27 / 53
スティファニアの興味
しおりを挟む「あ、あの・・・」
ダンテとレスタが言い合いをしていた横で、スティファニアはそわそわしていた。
「お嬢様、どうされましたか?」
「その、辺境伯様は・・・」
「その呼び名はダメだ」
「えっ・・・では、何とお呼びすれば」
「ダンテでいいぞ?」
「そんなっ・・・」
「いや、そう呼ばれたい」
「・・・ダ、ダンテ様・・・」
「おぉぉぉ!聞いたかレスタ!スティファニアが名で呼んでくれたぞ!」
「はい、ちゃんと聞いておりましたよ。そんなにはしゃいで大人げないですよ?」
「はしゃがずにいられるか!」
ダンテはにこにこの笑顔をスティファニアに向けてくる。55と言えど、武人であるダンテは若々しい。畑で老人のふりをしていた時には帽子を深々と被っていたため、顔は余り見えていなかったが、よくよく見てみると、端正な顔立ちをしていた。若い頃はさぞやモテただろうと思う。いや、そこに渋みが増してきて、大人の男の色気があると言うものだ。鍛えられた体躯は、贅肉などはなく、同世代のオジサン連中にはない魅力があるのは間違いない。
「あの・・・私、ダンテ様にお伺いしたい事があります」
「ん、何だ、言ってみろ」
「あの・・・その・・・」
何か言い辛そうにうつむいていくスティファニア。ダンテは、うつむくスティファニアの顔が見たくて、少ししゃがむように覗き込む。グッと決意を決めてパッと顔をあげたスティファニアの目の前にダンテの顔があった。
「ひゃぁっ!」
「あははははっ、驚いた顔も可愛いなぁ」
「び、ビックリしました」
「すまん、すまん。それで?聞きたいこととは?」
「あの、ダンテ様は、女性は馬に乗ってはいけないと思いますか?」
「ん?構わんと思うが?」
「で、では、剣を持つのは?」
「うむ、少なくはあるが女剣士もいる。なんだ、やってみたいのか?」
「い、いえ、そうではないのですが・・・」
ダンテは、スティファニアが何を聞きたがっていて、何を求めているのかがわからなかった。様子をみていたレスタは気付いていたようだ。
「お嬢様は、女性らしく、そうですね、淑女らしくないと言われるようなことにご興味あられるご様子。それをこれまで、してはいけないと押さえつけられてきたのではないですか?」
「えっ・・・何故・・・わかったのです?」
「それは、畑をしたいとおっしゃった時から、そうかなと」
「・・・淑女であれ、婚約者の座をつかめ・・・そんな事考えてよくなって・・・次こそは自分のために時間を使いたい。心が踊るような毎日をすごしたいと思ったのです。だから、これまでした事のない事をやってみたくて・・・」
スティファニアは再びうつむいてしまった。
16
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる