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76.イケメン兄弟
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目の前で私に優しく手を差し伸べているのは、この世の者とは思えない程に神々しい人物だった。
この世界に来てから、ウィルやエドワードにキャロライン、様々なタイプの美形に出会ったけれど、この人はズバ抜けて美しい。
中性的な美しさって言ったらいいんだろうか? 透き通るようななめらかな肌に整った目鼻立ち、少し長めのサラサラの銀髪。すべてが完璧、いや完璧以上かもしれない。その美しさに目を奪われ、息をするのも忘れてしまう。
私の様子を確認するように顔を覗きこまれると、まるで魂を吸い取られてしまうのではないかと思うほどに体から力が抜けていく。
正気を失いそうな私を現実に引き戻したのは、レジーナ様の怒り声だった。
「何の騒ぎかと来てみたら……セス、ラウル、これは一体どういうことです?」
そりゃこんな壊れたドアを見たら、そういう反応になっちゃうわよね。だからって、セスには悪びれる様子もない。
「ちょっと蹴ったら割れちまったんだよ」
「またですか? あなたはもう少し落ちつきをもって……」
「あぁもう、うるせーな。そんなドアくらいでカリカリしてたら長生きできねーぞ」
「こら、セス。そんな言い方はお祖母様に失礼ですよ」
あれ? 今この美しい人、レジーナ様のことをお祖母様って言ったわよね? ってことは、この二人はレジーナ様の孫ってこと?
「全くもう、あなた達ときたら……」
レジーナ様が大きなため息をついた。
「アリー、ごめんなさいね。この子達に何かされなかったかしら?」
えーっと……何て答えるべきなのかしら?
チラッとセスの方を見ると、いらないことを言うなとその瞳が言っている。そんなに睨まれちゃったら、しょうがない。
「鼻先に剣を向けられました」
「ちょっ、お前何言って……」
「セス、行きますよ!!」
セスの文句をレジーナ様が遮る。その静かな命令からは、先程以上の怒りが滲み出ていた。
ざまぁみろ……怖い思いをさせられた仕返しよ。レジーナ様に追い立てられるようにして去っていくセスの後ろ姿に向かって、心の中でべーっと舌を出した。
☆ ☆ ☆
「アリー、わたくしの孫達を紹介しますね」
お茶の席でレジーナ様から先程の男性二人を紹介された。
私に剣を向けた乱暴者がセスで、美しすぎるのがラウル、二人ともオリヴィアの兄らしい。レジーナ様からしっかりとお説教されたのか、セスには先程までの勢いはない。
どうやらオリヴィアには9人兄がいるらしい。ほぼ全員がこの城で暮らしているらしいのだが、セスはしばらく修行のため山籠りをし、ラウルは勉学のため別宅にいたらしい。
「セス兄様もラウル兄様も、急に帰って来るんだからびっくりしちゃったわ」
紅茶のカップに角砂糖を二つ入れ、スプーンでしっかりとかき混ぜながらオリヴィアが言った。
「お前があんな手紙を寄越すから、急いで帰ってきたんだろ」
「私、何か変なこと書いたっけ?」
オリヴィアが心当たりないなぁっと首を傾げる。
「お前なぁ。エドワードの連れてきた女のことが好きだから誘惑してくれって書いただろ!!」
びっくりして思わず紅茶を吹き出してしまいそうになった。エドワードの連れてきた女って……もしかしなくても私のことよね?
オリヴィアを見ると、一瞬キョトンとした顔をして笑い出した。
「セス兄様ったら、そんな変な言い方したらアリーがびっくりするじゃない」
はい、びっくりしてます。
確かに気に入られてるとは思っていたけど、誘惑ってなんじゃそら?
「私はただ、アリーが兄様達の誰かと結婚してくれればいいなって思っただけよ」
「どうして俺が、こんな冴えない女を嫁にもらわねぇといけないんだよ」
私を指差して冴えない女と言うセスに、少しだけムッとする。
「だってぇ……アリーが王都に帰っちゃったらもう会えないじゃない。だから兄様と結婚してずっと一緒にいてもらおうと思ったの」
「オリヴィア様……」
そんな風に言ってもらえるなんて、とっても光栄だわ。なんて思ったけれど、オリヴィアの次の言葉にずっこけそうになった。
「アリーはね、とっても可愛くて妹みたいなの」
ちょっ、ちょっと。お姉さんの間違いじゃないの? 私はもうすぐ18になるのに、15歳のオリヴィアに妹扱いされるってどういうこと?
