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9章離れた場所

閑話 実は

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「親父どういうことだよ」


あたしはイリルバラン・ハンセルだ、トルトトル帝国で最強と言われているプロキガラン・ハンセルの1人娘だ。

そしてあたしは今すっげぇ怒っている。


「イリルか、辛抱してくれエントロス国との友好な関係を築く為だ、お前を嫁がせるのが一番早い」


親父はトルト国になってから変わってしまった、あんなに強く自信を持っていたのに、あの戦争では手も足も出なかったからだそうだ。

あたしは信じられなかった、あの戦姫と互角だった親父だぞ、それが今は保身に走っている、あたしはそれが見るに堪えないんだ。

あたしの憧れていたガランネ様と互角に渡り合える親父を誇りに思っていたんだよあたしは。


「だからって向こうの言いなりになってどうするんだ、しかも相手は子爵の長男だそうじゃないか!あたしは嫌だ!!」


あたしは結婚するなら自分よりも強い者じゃないと嫌だと言っているんだ、前は親父も賛成してくれていた、でも今はダメだ。


「仕方ないのだ、ここから上に行くには這い上がらんといかん、いまは堪えて待つ時なのだ」


そうは思えねぇ、親父はトルトトル帝国で侯爵家だったんだぞ、トルト国になってもそのままだ、それを下級貴族である子爵とそんな話になるなんて明らかに向こうにはその気がない。

それが分からない親父じゃないはずなんだ、今はきっと目を曇らせている、そう思いたい。


「やっぱり家を出るしかないな」


親父に返答しないで部屋を出たあたしは自室でそう呟いていた、もう準備はできてるんだ。

装備はガランネ様の様な軽装の鎧、そして武器はとても大きな両手剣だ。


これでもあたしは超級のスキルを習得してるんだぞ、まぁまだ未熟で本当の威力は出ないけどな。


「お嬢様湯浴みの時間ですよ」


「やば!?」


あたしが準備を終わらせ窓から出ようとしている時、タイミング悪くメイドが入って来てしまった。


「お、お嬢様!?」


「あたしは家を出る、親父にはそう伝えろ、じゃあな」


「ここは4階ですよお嬢様!」


窓の外には大きな木があって簡単に降りられるんだ。


「よし!早くここを出ないとな」


あたしは走った、兎に角走ったんだ、1日走って野営の際に何処に行くか考えた。


「ここまでくれば安心だが、さてどうするかな、あたしが出来るのは戦いくらいだからなぁ」


あたしは親父よりは弱いかもしれない、だが親父以外に負けたことがないから自信はある。


「冒険者にでもなるかな・・・確かガランネ様が領地を貰ったって聞いたな、そこに行くか」


憧れのガランネ様に会えるとは思えないが、冒険者を始めるならそこしかないだろ。

そして次の日から目的地のキューロンって街に向かった、あたしが本気で走れば10日で着く。


《そして10日後》


「やっと着いたな、さて冒険者ギルドは何処かな」


街を避け村を経由してあたしは目的地に着いた、途中でモンスターとも戦ったが大したことなかった、やっぱりあたしは強いんだな。


「登録は済んだ・・・さて何を受けるかな」


掲示板にはあまり強いモンスターの物がない、まあブロンズだしな。

受付でアイアンまでなら受けても問題ないと言われたが、それでもオークがやっとだ。


「せめてオーガとかと戦いたいな」


「おう!姉ちゃんオーガと戦えるのか?」


あたしが独り言を言いながら掲示板を見ていたら、横にいた男が聞いてきた。


「やったことはないぜ、でも自信はある」


「ほう・・・じゃあ俺たちと行くか、丁度ミスリルのクエストでオーガを狩りに行くんだ」


「ほんとか!?」


高位のランクの者がいるPTで両者が同意なら問題ないと受付で説明された。


「ああ、報酬はオーガ1体で銀貨5枚貰えるから1枚でどうだ?」


「そんなにいいのか!?わかったいいぜ、だがあたしが戦力になったら割り増しもあるんだろ?」


「当然だ、働いた分だけ払うぞ」


あたしはそれを聞いてすぐに了承した、オーガくらいあたしに掛かれば楽勝さ。

その時あたしは知らなかったんだ、こいつらがあたしの事を囮として連れて行こうとしていて、報酬を払わないつもりだって事にな。


まあ戻ってきてそれが分かったんで決闘して金貨を6枚ぶん取ってやったけどな。

そしてあたしは運命の男に出会ったんだ。
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