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恋した君と愛する君

目覚めたサイラス

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サイラスが切り付けられて意識を失ってから3日が経っていた。傷口は深かったが、致命傷にはならなかった。高熱でうなされるも落ち着いたようだがまだ目は覚さない。


「サイラス様・・・早く起きて・・・」


マーガレットが、水差しの水を入れ替える為に立ちあがろうとすると、ふいに腕を掴まれた。


「・・・行くな・・・俺を・・・置いていくな・・・レット・・・」

「サイラス様!サイラス様、レットはここにおります!お側におります!」


マーガレットは掴んできた手を両手でしっかり包み込んだ。


「あぁ・・・レットだ・・・レットがいる・・・」

「はい、おりますよ」

「レット・・・」

「まだお疲れでしょう?ゆっくり休まれてくださいね」


次にサイラスが目を覚ました時に、視線を彷徨わせるも部屋の中にマーガレットが見つからない。寝台から出て、痛む身体を庇いながらドアまで必死に歩く。もたれかかりながらドアを開け、廊下に出ると壁づたいに必死に歩いた。


「レット・・・レット・・・どこだ・・・レット・・・」


傷口が痛み、体力がないせいか立っていられなくなり、壁を背にずるずるっと座り込む。


「レット・・・どこに行ったんだ・・・なぜ・・・いなんだ・・・」


部屋に戻って来ていたマーガレットが廊下で座り込むサイラスを見つけて駆け寄る。


「サイラス様!大丈夫ですか?何故、こんなところに」


サイラスは、マーガレットの姿を確認すると、腕を掴んで引き寄せて強く抱きしめた。


「レット・・・ダメじゃないか・・・いなくなったら・・・ダメだ・・・」

「お水をかえに行っていただけですから・・・」

「レット・・・俺を一人にするな・・・」

「わかりました、ごめんなさい」


マーガレットはサイラスの背中をやさしくさする。


「レット・・・俺を・・・捨てるな」

「捨てませんよ?レットはずっとお側におります、だから泣かないでください」


(泣く?・・・俺は泣いているのか・・・泣くなんていつぶりだ・・・)


「サイラス様、お身体にさわりますのでお部屋に戻りましょう?」


マーガレットはサイラスの身体を支え部屋に戻った。


「サイラス様、あーんです」

「自分で食える」

「ダメです!サイラス様はお怪我してるんですから」

「いや、自分で食える・・・」

「ダメです、はい、あーん」

「うっ・・・・・・・あ・・ん」



マーガレットに看病されながら、サイラスは少しずつ回復していった。





ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

サイラス様、お話があります




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