも中に入ってタオルにくるみ、木箱にワラを敷いてそこに入れ、端のテーブルに置いておいた。
「ローズパイロットか…群れとはぐれたか?まだ幼いな」
カシアンがコーヒーを飲みながら覗いて言う。
バラ色のオウムなのでローズパイロットと呼ばれる野鳥だ。
頭に冠羽がある可愛い野鳥で、ペットとして輸出もされている。
「元気になったら帰れるといいわね」
アルシャインはそう言ってローズパイロットを撫でる。
「ティーナ飼いたいな」
ティナジゼルが言うと、アルベルティーナも頷く。
「お友達欲しいよね…」
「元気になるといいわね」
アルシャインがそう言って仕込みに入る。
ディナーの時間になるので、ローズパイロットを入れた箱はアルシャインが自分とフィナアリスの部屋に運んで置く。
木箱にそっととうもろこしやカボチャやピーマンなどの野菜を入れておいた。
「ごめんね、ここに居てね」
そう言い部屋の戸を閉めて下に降りた。

 ディナーも街からのお客さんで賑わっていた。
もう満席で、待っている人が立っている状態だ。
クリストフとメルヒオールが前に作った椅子を玄関前に並べておいた。
「これに座ってて」とクリストフ。
「あー、ごめんなさい!チャーシュー売り切れだわ!」
アルシャインが言うと、ティナジゼルが伝えに行く。
「何か他に無い?」
「じゃあコトレッタで」
そうお客さんが言う。
「コトレッタ一つー!」
ティナジゼルが言いながら用紙に書いた。

 そんなディナーも落ち着いた頃、マリアンナとレオリアムがアルシャインの部屋にローズパイロットの様子を見に行く。
すると、弱っていたローズパイロットが椅子に止まっていた。
「元気になってる!」
マリアンナがそっと近寄って手を伸ばすと、トンと乗ってきて肩に移った。
「可愛い~」
見ているとローズパイロットは飛んでしまう。
「あ!待って!」
マリアンナとレオリアムが追い掛けると、一階のテーブルに乗ってしまう。
「あらあら、元気になったのね、良かったわ」
そう言ってアルシャインはローズパイロットを持って、ニワトリ小屋に入れに行く。
「朝になったら放してあげるから、ここで寝てね」
そう言い、アルシャインは中に入る。
 お客さんは3人…旅人とロレッソとダンヒルだ。
アルシャインはいつものようにピアノを弾いて言葉遊びをする。
「お山を行こう、お山を行こう♪何が採れるかな~?」
「キノコ!」とティナジゼル。
「キノコが採れた、キノコの次は何採れる?」
「どんぐり!」とメルヒオール。
「キノコとどんぐり、他には何が採れるかな?」
「レタス!」とクリストフ。
「レタス!新鮮なレタスとキノコとどんぐり嬉しいな~♪何の料理にしようかな?」
そう言い振り向くと、みんなが考える。
「待った!せめてグーズベリーを追加でどんぐりとパイに!」
そうルベルジュノーが植木鉢を作りながら言う。
「どーんぐりとグーズベリーのパイ~♪」
「レタスとキノコはソテーで」とノアセルジオ。
「うん、美味しいね!ソテーとパイ~、今日は美味しい夕食だ!」
そこで切って、帰るロレッソとダンヒルを見送って掃除をする。
「部屋の鍵に、それぞれの色を塗った木札を付けたらどうかな?」
そうノアセルジオが提案する。
「それはいいわね!白と水色とクリームの木札を作りましょう!」
そう言ってアルシャインが用意をする。
ペンキを塗った後に、乾かしながらクリストフが呟く。
「ここに小鳥とかどんぐり描いたら可愛いね」
「それいい!やっていい?」
ティナジゼルが賛成してアルシャインに聞くと、アルシャインは笑って頷いた。
木札の端には、鳥、どんぐり、葉っぱを描いた。
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