上 下
82 / 372
4章陰で

66話 アックスハント2

しおりを挟む
「ほらそこ、勝手に出るなっての」


アックスだ、俺たちは今、36階で発見された新しい村に向かっている、そして今回も俺たちの目を盗んで外に出る輩が入っている、死にたいのかまったく。


「やれやれだなまったく」


だが今回はまだましだ、今回は南の領地から来た商人だけで人数が少ない、どうしてか東は今回参加していないんだ、まあ国が違うから何かあったんだろう、そしてもう一つ違う事がある。

26階にいた商人の奴隷だったガキたちが入っているんだ、打ち合わせの時に何故かコルル村にいて驚いたぞ。

そいつらが俺たちの補佐をしてくれているんだ、もちろん最初は反対だったぞ、ガキを護衛に参加させるなんてな、だがどこかの偉い奴からの要望らしく断れなかったそうだ。


「ほらそこの人、早く馬車に入ってください」


「こらこらそこのおっちゃん、歩くの遅くなってるぞ疲れたなら馬車に乗れよ、変なところに行くなよな、みんなの迷惑だぞ」


っとこんなふうに、俺たち以上に目を光らせてくれている、なかなか使えるガキどもだった。

その他の護衛は前のPTと新人の2PTで構成されていて、前のPTは少し人数が増えてる所もあった、俺たちもだがな。

新人のPTは2つとも魔族と獣人と獣種で構成されていたな、強さはかなりのものだった。

最近噂になってるアイアンの2チームだ、他にも結構いるらしいが会わないから分からん。


「冒険者の兄ちゃん、交代だってさ、はいお茶」


「おお、サンキュー」


俺の仲間にも伝えに行っている、ほんとによく働くガキたちだな。


「おおアックス来たか、タオツィを何とかして欲しいぞい」


馬車に入るとアトキンスに言われた。


「またか!・・・気持ちは分かるがな」


そう、タオツィがファルファロと付き合い初めてそろそろ一か月が経つ、まあ要は熱がまだ冷めていないんだ、戦闘中は平気なんだが、休憩をするとファルファロの話を永遠としてくるんだ。



「あ!?アックスさん!聞いてくださいアトキンスがひどいんです、別れろとか言うんですよ」


「おぬしがいけないのじゃ、休憩中ずっとはこちらもきついのじゃ」


嬉しいのは分かるんだがなアトキンスの気持ちも分かる、ずっとはこっちもきついぞ、だがそれを直に言っても分からんだろうな、ここは変えて注意するか。


「アトキンスの気持ちもわかってやれタオツィ、それに俺は心配だぞ、戦闘中も考えてるんじゃないかってな」


「う!それは・・・まぁすみません」


分ってくれたようだ、静かになったので俺は違う事を話した。


「そう言えばあのガキども、なかなかいい仕事するな」


「そうガウね、さっきも外に行った商人を教えてくれたガウ」


グリューナクが褒めている、こいつは鼻が利くが耳はそれほど良くないからな、報告してくれるのなら助かるな。

おまけに飲み物や食い物をくれるんだ、一体どんな奴に雇われたんだかな。

西の商人でないことは確かだ、あそこの商人はがめつくて有名だ、報酬を値切らなかった事が無いとかよく聞いたな。


「最初は反対だったが、あれだけきちんとしていれば話は別だ、それに見てたかダブルガンム?」


「ああ、なかなかの逃げ足だったな」


一度遠くに商人が行ってしまった時があって別れて探したんだ、他のPTが見つけ商人を担いできた。

その時、ガキが鳥のモンスターに攻撃をされそうになって、誰かが叫んだらそれを咄嗟に躱したんだ。

事前に知らせたといっても、そうそう出来る事ではない、おそらくその依頼人に訓練をしてもらっているのだろう。

それを踏まえても相当な費用が掛かっていることが分かる、まあこのダンジョンの重要性を上の誰かがそれだけ買っているって事だな、俺たちにも投資してくれんかな。


「将来が楽しみな子たちだね、僕とファルファロの子もきっと優秀だよ」


俺がそんなことを考えていたらタオツィが言ってきた、まあみんなも嫌がっていないし、良いだろう。


「そうガウ?タオツィは後衛ガウ、魔法を教えるといいガウよ」


確かにファルファロがどっちかは知らんがタオツィは確実に魔法士の素質がある、子供なら色濃く出た方を優先するべきだろう、まあ気が早い話だがな。


「その前に告白と家じゃろう、もう決めたと言っておったがこの村なんじゃろ?」


「ええ決めただけですけどね、まだファルファロにも言ってません、でもきっと気に入ってくれますよ」


嬉しそうにタオツィが言ってると考え込んでいるダブルガンムの顔が目に入った、最近こいつは良くしゃべるし、話に入ってくるんだ、グリューナクなんて撫でられながら話をしている時がある、すっげぇ尻尾を振っていたな。

それなのに珍しく黙っている、何か心配事か?


