悪役令嬢の正体と真相

東 万里央(あずま まりお)

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真相(7)@今世

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 それからのジェラールとの日々は、ほんとうに楽しくてならなかった。私たちはきょうだいで、親友で、いつもいっしょにいた。

 父はよく「お前たちは二人で一人なんだね」、と笑いながら目を細めていた。ジェラールはなぜか顔を赤くして頬を搔いていたっけ。

 ジェラールは明るくて強くて頼りになって、ジェラールがいると不思議となんでもうまく行った。フィリップ様との婚約が決まったのもこのころだ。

 そんなふうに毎日が幸せ過ぎたから、私はすっかりここが乙女ゲームの世界で、自分が悪役なんだってことを忘れていた。だから、きっと神様が思い知らせようとしたんだろう。

 ある朝私はいつものように起き上がろうとして、身体がまったく起こせないのに気づいた。だるくて頭が痛くて死んでしまいそうだった。

 いっこうに呼び鈴を鳴らないのを不審に思い、メイドが部屋に飛び込んで来たのは、それから二時間後のことになる。すぐさまお医者様が呼ばれ、三日がかりで診断が下された。

 私の病気は身体が血をうまく作れなくなるものだった。死病ではないけれども重病で、学園への入学は無理だと宣告されてしまった。

――目の前が真っ暗になるのを感じた。

 そんな、ゲームのスタート地点にすら立てないだなんて。努力でどうにかすることも許されないだなんて。ジェラールのおかげでやっと希望を持てるようになったのに。この世界もそんなに私が嫌いなんだろうか? 

 私が絶望しかけたその時に、ジェラールは再び目の前に現れた。

「俺がアディになるよ」

 とんでもない申し出だった。ジェラールは私の身代わりになって、学園に通うと言うのだ。決して諦めるなとジェラールは言った。

「そんな、だめよ!!」

 私は必死に首を振った。
 
 そんなことをしてしまったら、ジェラールの人生はどうなるのだろう? もうたくさんの幸せをあなたからはもらっている。

 これ以上何も奪えないと私は首を振った。ところがジェラールは私の手を取ると、にっと笑ってこう言ったのだった。

「なあ、俺達は二人で一人なんだろ?」

 「だったらさ」と屈託のない笑顔を見せる。

「だったら俺に任せとけ! 絶対に王太子の嫁さんにしてやるから!」

――ねえ、ジェラール。あなはどうしてそんなに強くて優しいの。
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