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恋した君と愛する君

不思議な過保護

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しばらく経ってマーガレットは目を覚ます。温もりと鼓動を感じ、とても心地の良い目覚めだった。


「んっ・・・だ、旦那様・・・」

「あぁ、レット、気がついたか」


目覚めたマーガレットは、サイラスの膝の上に座り、抱きしめられている事に気付くも、思いのほかサイラスの抱く手が強く、逃げられない事を悟った。そしてまた、目覚めたのはあの部屋ではなく、夫婦の寝室であった。


「あの、私・・・」

「レットは気を失ったんだ」

「すみません・・・あら・・・」

「どうした?」

「先ほど着ていた服ではないので」

「あぁ、湯あみして着替えさせた」

「も、もしかして旦那様がですか!?す、すみません」

「別に謝らなくていい。汚したから綺麗にしただけの事だ」

「は、はい・・・旦那様、重いでしょう?おろして頂いて・・・」

「何を言ってる、軽い。ちゃんと食べているのか?そうだ、何か食べれそうか?」

「は、はい・・・」

「そうか、では準備させよう」


ほどなくして寝室に食事が用意された。サイラスはマーガレットを解放する気はないようだった。


「あの、お食事ですよね?一人で座れますから」

「・・・俺の膝の上は嫌か?」

「い、いえ、嫌とかでは・・・」

「では、なんだ?」

「は、恥ずかしいのです」

「もっと恥ずかしい事をしているではないか・・・いい、では、毎日膝に座らせる。慣れろ」

「え!?・・・は、はい・・・」

「レットは体調が悪いのだ」

「体調は悪くないですよ?」

「いいや、体調が悪い」

「・・・元気ですよ?」

「いいや、体調が悪い!」

「・・・えっと・・・は、はい・・・?」


言い張るサイラスに、マーガレットは不思議に思いつつもそのまま膝に座ったままとなった。


「よし、俺が食べさせてやる」

「あ、あの、お手を煩わせるわけには・・・」

「いい、俺にやらせろ」

「・・・で、でも・・・」

「ほら、口を開けろ」


サイラスはスプーンですくったスープを差し出してくる。


「・・・はい・・・あーん・・・」

「ほら、もう一回だ」

「は、はい・・・あーん・・・」

「・・・レット、顔が赤いが、熱でもあるのか?」

「い、いえ、ありません、大丈夫です!」

「そうか・・・ならいいが?」


優しいのか、過保護なのか・・・でも、交わりの時には怒りを露わにする。そんなサイラスを不思議に思うも、大事にされているのは間違いないのだとマーガレットは思っていた。淡々としたやり取りの中にも、どこか過保護さを出すサイラス。たまに怒りをぶつけるサイラスに犯されては過保護に世話をやかれる日々をおくっていった。





「レット、数日後の夜会に出ることになった」

「夜会ですか?」

「あぁ、レットとの結婚後、どこにも表に出ていなかったからな」

「そうなのですね、ドレスなどはどうしたしましょうか?」

「それは・・・俺が準備する」

「・・・はい、承知しました」





ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

まがい物の人形にしては上出来だな


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