「どうしたダブルガンム、急に黙って何かあったか?」


「いや・・・タオツィ、家の事はまだファルファロに言わない方がいいぞ、今は時期が悪い、別れたくなければ言うな」


「え!?ど、どうしてそう思うの」


俺も驚いて聞きそうになったぞ、どうしてそんなことが分かるんだこいつは。


「そろそろ付き合い初めて一か月だろ、まずはそこでプレゼントをあげておけ、付き合い始めて一か月の記念日としてな」


「う、うん」


ダブルガンムが言うには相手の熱が冷める時期らしい、まぁタオツィがそうでなくとも向こうはわからんからな。


「家の話をしたら結婚って事になるだろ?その場合重く感じて躊躇うぞ、まだ一か月なんだ、まずは一緒に暮らせるところを借りたらどうだ?」


「なるほどーそれもいいかも、話してみるよプレゼントを渡してさ」


確かに、向こうの熱が冷めてて冷静になった所に、住む家を決めたと言えばちょっとためらうかもしれんな。

まだ一か月だ、深く知らない者同士ならなおさらだな、タオツィが急ぎ過ぎたって事だな。


「そうするといい、だが暮らすのを向こうが拒んでも必要以上に説得しようとするなよ、嫌がられる」


「え!?そ、そうかな~僕は一緒に住みたいけど」


まぁタオツィはそうだろう、今でもあれだけファルファロの事を言ってくるからな。


「まあ状況にもよるさ、まだ一か月だ、隠していたいこともあるかもしれんだろう、少しずつでいいのさ」


「う、うん」


「だがな付き合っているからって告白はしろよ!まだなんだろ?」


俺たちはタオツィの顔を見たが赤くして下を向いていた、タオツィの話では食事に誘ったら了承を貰い、送った時にプレゼントを渡した流れでって感じらしい、だから告白はしてないと言っていた、まあ言葉にするのは恥ずかしいんもんだよな。


「言葉にするのは大切だぞタオツィ」


俺がそう思っているとダブルガンムがそう言ってきた、う!?そうか言葉にしないと伝わらんか。


「それとな一番の注意だ!プレゼントは同じ物を送るな」


「え!そうなの?前の香水を気に入ってたから、また送ろうと思ってたんだけど」


タオツィがそう返している、気に入っているんだ同じ物でも良いと俺も思う。


「タオツィ、特別なプレゼントなんだぞ、同じ物を送ってどうする」


「た、確かに」


タオツィが頷き何故か俺も頷いていた、そして横で聞いていたアトキンスとグリューナクもだ。

特別な物を送る時は同じ物ではダメなんだな、ダブルガンムが詳しく教えてくれた、日常的に送るならばよく使う物を送ると良いそうだ。

そしてそれは非常に難しいとも言ってきたな。


「記念日を一緒に済ませるのもしない方が良い、タオツィの場合は一緒に住むのと一か月付き合ったのだな」


その後、交代までダブルガンムの講座のような話を俺たちは聞いた、あまり高級な物にするなとか、相手と話した時に話題に出た物を送るとか、デートに行った際、相手がチラッと見た物を覚えておくとかだそうだ。


「はぁ~とても勉強になったよ、ありがとうダブルガンム」


「ああ、頑張れよタオツィ」


最近こいつはホントに人族なのかと思う時がある、精霊種で歳をごまかしてるんじゃないのか?

