116 / 211
王太子アルフレッドの新たな婚約者
365本の薔薇は
しおりを挟む「庭園に迷路が欲しいです」
「迷路?」
「えぇ、生垣で作った迷路ですわ」
「あぁ・・・わかった作らせる。しかし、なぜ迷路なのだ?」
「私の心ですわ」
「エリアナの心?」
「まだ色々と迷いもありますの。覚悟もできておりません」
「・・・迷路で迷っているという事か・・・」
「はい、必ず出口はあるでしょう。今は出口を探している途中です。行き止まりもあるでしょう、たまには戻って回り道もあります。私が迷っていても、アルフレッド様は助けには入れません」
「なぜだ!すぐにでも駆けつける!迎えに行く!」
「いいえ、いけません。迷路は一人用なのです。私が出口を自分で見つけないと、また振り出しへと戻されてしまいます。そしたらまた、入口からです」
「わかった・・・簡単な迷路だと納得しないのであろう?」
「えぇ、お願いしますね」
とことん迷ってとことん歩きまわる。そして自分自身で覚悟という気持ちのゴールを見つける。それを待っていてくれとエリアナは伝えた。
「アルフレッド様、この薔薇達は王宮の各所に飾ってください」
「しかし、これはエリアナに渡したものだ・・・」
「私の部屋に全て運ぶ気なんですの?」
「あぁ、薔薇で埋め尽くして私の気持ちを感じて欲しい」
「あら、アルフレッド様は、私に部屋から出るなとおっしゃりたいのです?」
「そんな事思っているはずがないだろう!」
「だって、そんなにたくさんの薔薇が部屋にあるんでしたら、庭園に見に行かずとも部屋で事足りてしまいますわ」
「・・・あ・・・」
「ですから、王宮のあちらこちらに飾って欲しいのです。謁見の間や、通路や、文官達の仕事場、侍女やメイドが集まる所、ホールにテラスに、食堂に、厨房に、騎士団の詰所に・・・あぁ、アルフレッド様の執務室にも飾ってください」
「そんなに・・・しかし私の執務室に飾るのはいいが、その薔薇達はエリアナに見てもらえないではないか・・・」
「あら、私、アルフレッド様の執務室は立ち入り禁止ですの?」
「へっ!?・・・そ、そんな事はない!むしろ歓迎だ、私の執務室でくつろいでくれてかまわない。なんなら、私の膝にでも座るか?エリアナの指定席で、特等席だ!」
「それは遠慮しますわ」
「・・・そうか・・・」
「私は王宮内を薔薇を愛でに参りますわ。もちろんアルフレッド様もご一緒頂けますわよね?」
「一緒に・・・」
「籠っていた王太子妃の顔を、皆様お忘れでしょうから、殿下が連れ回してくだされば思い出して頂けるでしょう?」
「・・・」
「私知ってますの」
「・・・何をだ?」
「貴族の皆様が側妃を娶れと申されているのを」
「・・・それは」
「アルフレッド様が側妃は娶らぬと必死に抑えていらっしゃるのも存じております」
「!」
「アルフレッド様が私と仲睦まじく過ごす様子を見ればおさまりましょう・・・世継ぎを望む声が期待で大きくなることもありましょうが、責める声より少しはましですわ」
その後、365本もあった薔薇達は、王宮の各所に飾られた。二人が薔薇を愛でながら仲睦まじく話す姿があちこちで見られ、王宮で働く者達にエリアナがご苦労様いつもありがとうと声をかけていった。王太子妃を擁護する声が広まり、側妃をという声は格段に減った。アルフレッドが何をしても、どう手を打っても静まらなった騒ぎはたった三日で静かになった。
365本の薔薇。その花言葉は、あなたが毎日恋しい・・・
アルフレッドが花言葉など知るはずもなく、この意味を理解していないのはエリアナはわかっていた。たまたま365本、庭園に薔薇が咲いていただけ。アルフレッドの手や腕についた小さな傷。エリアナはそれに気付いていた。ありったけの薔薇を、自らの手で集めてまわった事を。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
なぜここにいる!?
なぜって・・・
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる