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第一章 始まりの館

Chapter09 団体さま

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ノアセルジオとルベルジュノーがまたベッドを作り、レオリアムとアルベルティーナとマリアンナがサイドテーブルを作る。
クリストフとリナメイシーとティナジゼルは館の周りの石を拾い集めて、中庭の道沿いに置いていく。

その間にアルシャインは遅い朝食を食べてからミルクを鍋で温めてチーズを作る。
「いつの間にか、アンヌやジュドーがしっかり者になったのよね」
率先して物事に当たり、みんなに指示まで出している。
「違う違う、土を盛ってる場所は花壇なんだって!」とルベルジュノー。
マリアンナは金づちを使えるようだ。
カシアンがクギと金づちとノコギリの使い方を教えている。
〈…なんか、いいな…〉
アルシャインはみんなを見て思う。
夫と、子供達とこんな風に暮らせたらーーー。
「待って、相手いないから!」
アルシャインは顔を真っ赤にして立ち上がる。
「私、お客さんを呼び込みにーーー」
そう言い掛けると、門の所に最初の客のジョージさんが立っていた。
その後ろに3人、立っている。
「ジョージさん!…後ろの方は…」
「やあ、お嬢さん。こいつらは私の仲間なんだが、ここの事を話したら泊まると言い出してね。部屋はあるかな?」
「い、今ベッド作ってますので、待って下さればあります!」
そう言うと、ジョージは笑って頷いた。
アルシャインが4名のお客さんをそれぞれの部屋に案内した。

作ったベッドには、男子の部屋の布団を置いてクッションを各部屋に置いた。
「ごめんなさい、テーブルとイスを用意出来なくて…ここの部屋は3Gでいいですので」
そう言うと、髪を肩まで伸ばした文官的な男性が微笑む。
「いえ、4Gで結構です。クッションも柔らかい…」
そう言い、パッチワークのクッションを抱く。
「夕飯は5時ですので…それまでご自由にどうぞ」
「あの」
「はい?」
「お嬢さんは、お幾つですか?」
「え?私の年ですか?!…18です…」
「まだお若いのに孤児院の宿の経営とは…感服させられます」
「い、いえ…それでは…」
胸がむず痒くなってアルシャインは笑いながら部屋を出た。
そして、カバンを手に外にいるみんなの所に行く。
「ね、誰か狩りに行って来て!私は買い物に行ってくるから」
そう言うと、ルベルジュノーとノアセルジオが狩りに行き、カシアンが寄ってくる。
「何を買うんですか?」
「ハーブと豚の腸と腸詰めにする器具と手動式ミンサーと…」
「あ、ソーセージ作るやつ一式ですね」
「そう!」
「買ってきますから、冷蔵庫見て下さいよ。一応氷は湖から取ってきましたから、冷えてると思いますよ」
笑って言い、カシアンがカバンを手に走っていく。
アルシャインが顔を赤くして見送っていると、急いでテーブルを作っているルベルジュノーの傍らで板を押さえているマリアンナが聞く。
「どうしたの?アイシャママ」
「なんでもないのよ!ホントに!」
笑ってごまかし、アルシャインはキッチンへ行く。
冷蔵庫はそのまま使えたので磨いておいたのだ。
冷蔵庫を開けると、ヒンヤリとした空気が漂う。
「うん、水は下に流れ落ちる仕組みだし、これなら使えるわね!」
そう言い、パン生地を入れてパスタ生地を作る。
するとジョージ達がダイニングのテーブルに集まって話をする。
「マスター、麦酒エールは無いのかい?」
「水しか無くて…」
「馬鹿、ここは酒場じゃないと言ってるだろう!」
ジョージが体格のいい男の頭を叩く。
「済まないね、水をくれるかい?」
「はい、ただいま」
アルシャインは水を4つトレイで運んで置いた。
「ちょっと外に出ますね」
笑って言い、アルシャインは外に出る。
庭に、ベンチが一つ置かれていた。
「今もう一つ出来るよ」
マリアンナが言い、金づちを使う。
「果樹園に水やりをしてきてくれる?」
アルシャインが言うと、レオリアムがクリストフとリナメイシーを連れて行った。
マリアンナとアルベルティーナはベンチを作り終えたらしい。
アルシャインが確認をして、足りない箇所を補強した。
「よし、それじゃ言葉を覚えましょうか」
アルシャインはティナジゼルを抱っこして、マリアンナとアルベルティーナと共に言葉遊びをした。
「一人の羊がメエメエメエ、遊びに来たんだメエメエメエ、ヤギさんヤギさんこんにちわ!」
言いながら、出てきた言葉を地面に書く。
帰ってきたレオリアムとクリストフとリナメイシーも共に言葉を習う。

 その日はソーセージとパスタも作ったので、メニューを書き換えた。
パン一個1G、スープ1G、パスタ2G、ソーセージ2個4G。
「…これでどうですかジョージさん、買ってくれますか?」
そう聞くと、ジョージは笑って言う。
「もちろん買うとも!ソーセージは一つで3Gもするから安いよ、5Gにしたらどうだい?」
そう提案してくれるので、ソーセージは5Gにした。
卵はいつもあるわけではないので書かなかった。
 子供達にも、少しずつパスタとソーセージを分けてあげられた。
その日男の子の部屋ではワラだけで寝る事となったが、文句を言う子は居なかった。
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