どうしてそんな女みたいな少年の顔なのに、俺よりも経験豊富そうなことを言えるんだ。



「フム、26階と作りが一緒じゃな」


それから何度かの交代と野営をして、やっと村に着いた。


「そうガウね」


「これでやっとファルファロに会えます」


「ドロップ品もかなり出たな、報酬もたんまりだ」


商人が家の選別を始めた、これで俺たちの遠征は無事終わった、ダンジョンを出てコルル村に数日滞在し、ヴェルンのギルマスに報告した、前もそうだったが報酬がかなり良かったな。



ちなみにコルル村滞在中、タオツィがファルファロと暮らすことになったと言ってきた、すげぇ嬉しそうだったな。

そしてなんと!?アトキンスにも彼女が出来た、ヴェルンに戻った時に告白したらしい、レレという小人族で冒険者ギルドで働いているそうだ・・・まさか講座のおかげか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】彼女を妃にした理由

つくも茄子
恋愛
ファブラ王国の若き王が結婚する。 相手はカルーニャ王国のエルビラ王女。 そのエルビラ王女(王妃)付きの侍女「ニラ」は、実は王女の異母姉。本当の名前は「ペトロニラ」。庶子の王女でありながら母親の出自が低いこと、またペトロニラの容貌が他の姉妹に比べて劣っていたことで自国では蔑ろにされてきた。今回も何らかの意図があって異母妹に侍女として付き従ってきていた。 王妃付きの侍女長が彼女に告げる。 「幼い王女様に代わって、王の夜伽をせよ」と。 拒むことは許されない。 かくして「ニラ」は、ファブラ王国で王の夜伽をすることとなった。

single tear drop

ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。 それから3年後。 たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。 素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。 一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。 よろしくお願いします

[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。 果たして恋人とはどうなるのか? 主人公 佐藤雪…高校2年生  攻め1 西山慎二…高校2年生 攻め2 七瀬亮…高校2年生 攻め3 西山健斗…中学2年生 初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!

愛された事のない男は異世界で溺愛される~嫌われからの愛され生活は想像以上に激甘でした~

宮沢ましゅまろ
BL
異世界ミスリルメイズ。 魔物とヒトの戦いが激化して、300年。 この世界では、無理矢理に召喚された異世界人が、まるで使い捨てのように駒として使われている。 30歳になる、御厨斗真(トーマ)は、22歳の頃に異世界へと召喚されたものの、異世界人が有する特殊な力がとても弱かった事。色々あり、ローレンス辺境伯の召使として他の異世界人たちと共に召し抱えられてることになったトーマは時間をかけてゆっくりと異世界に馴染んでいった。 しかし、ローレンスが寿命で亡くなったことで、長年トーマを狙っていた孫のリードから危害を加えられ、リードから逃げる事を決意。リードの妻の助けもあって、皆で逃げ出すことに成功する。 トーマの唯一の望みは「一度で良いから誰かの一番になってみたい」という事。 天涯孤独であり、過去の恋人にも騙されていただけで本当の愛を知らないトーマにとっては、その愛がたとえ一瞬の過ぎたる望みだったとしても、どうしても欲しかった。 「お前みたいな地味な男、抱けるわけがないだろう」 逃げだした先。初対面でそう言い切った美丈夫は、トーマの容姿をそう落とした。 好きになれるわけがない相手――本当ならそう思ってもおかしくないのに。 トーマはその美丈夫を愛しく思った。 どこかやさぐれた雰囲気の美丈夫の名前は、フリードリヒという。 この出会いが、誰にも愛されなかったトーマの人生を変える事になるとは、この時はまだ知らなかった。 辺境の国の王太子×内気平凡異世界人 ※二章から二人の恋愛に入ります。一章最後当て馬(?)がちらりと出るあたりでちょっとムカつくかもしれませんので、気になる方は二章始まるまで待機をお勧めします。◆平日は1回更新、休日は2回更新を目指しています。 イラスト:モルト様

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

巻き込まれて異世界へ ~なぜだか関わった人の運命変えてます~

桜華 剛爛
ファンタジー
 主人公である鳳(おおとり) ユウマは、いつもと違う帰宅コースを通り帰宅中に従姉妹達が交通事故に会いそうになるところに遭遇、奇跡的に助けることに成功した。  それと同時ぐらいに何か普通では考えられない事がおきて、その子達と共に見知らぬ部屋の中にいた。そこはどうやら神の部屋らしくそこで重大な話を聞きユウマ以外は確実的に異世界へ転移する事になる。  しかしユウマ自身は、この場所に巻き込まれてやったて来ていたので、元の場所に戻る事もできたが、知り合いの子達を見捨てる事ができず共に異世界に行く事にしたのだ。  そして、ユウマに関わった人や生物?の運命を変えることになり、そして自重を知らない転移者達は、周りを巻き込みハチャメチャな事を行うことになっていくのであった。

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

処理中です...