上 下
20 / 120
第一章 始まりの館

Chapter18 値上げ

しおりを挟む
 翌日は小雨だった。
朝早くにアルシャインは男性用と男の子用のレインコートを作る。
レース編みのコースター2つや羽も付けたドリームキャッチャーを2つ作った。
「それ欲しいって言われたら?」
そうティナジゼルが聞くと、アルシャインは考える。
「そうねぇ…コースターはカウンターに使っておいて…それでも欲しい人には3百、ドリームキャッチャーは窓に飾っておくから…5百かな?」
「…売るより飾りたいんだね」
いつもより高い値段なのでレオリアムが苦笑して言う。
「飾りたくて作ってるのよ、当たり前じゃないの!」
そう言いアルシャインはキッチンに立つ。
みんなはクスクス笑ってアルシャインを見た。

旅人2人はステーキやラビオリやラザニアやパイまで食べた。更にパウンドケーキを5個ずつ持ち帰りに買ったので、無くなってしまう。
アルシャインはパウンドケーキを作りながら言う。
「…ついでにクッキーも作っておきましょうか」
そう言いクッキーを作る。
「これはみんなでおやつに食べてね」
「売る時は?」とクリストフ。
「え…?」
「だって、袋に入れてカウンターに置くとみんなが欲しがるもん」とクリストフ。
みんながうんうんと頷く。
「え…えーと…」
「3枚1Gは?アイシャママは1Gが好きだから」とマリアンナ。
「2枚だよ」とレオリアム。
「うん、2枚だな」とルベルジュノー。
みんなが賛成した所にエイデンがやってくる。
「おはよう」
ロレッソが言うとみんなが
「おはよう!」と答える。
「はは!元気でいいな。外のかまどは、曇りか晴れの日でいいか?あ、コーヒーくれ」
そう言いながらロレッソがカウンターに座る。
「お、いい匂いだな…何を作ってるんだい?」とロレッソ。
「ベリーとオレンジのパウンドケーキとクッキーですよ」
笑ってアルシャインが答えると、ロレッソが笑って言う。
「その焼き立て貰えるか?ケーキは…3つでクッキーは…書いてないな」
ロレッソがメニューの黒板を見ながら言うので、ルベルジュノーが〝クッキー2枚1G〟と書いた。
「2枚ずつか…2枚くれ。美味かったら土産に貰っていくよ」
そう言って注がれたコーヒーを飲む。
「クッキー焼けましたよ」
アルシャインが言い、パウンドケーキとクッキーを出す。
そこに婦人達が入ってくる。
「素敵なレース編みね」
早速窓のドリームキャッチャーを見て言う。
「ウチにもこんな飾りがあったらいいわね」
「これは売り物?」
婦人達が聞いてくるので、リナメイシーが駆け寄って言う。
「幾らだと思いますか?」
笑って聞くと、婦人達はドリームキャッチャーを見つめながら言う。
「そうね、5百かしら…」
「いえ、8百よ。雑貨屋で見た飾りより細かいし、間違いないわ」
2人で言い合うので、レオリアムが言う。
「650ですよ、マダム」
5百と8百の間を取った。
するとマダムがそれぞれに指差して言う。
「これをくださらない?」
「はい」
答えてマリアンナとレオリアムが窓から外してお守り匂い袋と共に紙袋に入れて渡す。
マダムは7P渡してきた。
「残りのお金で紅茶とアップルパイをちょうだい。キャンディもね」
「私もよ。子供達がキャンディを欲しがってしまって…」
2人が言いながら席に着いて、慌てて言う。
「そのクッキーも…」
同時に言い、顔を見合わせて笑ってからまた同時に言う。
「4枚ね」
「ありがとうございます!」
みんなで言って笑うが、アルシャインは苦笑した。
〈やだ、いつになったら窓いっぱいに飾れるのかしら…〉
不安になりながらも、アルシャインはフルーツを切る。

ランチには街から果物売りや綿屋、布屋などの人々が来て普通に注文していた。
「値上げしてるけどいいよね?」
とティナジゼルが聞いてから注文を取った。
みんなは笑って頷いた。
「安い安い!まだチップを弾めるよ」
みんなそう答えた。
「良かったねアイシャ。まだ来てくれるよ」
ノアセルジオが言うと、アルシャインは苦笑した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...