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使用人総動員

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スティファニアを部屋に送ってから、ダンテはすぐ行動に移した。屋敷の使用人を全て集めさせたのだ。使用人達は、深夜というわけではないが、こんな夜に何が起きたのだと急いで集まった。


「皆揃ったな」


揃って整列した50人程の使用人と、日勤帰りの騎士と夜勤で働く騎士達20人。そこにリオネルの姿はない。


「皆、夜に集めてすまない。至急やって欲しい事ができた」


ダンテの真剣な表情に、使用人達は何があったんだと神妙な面持ちで次の言葉を待っていた。


「部屋を明日にでも仕えるように整えて欲しい」


ダンテの言葉に、近くに控えていたレスタが声をあげた。


「ダンテ様、部屋とは、一体どの部屋を整えたいとお考えなのです?」

「俺の部屋の隣だ」


ダンテの言葉に使用人達は一瞬シンと静まりかえるが言葉の意味を考え、じわじわと理解し始めたらしい。ざわめきがおきはじめた。


「誰かお迎えになられるという事ですか?」

「この屋敷に奥様が!?」

「ダンテ様が結婚!?」

「でも、急ですね?明日お輿入れになるなんて・・・」


使用人達の反応は様々だ。しばらくざわついていた使用人達をダンテが制する。


「静かにしろ。残念ながら俺が妻を迎えるとかそんな話ではない」


その言葉にレスタが返す。


「では、何の為に?」

「ん?特別な存在の為にだ。あれだ、側に置いときたいんだ」


その言葉を聞き、食堂に一緒にいた使用人達が表情を明るくさせる。事情を知らない使用人達が、何がおきたんだと唖然としている状況、知っている使用人達が耳打ちしていく。次第に部屋中が沸き立った。


「おい、うるさいぞ、静かにしろ」


ダンテにとっては、スティファニアに対してサプライズにしたいのだ。こんなに騒いでいては、何があったのだとスティファニアが気付いてしまう。ダンテは少々不機嫌だ。だが、レスタは冷静だった。


「ダンテ様、あの部屋は辺境伯の奥方、つまりは女主人になる方が使用する部屋です」

「だからなんだ」

「スティファニアお嬢様はあくまでも、男爵である主の奥方になるために来られたお方。陛下からの推薦と聞いておりますが」

「それがどうした」

「横取り、いえ、約束を違えるような真似にならないかと」

「王都までどれだけ離れていると思っている。王家に近しい人間が見聞きしたわけでもあるまいし」

「ですが・・・」

「いずれリオネルがここを継ぐ。ティファが部屋を使うのが早まるだけだ。なんの問題もない」


ダンテの文句は言わせないとばかりの態度に、一理あると、レスタも言葉を飲み込むしかなかった。




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