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純情令息とお転婆公爵令嬢

辺境伯とエミリアのイタズラ

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カーテンがゆらめき、顔を覗かせたのは涙目になったエミリアだった。


「・・・セシル様・・・」

「エ、エミリア嬢!?そんなところで何を!?」


辺境伯がすました顔で話し出す。


「あぁ・・・お前にお慕いしている相手がいるなら無理強いはできないな。エミリア嬢との縁談はお断りするしかない・・・これ以上にない相手だと思ったんだがなぁ・・・残念だなぁ・・・」

「えぇっ!?あ、相手はエミリア嬢だったのですか!?」

「あぁ、そうだ。しかし、お前は他に好いた相手がおるのだろう?」

「父上!お断りせずに受けてください!」

「なに?お前は好きな相手がいるのにも関わらず、エミリア嬢を婚約者とするつもりか?そんなに不誠実な男だとは知らなかったぞ」

「なっ!?ち、違います!そう言う事では!!」

「じゃあ、なんだ?」

「お・・・お、お慕いしているのは、エミリア嬢です!!」


カーテンの中で、エミリアの瞳から耐えていた涙が溢れて落ちた。ボロボロと泣くも、声を必死に我慢していた。


「エ、エミリア嬢・・・」


セシルはそっと近づくと、カーテンを開ける。ボロボロと泣くエミリアに、どうしたらいいかおろおろとしていたが、自分達を隠すように、静かにカーテンを閉めた。辺境伯は、満足そうな笑みを浮かべ、部屋を出ていった。


「エミリア嬢・・・」

「うっ・・・うっ、せし、るっ、さまぁ・・・」

「お、驚きました・・・こんなところに隠れているなんて・・・」

「・・・うっ・・・うぅ・・・」

「・・・失礼しますね・・・」


セシルはエミリアを優しく抱きしめた。


「・・・うぅ・・・断られ、るかと、思いましたっ・・・」

「す、すまない・・・まさか縁談がワルシャワ公爵家からだとは思いもしなくて・・・」

「私も、イタズラが、過ぎ、ました・・・」

「イタズラ?」

「はい・・・縁談の話は、辺境伯様には内緒にして欲しいとお願いしていました」

「・・・そうだったのか」

「セシル様のお気持ちを確認したかったのです」

「俺の・・・気持ち?」

「はい、本当に私を望んでくれいるのか自信がなくて、不安で・・・」


セシルは、抱きしめたまま、エミリアの顔を覗き込む。


「そんな事せずとも、俺はエミリア嬢一筋だ・・・ずっと片想いしていたんだからな・・・諦めきれずに婚約者もつくらずここまで来てしまったんだ・・・」


この時、部屋には二人だけ。カーテンの外、窓に面した廊下からは二人が抱き合う姿が見えていた。この光景を見ていた人物がいた。


「・・・私のセシル様を・・・取らないでよ・・・」



ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

エミリア嬢、すまない・・・

苦しいです!



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