流星姫は平凡騎士をご所望です

３５、奇跡のプロポーズ

バージルは緊張していた。

国王による重大発表があり、フロアはざわめいている。しかし、決めていた事があった。バージルは楽団に視線を送り、楽団側も準備が整ったと合図を送る。ダンスの時間が始まったのかと、参加者達も動きを変えようとしたが、いつもと奏でられる音楽が違い、様々に戸惑っている。


「ティア、お手をどうぞ」

「ジル？」


バージルはミーティアの手を取り、ホールの中心へエスコートする。皆、何事かと様子を伺い、静かに音楽が流れるだけになる。


ホールの中心で向かい合い、バージルは片膝をついてミーティアの左手を取る。


「ティア」

「・・・はい」

「ティア、俺を好きになってくれてありがとう。俺がいい、俺でなくてはならないと言ってくれた事、嬉しかった。

俺は次ぐ爵位も、地位も、名誉も・・・何一つ持ってない男だ。しかし、ティアという宝物を手にした男になった。

ティアは何ものにも代えられない、世界にひとつだけの宝物で、俺だけの宝物だ。ティア、愛してる。受け取ってくれるか？」


バージルは、自身の瞳と同じ色の、アメジストがあしらわれた指輪を取り出して差し出す。


「ジル・・・もちろんよ！！」


バージルは立ち上がり、ミーティアの左手の薬指にそっと指輪をはめる。


「俺の・・・俺だけの星の妖精姫様、この騎士とファーストダンスを踊って頂けますか？」

「はい、喜んで、私だけの騎士様！」


音楽が大きくなり、ダンス用の曲へと変わる。バージルとミーティアは息ぴったりのダンスを披露する。顔を寄せ合い、囁きながらダンスを踊る二人は、幸せの象徴のようであった。


「ジル、驚いたわ・・・」

「ちょっとした仕返し」

「何に対する仕返しなの？」

「何度も突撃をしてきて押し倒された事に・・・かな」

「ジルも意地悪なのね」

「好きな女の子をいじめたくなるのは男の性かもな。ただし、俺の場合は愛を伝える為の意地悪だ」


この夜会はのちに、平凡騎士が星の妖精姫という、唯一無二の宝を手にした奇跡のプロポーズと語られる事となる。

羨ましがる令嬢が増え、婚約や結婚、また意中の相手に気持ちを伝える際には、どれだけ愛しているかを語るプロポーズが流行った。

赤い瞳の令嬢には『僕の真紅の薔薇姫様』、金の髪の令嬢には『俺だけの輝く金の月の女神様』など令息達はこぞって愛しい相手に二つ名をつけ、いかに素晴らしい女性かを周りに自慢しあっていた。






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　　　　　お知らせ

新作まもなく投稿開始します！



【お嬢さんはある日森の中熊さんに出会った】


第一王子アイスフォードの婚約者であるリシェリア・ブルスト侯爵令嬢。王子妃教育の為に毎日王宮に通っている。

ある日、王子妃教育の帰り、第二王子のフラムウェルの企みに巻き込まれる。

リシェリアは姿を消した。辿り着いたのは辺境地の森の中。歩き続けて疲れ切ったリシェリアは狼を前に死を覚悟する。

通りがかった騎士に助けられ、辺境に滞在する事となった。助けた騎士は、38歳になった今でも、女性に触れた事もない初心なオッサンだった！？


♪初心なオッサン騎士視点の話多めです♪

R指定の話には★☆マーク付いています