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1章 異世界生活

12話 お仕置き

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「ああ、あなた達、怪我したくなければ、おお、お金を置いて行きなさい」


人気のない場所に着くと、10人の女性が現れ武器を向けて宣告して来た。
全員露出多めの服装で、盗賊と言われたら疑わない。


「まぁ、金を奪おうとしてるんだから、盗賊なんだが、いかにも素人だな」
「何を呑気に言ってるんだマルセル、早く構えろ」
「アンソン、人との戦闘に戸惑うのはわかるが、こんな奴らは一人で充分だぞ」


俺なら当然だが、アンでもアシュリーでも余裕で、誰が戦うかといった問題だけだ。
アンソンの躊躇いも考え、俺は安全に全員で戦う事にしたんだ。


「ほほほ、本気かこいつら」
「まま待て、あたいたちには隠れてる仲間がいるぞ」


隠れている仲間がいるのを言ってしまう辺り、本当に素人っぽく、建物の影から更に10人の女性が出て来てしまう。
遠距離の武器である弓を構えはするが、手は震え当たるとは思えない。


「これは、何か事情がありそうだな」


こちらには近づかない10人が追加となり、さすがにきついとマリーナ達も言って来たが、接近すれば良いだけなのは言うまでもない。
しかし、倒した所で報酬は出ないだろうし、彼女たちが奴隷になるだけだ。


「それなら、良いこと思いついたぞ」


ニヤリとして、俺はみんなに手加減を指示した。
予想通りの場所で暮らしているのなら、ボロい服は盗賊だからではなく、困っていると判断で来て、そこならいけると計画を立てたんだ。


「重傷もやめてくれよ、ちょっと脅かす程度にしてくれ」
「そんな難しい事出来ないわよマルセル」
「アシュリーとアンはそうだろうが、アンソンとマリーナならいけるだろう、やってみてくれよ」


拘束してしまえば良いので、アシュリーとアンには縄で縛る担当をかませた。
そして、アンソンとマリーナにはこん棒を渡し、がんばれと応援したよ。


「ったく、難しい事言いやがって」
「やってやろぜマリーナ」
「おうよ」


ふたりが張りきってくれて、俺も参戦しようとしたんだが、相手の手が滑ったのか、矢が飛んで来た。
狙ってもいないが、アンに当たりそうだったので、俺は素手で掴み相手を睨んだよ。


「っひ」
「まったく、しっかりとしてくれよな」


リーダーっぽい女性も、どうして撃ったのかと怒っていて、これはいよいよ正解かと、交渉する事にした。
それがダメなら、アンソンとマリーナの出番で、こん棒で手を【バシバシ】叩いて威嚇してくれた。


「な、なんだよ」
「なに簡単な話だ、お前たち、金に困ってるなら働かないか?」
「「「「「え!?」」」」」


ここにいる全員が驚いて俺を見て来るが、嘘ではないし真剣に聞いている。
内容は聞いてこないで、バカなのかと女たちは言って来たよ。


「普通ならそうだろうが、君たちの覚悟を見たから言ってるんだ」
「覚悟って、あたいたちは」
「俺たちを襲った事は悪い事だ、しかし同時に逃げなかっただろ?」


強さの差が分かっていたにも関わらず、それが一番伝わって来た事で、だからこそ誘っている。
資格を持たない俺が医者をやるには、施設は見つからない場所に作り、そしてそれを使用できる人材が必要だ。


「要は、君たちにそれを任せたい」
「マジかよ」
「出来るまでには相当掛かるだろうが、時間はある」
「あ、あんた・・・本気なの?」
「当然だろう、俺一人で街の全員の治療は出来ないからな」


先を考えれば、治療はどの都市でも必要だし、俺だけで出来る訳もなく、長距離の移動も俺はしたくない。
王族の招集とか考えられるから、後々考えるべきでもあり、ナノマシンで用意しておくかと【うんうん】っと頷いてしまった。


