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ダンテの正体
しおりを挟むこれからお茶の時間なのだと、呼びに来たメイドと共に去っていくスティファニアの様子を、ダンテとレスタは静かに眺めていた。先に口を開いたのはダンテだった。
「貴族の令嬢だろうにな、たったこれしきの事であんな笑顔になるとは・・・」
「えぇ・・・」
「あの子はそれなりの家の娘だろう?」
「はい、お嬢様はスペシオール侯爵家のご令嬢です」
「スペシオール家か・・・懐かしいな」
「懐かしい・・・ですか?」
「あぁ、昔色々あったんだ」
「色々?何があったのです?」
「あの頃は本当に若かった。そしてまだ青かった。スペシオールの奴と一人の令嬢を奪い合った。そして負けた・・・現当主はその二人の息子だ。皮肉にも、スティファニアはその彼女にそっくりだ。驚いたさ。しかし・・・私が惚れただけある。とても可愛い。彼女と私が一緒になっていたならば、スティファニアのような孫娘が本当にいたのだろうな。まぁ、いい、結婚せずとも可愛い孫娘ができたのだからな」
「何を言いますやら。まったく、それにしても、なぜおじいさんのような演技をされたのです」
「何となくだ」
「・・・そうですか。まだまだお爺ちゃんなんて言っていないで働いて貰いますよ」
「老人をこき使うでない」
「いい時ばかり老人にならないでくださいよ、辺境伯様」
「・・・もう引退した」
「何を言ってるんです。主と互角に張り合うだけの力はまだあるでしょうに」
「それはお主の勘違いと言うものだ。私にはもう、そんな力も体力もない」
「・・・例えばですよ?」
「うん?」
「例えば、スティファニアお嬢様が、剣を振るう辺境伯様が格好いいと言えば?」
「なんだと!?・・・うむ、たまには披露してもよかろうな」
「では、護衛はダンテお爺ちゃんがいいと言われれば?」
「何っ!?・・・それは守ってやらねばな!他の奴に、可愛い可愛いスティファニアを任せてはおけん!」
「そうですよね?だったら、鍛えておかないと、いざという時力を振るうこともできませんね。表立っては主が動いていますが、実権をもってらっしゃるのは、ダンテ様、まだ貴方ですからね」
「ぐぬぬ・・・お爺ちゃんはそろそろ引退を・・・」
「あの力バカに辺境を任せられますか?」
「・・・仕方ない・・・」
「では、畑ばかりやってないで、鍛練に行きますよ」
「・・・うむ・・・」
レスタに言いくるめられ、ダンテはとぼとぼと稽古場へと歩いていった。
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