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王太子アルフレッドの新たな婚約者

365本の薔薇は

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「庭園に迷路が欲しいです」

「迷路?」

「えぇ、生垣で作った迷路ですわ」

「あぁ・・・わかった作らせる。しかし、なぜ迷路なのだ?」

「私の心ですわ」

「エリアナの心?」

「まだ色々と迷いもありますの。覚悟もできておりません」

「・・・迷路で迷っているという事か・・・」

「はい、必ず出口はあるでしょう。今は出口を探している途中です。行き止まりもあるでしょう、たまには戻って回り道もあります。私が迷っていても、アルフレッド様は助けには入れません」

「なぜだ!すぐにでも駆けつける!迎えに行く!」

「いいえ、いけません。迷路は一人用なのです。私が出口を自分で見つけないと、また振り出しへと戻されてしまいます。そしたらまた、入口からです」

「わかった・・・簡単な迷路だと納得しないのであろう?」

「えぇ、お願いしますね」


とことん迷ってとことん歩きまわる。そして自分自身で覚悟という気持ちのゴールを見つける。それを待っていてくれとエリアナは伝えた。


「アルフレッド様、この薔薇達は王宮の各所に飾ってください」

「しかし、これはエリアナに渡したものだ・・・」

「私の部屋に全て運ぶ気なんですの?」

「あぁ、薔薇で埋め尽くして私の気持ちを感じて欲しい」

「あら、アルフレッド様は、私に部屋から出るなとおっしゃりたいのです?」

「そんな事思っているはずがないだろう!」

「だって、そんなにたくさんの薔薇が部屋にあるんでしたら、庭園に見に行かずとも部屋で事足りてしまいますわ」

「・・・あ・・・」

「ですから、王宮のあちらこちらに飾って欲しいのです。謁見の間や、通路や、文官達の仕事場、侍女やメイドが集まる所、ホールにテラスに、食堂に、厨房に、騎士団の詰所に・・・あぁ、アルフレッド様の執務室にも飾ってください」

「そんなに・・・しかし私の執務室に飾るのはいいが、その薔薇達はエリアナに見てもらえないではないか・・・」

「あら、私、アルフレッド様の執務室は立ち入り禁止ですの?」

「へっ!?・・・そ、そんな事はない!むしろ歓迎だ、私の執務室でくつろいでくれてかまわない。なんなら、私の膝にでも座るか?エリアナの指定席で、特等席だ!」

「それは遠慮しますわ」

「・・・そうか・・・」

「私は王宮内を薔薇を愛でに参りますわ。もちろんアルフレッド様もご一緒頂けますわよね?」

「一緒に・・・」

「籠っていた王太子妃の顔を、皆様お忘れでしょうから、殿下が連れ回してくだされば思い出して頂けるでしょう?」

「・・・」

「私知ってますの」

「・・・何をだ?」

「貴族の皆様が側妃を娶れと申されているのを」

「・・・それは」

「アルフレッド様が側妃は娶らぬと必死に抑えていらっしゃるのも存じております」

「!」

「アルフレッド様が私と仲睦まじく過ごす様子を見ればおさまりましょう・・・世継ぎを望む声が期待で大きくなることもありましょうが、責める声より少しはましですわ」


その後、365本もあった薔薇達は、王宮の各所に飾られた。二人が薔薇を愛でながら仲睦まじく話す姿があちこちで見られ、王宮で働く者達にエリアナがご苦労様いつもありがとうと声をかけていった。王太子妃を擁護する声が広まり、側妃をという声は格段に減った。アルフレッドが何をしても、どう手を打っても静まらなった騒ぎはたった三日で静かになった。


365本の薔薇。その花言葉は、あなたが毎日恋しい・・・


アルフレッドが花言葉など知るはずもなく、この意味を理解していないのはエリアナはわかっていた。たまたま365本、庭園に薔薇が咲いていただけ。アルフレッドの手や腕についた小さな傷。エリアナはそれに気付いていた。ありったけの薔薇を、自らの手で集めてまわった事を。




ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

なぜここにいる!?

なぜって・・・

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