「こんな妹なんていらねーだろ。お前には俺達がいるんだから」
いやいや、その前に私が妹扱いされてることに突っ込んでよ!
「まぁまぁセス。少し落ちつきなさい」
それまで黙っていたラウルがにっこりと微笑んだ。
あぁ、やっぱり美しい。
あんまり直視して正気を保てなくなってはまずいと、カップに目を落とした。
「オリヴィアは末っ子でずっと妹が欲しいと言ってましたからね。アリー嬢を妹みたいに可愛がるのは素敵なことじゃないですか」
ラウルまで……
どうして私の方が妹ってことに引っかからないのよ!! 悶々としながらも、口をはさむタイミングがつかめない。
「オリヴィア、いいですか? アリーはあなたのおもちゃじゃないんですからね。アリーの勉強の邪魔にならないようにしなさいよ」
好き勝手言う3人に割って入ったのはレジーナ様だ。
「お祖母様は勉強勉強ってそればっかり。それじゃあアリーが気の毒だわ」
「アリーが今しているのは花嫁修行の一部です。貴族の令嬢が生まれた時から学んでいるものを短時間で身につけようとするのですから、寝る間も惜しんで勉強してもまだ足りないくらいですよ」
うっ。これってきっと半分はオリヴィアに、そして半分は私に向けて言ったんだよね。私的には結構頑張ってるつもりだけど、レジーナ様から見たらまだまだ努力が足りないみたいだ。
「でもそんなに勉強してたら、エドワードと結婚するの嫌にならない?」
「オリヴィアったら何言ってるの!!」
「お祖母様には聞いてないわ。ねぇ、アリー? 勉強ばっかりでエドワードとの結婚なんてやめたくなったんじゃないの?」
皆の視線が私に集まる。その視線の圧力は半端ない。皆タイプはバラバラだけど、結構な美形揃いだ。真面目な顔して見つめられるだけで萎縮してしまう。
「い、今のところはまだなってません」
「えー、残念」
オリヴィアが口を尖らせた。
「ねぇアリー、もしエドワードが嫌になったらすぐに言ってね」
「冗談じゃねー!! 嫌になるのは、こいつじゃなくてエドワードの方だろ」
セスが握り拳でテーブルをドンっと叩くと、レジーナ様が無作法だとたしなめた。
「エドワードはなぁ、すっげー奴なんだよ。腕もたつし頭もいい。お前みたいな奴がエドワードと結婚するだなんて俺は認めないからな」
何だかすごく敵視されているみたいだ。セスの私を見る目がとても鋭い。
「弟が不快な思いをさせて申し訳ありませんね」
優しい口調でラウルが言った。
あぁ。美しい人は、やっぱり心も美しいのね。
ラウルに頭を下げさせたことが申し訳なくて、私もラウルに向かってぺこりと頭を下げた。
「セス兄様は、エドワード命なのよ」
オリヴィアがおかしそうに笑っている。
どうやらセスが私を敵視するのは、大好きなエドワードの恋人が、どう見ても不釣り合いな私のような貧相な娘だったかららしい。
「だいたい何だよ、このダサい眼鏡」
急に立ち上がったセスが私の眼鏡に手を伸ばした。
やばいっ!!
ウィッグが外れたら大変だと体を後ろにずらすけれど……残念、ちょっと遅かった。
すでにセスの手は私の眼鏡に届いていた。
眼鏡を外されたら、私の本当の瞳の色がばれてしまう。
眼鏡が外される前に慌てて固く目をつぶった私の耳に、「えっ!?」っというセスの驚いたような声が聞こえた。
「えっ!?」って何? セスは何を驚いてるの?
