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メイド長はもう一人いる?

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「今使用している部屋の荷物はメイド達に運ばせる」

「え?でも大した量はありませんし、自分で運べますよ?」

「じゃあ、俺も手伝おうか?」


スムーズな会話につい返事をしそうになったが、よく考えると下着や夜着等もある。それをダンテに見られるのもだが、もしかすると運ぶかもしれない事を考えると、スティファニアはたちまち顔を真っ赤に染めた。


「下着なんかもあるからさすがにな」


ダンテは苦笑しながらスティファニアの顔を覗き込む。


「そ、そうですね・・・」

「だから、女性の使用人達に任せよう」

「でも・・・」

「手伝うことがないなら、俺は待ちぼうけだ。それより少しでもティファと一緒にいたい。だったら、俺が一緒にできない事は、使用人達に任せたいんだが」

「ダン様・・・」

「ティファ、畑で野菜が待ってるぞ?」

「!・・・はい!」

「うん、じゃあ、行こう」


ダンテはスティファニアの手をとり部屋を後にする。廊下で待機していたメイド長に、荷物の事を頼むと快く返事をしてくれた。スティファニアは申し訳ないと表情に出してしまうが、メイド長は我々の仕事ですからとにこりと笑いかける。ここではスティファニアを邪険に扱う者も、ないがしろにする者もいない。スティファニアは、それが嬉しくて、つい表情がほころぶ。すると目の前のメイド長がうつむいてしまった。


「あ、あの・・・どうされましたか?もしかして私、粗相を・・・」

「いえ、違います、断じてそのような事はありません」

「それならよいのですが・・・お気分を害されたのなら・・・」

「そんな事があるはずありませんわ!」


メイド長は急に顔をあげると、スティファニアに詰め寄るように距離を縮めた。


「おい、ティファの可愛らしさにやられたのはわかるが、驚いているではないか」

「し、失礼しました」


メイド長はコホンと咳をすると姿勢を正す。


「ダン様、違うと思いますけど・・・」

「いいえ、スティファニアお嬢様。何も間違いなどございません!旦那様がデロッデロの甘々の、ヘナヘナになる気持ちがわかりますわ。真正面でスティファニアお嬢様の笑顔を受けたら、鼻血が出てしまいそうです!可愛いさの限界突破ですわ!」


あまりの力説っぷりに、さすがのダンテも言葉を失う。スティファニアは、メイド長は双子だったのかもと考える。目の前の女性は、いつも沈着冷静なあのメイド長とは別人ではないだろうかと。


「あぁ、まさしく天使ですわ!むさ苦しい男ばかりの辺境に舞い降りた可憐な天使ですわ!」


その後、荷物は私どもメイドにお任せくださいと、意気揚々と去っていった。


「メイド長さん双子ですか?」

「いや」

「ではそっくりさんですか?」

「違う」

「では・・・」

「ティファの可愛さにやられておかしくなったんだろう」

「えぇ?」

「人を狂わせるほどティファは可愛いという事だ。さぁ、畑に行くぞ?」

「は、はいっ!」


スティファニアはダンテの後を追いかけるようについていった。






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