流星姫は平凡騎士をご所望です

５６、賑やかさが増すサファイア宮

数日後、サファイア宮に新たな侍女が迎え入れられた。宰相マルクスの娘シルフィ１６歳。


「お久しぶりにございます、ミーティア王女殿下」
「シルフィ、お話受けてくれてありがとう。やっと安定期に入ったのだけれど、このままの格好でごめんなさいね」
「いえ、楽な姿勢でどうぞ」


ミーティアは安定期に入り、お腹の膨らみが出はじめ座っている事が多くなった。

「バージル様、お初にお目にかかります、シルフィ・エレノスと申します」
「宰相から聞いている。ミーティアの事よろしく」
「はい、精一杯お仕えさせて頂きます」


宰相の娘であるシルフィは、主にサファイア宮でミーティアとバージルに仕える事となった。シルフィには片想いをしている相手がいた。その相手の男は、第一王女マーガレットにしつこく付きまとい噂になった過去がある男だ。しかし、幼い頃からの幼馴染である彼を諦めきれないまま片想いを拗らせ、かなわない恋に心に傷を負った。のちにミーティアの専属の護衛騎士になり、黒紫星でも活躍する事となる男に、シルフィは心開く事になる。そして王宮で、彼とシルフィは大注目を浴びる事件を起こす。この恋の行方は、今はまだ片想いを秘め、シルフィを必死に追いかける男の努力次第。




「ジルなんだか嬉しそうね？」
「わかるか？」
「ふふっ、何かいいことがあったの？」
「あぁ、報酬に嫁を貰い受ける事になってな」
「ジル！？どういう事！？」
「待て、俺じゃない！あいつだ！」
「もう、びっくりするじゃない！！」
「すまん、すまん。あいつらもな・・・１０年の片想いなんだ。とっくに出会ってたのに拗らせやがって」
「ふふっ、私と同じね。きっとまた出会いの奇跡が起きるわ」




ミーティアのこの言葉が本当になろうとは誰も予想していない。


「ジル動いたわ！今、お腹の中のこの子が動いたわ！」
「本当か！成長してるんだな・・・」
「きっと、彼らの事を祝福してるんだわ」
「あぁ、そうかもな。お前も俺みたいに最高の嫁を捕まえろよ？」
「まだ早いんじゃないかしら？」
「いや、わからんぞ？もうすでにどこかで繋がってるかもしれん。出会いは奇跡なんだ」


そう、バージルの言う通り、お腹の子は、将来、少女を助ける素敵な王子様になる予定・・・いや、ちょっとばかり残念王子かもしれない。




「おい、俺の・・・がいない！！・・が攫われた！！」

学園の中を愛しの婚約者を探しまわる声がする。