「マルセル、何を頷いてるんだ?」
「ちょっとアンソン」
「マルセル、怖カッコイイ」
「あんな顔もするんだな」


アンソンたちが引いてしまっているが、良くある話だろうから対策は必須だ。
と言う事で、女たちの返事を待ったが、どうやら条件を考えているらしい。


「俺に出来る事なら何でも良いぞ」
「そ、それなら・・・100以上の食料を寄こせ」
「「「「100人!?」」」」


アンソンたちは驚いたが、俺は逆に喜んでしまった。
それだけの仲間がいると言う事は、将来の労働者を確保できたという事で、一気に問題解決だ。


「ど、どうなんだよ」
「それなら問題ない、直ぐに用意するよ」
「ほ、ほんとか?提示したあたいが言うのもなんだけど、100人以上の食料だぞ」
「問題はないぞ、1000人とかだとさすがに直ぐには無理だが、それ位なら運搬を手伝ってくれれば可能だ」


アンドロイドの収納にも少量は入っているし、俺の本体がいる森にさえ行けば、特技でいくらでも手に入る。
流石にあの森に行くには抵抗があるようだが、森には入らず護衛のロボたちに入り口まで運ばせておけば問題はない。


「心配だろうから、最初は一緒に行けば良いだろ?」
「それなら、まぁ」
「直ぐに食料が欲しいみたいだから、俺の金をやるよ、それまでの繋ぎに使ってくれ」
「「「「「えっ!?ええぇぇーー!!」」」」」


さっき貰ったばかりの穴あき銅貨80枚を渡そうとして、ここにいる全員の叫ぶ声が響いてしまった。
そこまで驚く事かと首を傾げてしまう俺は、宿賃が無くなったから驚かれてるのかと勘違いをした。


「アンソンたちが驚くことはないだろ?」
「いやいやマルセル、驚くだろう」
「どうしてだ?俺は寝なくても良いし、ダンジョンに入ればいらないだろ」
「「「「いやいや、そっちじゃない!」」」」


アンソンたちは、顔の前で手を左右に振り否定して来て、金を渡した事に驚いていたらしい。
100人以上の食料となると、それでも足りないだろう事はわかると思ったが、どうやらお人よしとか思われてるみたいだ。


「良いかみんな、黒パン1個で銅貨5枚だぞ、100以上の食料となると足りないだろう?」
「それはそうなんだが・・・マリーナ言ってやれよ」
「アンソン、言いにくいからってワタシに言わせるな」


マリーナが言いにくそうに口を開いた説明は、雇った者を守る必要がないというモノで、俺はそっちも改善して広めたくなったよ。
住む場所は元より、健康管理や家族の保護もしようと、またまた一人で頷いてしまった。


「お前、変わった男だな」
「俺はエムゼロと言う」
「マルセルじゃないのか?」
「世間体ではそっちで呼んでくれ、プライベートではマルセルで良い」


医者としての名前は製造番号にして、冒険者としてはマルセルにする事が決まった訳だが、まだ返事を聞いてないから再度聞いたんだ。
女たちのリーダーらしい先頭の奴は、俺をジッと見て笑顔を見せて来たよ。


「それだけの好条件なら、あたいたちは受けるよ」
「話し合ってからでも良いぞ、正直君たちが就く仕事は大変だ」


それはある意味、盗賊稼業よりも大変だろうから忠告をしたんだが、彼女は覚悟してると即答して来た。
そして、彼女は名前を名乗って来て、これからよろしくとか言われてしまった。


「嬉しそうだがアイーダ、俺の指導は厳しいぞ」
「平気よ、仲間を守ってくれると言ってくれたあなたを信じるわ」


アイーダの言葉を聞いて、他の女たちも頷いて来て、覚悟が決まった顔をして来た。
しかし、歯医者の仕事はとても難しい職業で、この中の何人が出来る様になるかと心配ではあった。


「外科医みたいに腹を切ったりしないが、虫歯の浸食状況で治療の難易度が上がり、それを判断するのは一人だけだからな」


それだけの自信を持てるまで、いったいどれだけが到達できるのか、頑張ってほしいが普通では無理なのは分かっている。
それなら、そうならない対策を考えようと、ナノマシンの使用がまた増えそうだと、ちょっと困ったな。
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