不安な気持ちに耐えられず、うっすらと瞳をあけてみると眼鏡は外されていなかった。セスの手が眼鏡に到達したところで、ラウルがセスの手首を掴んでいたのだ。
「女性の顔に許可もなく触れるなんて、紳士的とは言えませんよ」
ラウルの口調は穏やかだったけれど、兄と弟という関係だからだろうか。セスを従わせるような絶対的な力を感じた。
「悪かったよ」
セスが悔しそうな顔をしながらも、小さな声で謝った。
「でもいいか!! エドワードと結婚したかったらなぁ、キャロラインレベルくらいまでにはなりやがれ。じゃねーと絶対認めねーからな」
いやキャロライン様レベルって、あれは最高ランクだから凡人には無理でしょ。まぁ別にセスに認められる必要なんてないんだしっとは思いながらも、セスの尋常ではない迫力に押され、気づけば無言で頷いていた。
この世界に来てから、ウィルやエドワードにキャロライン、様々なタイプの美形に出会ったけれど、この人はズバ抜けて美しい。
中性的な美しさって言ったらいいんだろうか? 透き通るようななめらかな肌に整った目鼻立ち、少し長めのサラサラの銀髪。すべてが完璧、いや完璧以上かもしれない。その美しさに目を奪われ、息をするのも忘れてしまう。
私の様子を確認するように顔を覗きこまれると、まるで魂を吸い取られてしまうのではないかと思うほどに体から力が抜けていく。
正気を失いそうな私を現実に引き戻したのは、レジーナ様の怒り声だった。
「何の騒ぎかと来てみたら……セス、ラウル、これは一体どういうことです?」
そりゃこんな壊れたドアを見たら、そういう反応になっちゃうわよね。だからって、セスには悪びれる様子もない。
「ちょっと蹴ったら割れちまったんだよ」
「またですか? あなたはもう少し落ちつきをもって……」
「あぁもう、うるせーな。そんなドアくらいでカリカリしてたら長生きできねーぞ」
「こら、セス。そんな言い方はお祖母様に失礼ですよ」
あれ? 今この美しい人、レジーナ様のことをお祖母様って言ったわよね? ってことは、この二人はレジーナ様の孫ってこと?
「全くもう、あなた達ときたら……」
レジーナ様が大きなため息をついた。
「アリー、ごめんなさいね。この子達に何かされなかったかしら?」
えーっと……何て答えるべきなのかしら?
チラッとセスの方を見ると、いらないことを言うなとその瞳が言っている。そんなに睨まれちゃったら、しょうがない。
「鼻先に剣を向けられました」
「ちょっ、お前何言って……」
「セス、行きますよ!!」
セスの文句をレジーナ様が遮る。その静かな命令からは、先程以上の怒りが滲み出ていた。
ざまぁみろ……怖い思いをさせられた仕返しよ。レジーナ様に追い立てられるようにして去っていくセスの後ろ姿に向かって、心の中でべーっと舌を出した。
☆ ☆ ☆
「アリー、わたくしの孫達を紹介しますね」
お茶の席でレジーナ様から先程の男性二人を紹介された。
私に剣を向けた乱暴者がセスで、美しすぎるのがラウル、二人ともオリヴィアの兄らしい。レジーナ様からしっかりとお説教されたのか、セスには先程までの勢いはない。
どうやらオリヴィアには9人兄がいるらしい。ほぼ全員がこの城で暮らしているらしいのだが、セスはしばらく修行のため山籠りをし、ラウルは勉学のため別宅にいたらしい。
「セス兄様もラウル兄様も、急に帰って来るんだからびっくりしちゃったわ」
紅茶のカップに角砂糖を二つ入れ、スプーンでしっかりとかき混ぜながらオリヴィアが言った。
「お前があんな手紙を寄越すから、急いで帰ってきたんだろ」
「私、何か変なこと書いたっけ?」
オリヴィアが心当たりないなぁっと首を傾げる。
「お前なぁ。エドワードの連れてきた女のことが好きだから誘惑してくれって書いただろ!!」
びっくりして思わず紅茶を吹き出してしまいそうになった。エドワードの連れてきた女って……もしかしなくても私のことよね?
オリヴィアを見ると、一瞬キョトンとした顔をして笑い出した。
「セス兄様ったら、そんな変な言い方したらアリーがびっくりするじゃない」
はい、びっくりしてます。
確かに気に入られてるとは思っていたけど、誘惑ってなんじゃそら?
「私はただ、アリーが兄様達の誰かと結婚してくれればいいなって思っただけよ」
「どうして俺が、こんな冴えない女を嫁にもらわねぇといけないんだよ」
私を指差して冴えない女と言うセスに、少しだけムッとする。
「だってぇ……アリーが王都に帰っちゃったらもう会えないじゃない。だから兄様と結婚してずっと一緒にいてもらおうと思ったの」
「オリヴィア様……」
そんな風に言ってもらえるなんて、とっても光栄だわ。なんて思ったけれど、オリヴィアの次の言葉にずっこけそうになった。
「アリーはね、とっても可愛くて妹みたいなの」
ちょっ、ちょっと。お姉さんの間違いじゃないの? 私はもうすぐ18になるのに、15歳のオリヴィアに妹扱いされるってどういうこと?
