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第二王子アークトゥルス
第二王子の執務室
しおりを挟むその後まもなく二人は婚約者となった。
数年が経ち、アークトゥルスが学園を卒業し、将来公爵位を賜る為の準備に入る為、本格的に執務などをこなし始めた。それから2年後、ラビリアが12歳になり、学園に通うようになると、アークトゥルスは、自身の執務室を学園内に設けてしまった。
「ラビィ、僕は君が学園にいる時間は、学園内の執務室にいる。行き帰りはもちろん僕が一緒だからね?時間のある時や、授業が終わればそこへおいで」
「はい、わかりましたわ」
第二王子が、学園内に執務室を構えた事はすぐに広まった。各学年の貴族令嬢が取り入ろうと、執務室に突撃してきたり、手紙やプレゼントがたくさん届くのは日常茶飯事だった。ラビリアはその度に不安になっていった。
そんな時、学園の中庭でトラブルが起きた。
「あなたみたいな小娘が、アークトゥルス殿下の婚約者だなんて納得できませんわ!」
「そうよ、あなたじゃ殿下を満足させてあげられないのではなくて?」
高学年の貴族令嬢達から、ラビリアは口撃にあっていた。その様子を確認した黒紫星の影が、アークトゥルスに急ぎ報告に訪れる。
「はぁ?なんだって!?ったく、うるさい獣がいるもんだ」
アークトゥルスは、勢いよく執務室を出て、中庭に向かった。
「ご令嬢がこんなに集まって何かな?色とりどりだね」
「アークトゥルス殿下!こんな所でお会いできるなんて!」
「きゃー!アークトゥルス殿下よ!」
「アークトゥルス殿下、素敵!!」
中庭で一気に黄色い歓声が起きる。
「賑やかだね。元気なのはいいが
淑女らしくないな」
「・・・あっ、えっと、その、アークトゥルス殿下がいらっしゃって、つい・・・」
「ふぅん、あ、そう」
「あ、あの、私とこの後、お茶しませんか?」
「殿下、それでしたら、放課後は我が家にいかがです?庭の薔薇が綺麗に咲きまして、見頃ですのよ」
「殿下、おいしいお菓子がございますの!執務でお疲れでしょうから、いかがです?」
令嬢達がアークトゥルスを囲んで沸き立っている。少し離れたところから、高学年の令嬢達からは逃れたものの、不安な顔でラビリアが見ていた。
「・・・うるさいな・・・」
「えっ?」
「悪いけど、僕は忙しい」
そう言うと、彼女達の奥にいたラビリアに近付き、横抱きにする。
「ア、アーク様!?」
「こんなに真っ赤になって・・・照れてるのかな?可愛いな」
「み、皆さんが見てますから・・・」
「別にいいんじゃない?何か問題あるの?」
「・・・えっと・・・」
「ふふっ・・・あっ、君達、僕はラビィにかまう事に忙しい。君達の相手をする暇はないんだ。悪いが失礼するよ。あ、そうだ・・・みんなの顔は覚えたよ。名前もすぐ調べがつく。当主に厳重に抗議させて頂く。望まぬ結婚をさせられる事になっても知らないよ?いい縁談は望めると思うな。この学園には、僕付きの黒紫星の影が数人配置されている。学園で起きていることは筒抜けだ。次はないぞ」
アークトゥルスは令嬢達を脅すと、ラビリアを抱えたまま嬉しそうに去っていった。
何度となく起きていたトラブルは、この日を境にパッタリと起きなくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
近寄るな!
今すぐ屋敷に帰れ!
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