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2章 

21話 36人の悪魔

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 「ふぅわぁぁぁ~むにゃむにゃ」

 眼を擦り、布団をめくると…だんだん、昨日の出来事を思い出してくる。

 はっ! そうだ!!

 昨日は、僕の【暴食】のスキルの中にいた人が目覚めたんだ。

 その人…違った悪魔さんからは、後悔を感じたんだ。

 僕は、その悪魔さんを見て…自分と重なって見えた。

 僕がおうちゃんを、置いて転生したように…この悪魔さんも、誰かを置いていなくなったんじゃないかと思った。

 だから、僕は直ぐにも消えてしまいそうな悪魔さんを【植物魔法】で少しだけ消えないようした。

 僕には、並列思考というスキルがあるから素早く対応出来るんだからね!!

 凄いでしょ?

 その後は、悪魔さんの眼を通して…僕も同じ光景を見て…どこか安心したんだ。

 種族は違くても、心は通じあえる物なんだって。

 だって…そこから見える悪魔さん達は、とても幸せそうに感じたんだ。

 でも…

 でもだよ…?

 1つだけ許せない事がある…。

 それは…



 どうして、僕の分の美味しそうなご飯を残しておいてくれなかったんだ!!

 眼に入ったのは、手の平サイズの茶色のモチモチしたような食べ物。

 それが土で作られたお皿に、山のように積み重なっており…それを僕の中にいま悪魔さんがどんどん食べているのを、見ていることしか出来なかった…。

 僕がどんな気持ちで見ていた!!

 眼の前に御馳走があるのに、食べれない苦しみ…。

 酷い!!

 思い出すだけで、仕返ししたい気持ちになってくるけど…。

 僕の中にいた、悪魔さんはもういない。

 でも、また会えるよね? 僕のように転生したらきっと…。

 その時はお仕置きするから、覚悟しておいてね!

 そんな事を考えていると…足音が近づいてくる音がした。

 コンコンと控えめに、ドアをノックされ…返事をすると、見覚えのある悪魔の女性が入ってきた。

 「確か…シエルさん? だっけ?」

 僕がそう言うと…一瞬、彼女が泣きそうに感じたのは気のせいかな?

 「はい、リューク様…グラン様から、貴方様の事は聞いております。こちらへどうぞお食事をご用意させて貰っております」

 「ご飯!! 昨日のやつ!?」

 眼をキラキラさせ…詰め寄ってくる、リュークにシエルは驚いたように、眼を見開いた。

 「グラン様からお聞きしたように、貴方様は私が悪魔だからと、非情な対応されないのですね」

 まるで酷い事をされるのが当たり前、みたいな言葉に、首を傾ける。

 「何で? 種族は違って、良い人や悪い人がいるんだよ? それを見極めるのが大切なんだよ?」

 そう言うと…彼女はフフッと笑みをこぼした。

 「ええ…そうですね」

 「さっ! それより早くご飯の所に行こう!!」

 「はい」

 彼女の後をついて行くと、昨日見た光景と同じように…茶色の食べ物と他の悪魔さんが座っていた。

 僕は彼女に、勧められるがまま…テーブルの前に座った。

 早速、食べようとすると…

 「リューク様、我等【暴食】の悪魔36名を貴方様の下につく事をお許し願いないじゃろうか」

 この白いお髭の悪魔さんは確か…。

 「セバスンさんだったよね?」

 真剣な顔だった為、ご飯を掴もうとした手を止める…。

 我慢! 我慢だ…。

 誰かが真剣の話をする時は、食べたら駄目なんだ…。

 もし、我慢しないで食べて…お母さんにバレたら怒られる!

 「ホッホッホ…そうですじゃ。覚えて頂き光栄ですじゃ」

 「セバスン様…また、そんな変な喋り方をして…その拘りなんとかなりませんか?」

 「はて…? 何のことかの? それより変なとはなんじゃ? 主にはキッチリ指導が必要なようじゃな…」

 「勘弁してください!!」

 ここにいる悪魔さんは、見慣れた光景なのか…笑っていた。

 もう、食べていいよね? 

 我慢の限界が…。

 「ねぇ、食べてもいいかな?」

 「おお!! 申し訳ない…ごゆるりとお召し上がりくだされ」

 「わーい!! いっただっきまーー」

 ガッシャーーーーーン!!

 と…リュークの前に何かが通り過ぎた。

 壁に穴を開け、眼の前にあったテーブルを巻き込んで…。

 テーブルを巻き込んで…。

 飛んできた方に、気配を探れば…大きなマナが2つ。

 多分やったのは、この2人だろ…。

 この日…。

 この瞬間…。

 リュークの顔を見た悪魔は、後にこう言った…。

 『怒った顔がグラン様より、数倍恐ろしかった』…と
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