「こんな妹なんていらねーだろ。お前には俺達がいるんだから」
いやいや、その前に私が妹扱いされてることに突っ込んでよ!
「まぁまぁセス。少し落ちつきなさい」
それまで黙っていたラウルがにっこりと微笑んだ。
あぁ、やっぱり美しい。
あんまり直視して正気を保てなくなってはまずいと、カップに目を落とした。
「オリヴィアは末っ子でずっと妹が欲しいと言ってましたからね。アリー嬢を妹みたいに可愛がるのは素敵なことじゃないですか」
ラウルまで……
どうして私の方が妹ってことに引っかからないのよ!! 悶々としながらも、口をはさむタイミングがつかめない。
「オリヴィア、いいですか? アリーはあなたのおもちゃじゃないんですからね。アリーの勉強の邪魔にならないようにしなさいよ」
好き勝手言う3人に割って入ったのはレジーナ様だ。
「お祖母様は勉強勉強ってそればっかり。それじゃあアリーが気の毒だわ」
「アリーが今しているのは花嫁修行の一部です。貴族の令嬢が生まれた時から学んでいるものを短時間で身につけようとするのですから、寝る間も惜しんで勉強してもまだ足りないくらいですよ」
うっ。これってきっと半分はオリヴィアに、そして半分は私に向けて言ったんだよね。私的には結構頑張ってるつもりだけど、レジーナ様から見たらまだまだ努力が足りないみたいだ。
「でもそんなに勉強してたら、エドワードと結婚するの嫌にならない?」
「オリヴィアったら何言ってるの!!」
「お祖母様には聞いてないわ。ねぇ、アリー? 勉強ばっかりでエドワードとの結婚なんてやめたくなったんじゃないの?」
皆の視線が私に集まる。その視線の圧力は半端ない。皆タイプはバラバラだけど、結構な美形揃いだ。真面目な顔して見つめられるだけで萎縮してしまう。
「い、今のところはまだなってません」
「えー、残念」
オリヴィアが口を尖らせた。
「ねぇアリー、もしエドワードが嫌になったらすぐに言ってね」
「冗談じゃねー!! 嫌になるのは、こいつじゃなくてエドワードの方だろ」
セスが握り拳でテーブルをドンっと叩くと、レジーナ様が無作法だとたしなめた。
「エドワードはなぁ、すっげー奴なんだよ。腕もたつし頭もいい。お前みたいな奴がエドワードと結婚するだなんて俺は認めないからな」
何だかすごく敵視されているみたいだ。セスの私を見る目がとても鋭い。
「弟が不快な思いをさせて申し訳ありませんね」
優しい口調でラウルが言った。
あぁ。美しい人は、やっぱり心も美しいのね。
ラウルに頭を下げさせたことが申し訳なくて、私もラウルに向かってぺこりと頭を下げた。
「セス兄様は、エドワード命なのよ」
オリヴィアがおかしそうに笑っている。
どうやらセスが私を敵視するのは、大好きなエドワードの恋人が、どう見ても不釣り合いな私のような貧相な娘だったかららしい。
「だいたい何だよ、このダサい眼鏡」
急に立ち上がったセスが私の眼鏡に手を伸ばした。
やばいっ!!
ウィッグが外れたら大変だと体を後ろにずらすけれど……残念、ちょっと遅かった。
すでにセスの手は私の眼鏡に届いていた。
眼鏡を外されたら、私の本当の瞳の色がばれてしまう。
眼鏡が外される前に慌てて固く目をつぶった私の耳に、「えっ!?」っというセスの驚いたような声が聞こえた。
「えっ!?」って何? セスは何を驚いてるの?
不安な気持ちに耐えられず、うっすらと瞳をあけてみると眼鏡は外されていなかった。セスの手が眼鏡に到達したところで、ラウルがセスの手首を掴んでいたのだ。
「女性の顔に許可もなく触れるなんて、紳士的とは言えませんよ」
ラウルの口調は穏やかだったけれど、兄と弟という関係だからだろうか。セスを従わせるような絶対的な力を感じた。
「悪かったよ」
セスが悔しそうな顔をしながらも、小さな声で謝った。
「でもいいか!! エドワードと結婚したかったらなぁ、キャロラインレベルくらいまでにはなりやがれ。じゃねーと絶対認めねーからな」
いやキャロライン様レベルって、あれは最高ランクだから凡人には無理でしょ。まぁ別にセスに認められる必要なんてないんだしっとは思いながらも、セスの尋常ではない迫力に押され、気づけば無言で頷いていた。
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