流星姫は平凡騎士をご所望です

恋した君と愛する君

甘えるサイラス

「サイラス様・・・私、お願いがございますの」

「・・・なんだ」

「私と離縁しないでくださいませ」

「・・・レット・・・」


サイラスはじわじわと瞳を潤ませていく。マーガレットは、寝台に座るサイラスに近付くと、頭を抱えるように胸に静かに抱きしめた。


「サイラス様、全てお話頂いてありがとうございました。お辛かったでしょう・・・本当によく頑張られましたね」


その瞬間、耐えていた涙が一気に溢れた。


「レット・・・れっとぉ・・・
」


サイラスは縋るようにマーガレットの腰に手を回すとしっかりと抱きしめた。マーガレットは、胸に埋められたサイラスの頭を優しく撫でる。


「今のうちにたくさん泣いて、涙を枯らしましょうね。もう涙を流すことのないように幸せになりましょうね」


涙をこぼしながらサイラスは返事をする。


「あぁ・・・約束する、レットを幸せにする」

「いいえ、二人で幸せになるんです」

「あぁ・・・ずっと、一緒にいてくれよ？」

「はい、お側におります」

「・・・絶対いなくなるなよ？」

「はい、ずっと一緒です」

「・・・もう、離さないぞ、離してやらんぞ」

「はいはい、私も離れてあげません」

「・・・うっ・・・う・・・うわぁぁぁん・・・あぁぁぁぁ・・・れっとっ・・・れっとぉ！！」

「頑張りましたね、たくさん泣いてください、そして、たくさん笑いましょうね」


最後には、小さな子どものように声をあげて泣き、マーガレットに縋ったサイラス。小さい頃に母親を亡くし、公爵家嫡男として厳しい教育を受け育ってきた。そこには甘える事は許されず、甘えさせてくれた人などいなかった。自分の弱い部分を見せないように生きてきたサイラスにとって、マーガレットは唯一自分の弱い部分を曝け出しても、寄り添い側にいてくれる。人として一度は壊れたサイラスを、マーガレットは見捨てなかった。本音を言い、態度にあらわしても、どんなに格好悪くても、自分のレットはずっと側にいてくれる。それがサイラスに光を見せ、本来の己を得ることになった。俺のレット、俺だけのレット。サイラスは宝物のレットを、マーガレットを大事に大事にするようになった。




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次回

レット！！どこに行った！？レット！！！