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1章 生き甲斐

16話 獣人勧誘

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「ね、ねぇネムミケちゃん、本当に行くの?」


オイラの仲間の中で、一番臆病で怖がりなミミーミが、クマ獣人のブロッサンに隠れながら言ってきたけど、今更の質問だったわ。
何度も話し合い、みんなで出した答えで、怖じ気づかない様にミミーミの頭を撫でてあげたのよ。


「怖いのは分かるわミミーミ、だけどきっと平気よ」
「でも、やっぱり怖いの」
「それはそうだけど、ギルドでも勧めてたし平気よ」


オイラたちが決心したのも、ギルドからの後押しがあったからで、ギルドハウスに到着して緊張が増したわ。
無言でいるスズメ族のサレッサも頷いていて、オイラたちはフェニックスフェザーの管理するギルドハウスに足を踏み入れたわ。


「それにしても、ここは広いわね」
「綺麗なの」
「そうねミミーミ・・・それに、この香りって獣人の好む香草の匂いよね」


庭が綺麗に整えられていて、花が咲いていないのに落ち着くと意見を揃えたの。
そんな庭を通り、屋敷の扉をノックすると、出て来たのはウサギ獣人の少女だったから、気分は一気に動揺へと変化したわ。


「あら、いらっしゃいませウサ」
「え、ええ・・・あなた、ここで働いてるの?」
「そうですウサよ?」


少女の答えに「何よ、ここも変わらないじゃない」っと、全員で思ってしまい、がっかりした顔のまま、少女にリーダーに面会出来るか聞いたの。
少女は、笑顔になって客間に案内してくれたけど、話を聞かずに帰りたい気持ちでいっぱいだったわ。


「では、ここで待っていて下さいウサ、今アレシュ様をお呼びしますウサ」
「あの、オイラたち突然来たのだけど、会って来れるのかしら?」
「アレシュ様は予定は無いと聞いてますので、問題ありませんよ」


笑顔のままで部屋を出て行く少女を見送り、皆でしゃがんで集まったのよ。
話と違うのだから、このままリーダーが来ても、話を合わせて入団を止めるのも視野に入れようって事になったわ。


「約束もしてないのに、断れるの?」
「ギルドで勧められて話を聞きに来ただけだもん、きっと平気よミミーミ」
「どうだろうか」
「ブロッサン、一言なのに重いわよ」


ゴメンと謝って来るブロッサンだけど、言葉に出してしまったら気になってしまうもので、みんなで暗い表情で不安になってしまったの。
そんなオイラたちが嫌な汗を流している丁度その時、扉が開かれてその問題の人が入ってきたわ。


「ごめんね、お待たせしたかな?」
「い、いいえ、オイラたちは気にしません」
「ごめんね、ちょっと食事の支度に手間取ってね」
「「「「「食事?」」」」」


使用人の獣人がいるのに?っと、オイラたちは不思議で首を傾げてしまったわ。
でも、呼んでくれたウサギ獣人の少女も一緒にいて、その視線の先にはリーダーのアレシュさんがいたから、それでオイラたちが間違った認識な事に気づいたの。


「食事が気になるのかな?」
「そ、そうですね、入ればオイラたちも食べれますからね」
「じゃあ、お話をするよりも見た方が早いかも、持ってきてくれるかなウサミナル」
「い、良いのですウサ?」
「勿論だよ、訓練も見てもらうけど丁度お昼だしね」


人種族が食事を奢ってくれるなんて、普通はありえない事だったけど、少女が流石って表情をして嬉しそうだったので、ここでは当たり前なのが良く分かったわ。
オイラ以外はまだ分かってない感じで、食事が来るまでリーダーの人とお話をしたんだけど、獣人のオイラたちを気遣ってくれて、優しい人なのが伝わってきたわ。


「新人みたいだけど、ダンジョンには入ったのかな?」
「はい・・・10階のボスまで行けなくて、困ってたんです」
「だからギルドでここを紹介されたんだね」
「はい、お話だけでもと思ったんですけど、是非入団させてください」


まだ訓練も食事も貰ってないけど、お話をしているだけでも他と違うのが伝わってきて、みんなも反対はしてきません。
アレシュさんは、そんなに急がなくても良いと言ってくれて、普通なら直ぐに入団させるモノなのに、会ったばかりのオイラたちを心配してくれたんだ。


「その気づかいだけでも十分です、是非入れてください」
「そういう事なら良いけど、辛かったら言うんだよ」
「ありがとうございます、これからよろしくお願いします」
「うんよろしくね」


入団することになり、オイラたちは名前を伝えたけど、アレシュさんはオイラが女性と分かって驚いていたよ。
一人称がオイラだから勘違いしていたみたいで、オイラの種族のナマリみたいなモノと教えたんだ。


「そうだったんだね、ごめんね」
「いえ、オイラも良く間違われるので良いです」


薄着なのにスタイルのせいで良く男と間違われ、酒場では喧嘩になる事もあったから仕方ないです。
でも、素直に謝ってくれる事は無かったのに、アレシュさんは謝罪をしてくれて、やっぱり違うから気になって仕方なかったわ。


「本当にごめんね、変わりと言っては何だけど、昼食は歓迎会に切り替えるよ」
「「「「「え!」」」」」
「料理の追加を作るから、みんなはウサミナルが来たら食べてて良いからね」


ソファーから立ち、アレシュさんは部屋を出て行きましたが、その直ぐ後に少女が料理を持ってきてくれて、その豪華さにびっくりしたのよ。
オイラたちでは手の届かない高そうな食事で、これが普通なのかと少女に聞いてしまったわ。


「ふふふ、そんなに豪華ではありませんウサ、ここではごく普通の食事ですウサ」
「で、でもこれってイノシッシの肉なの」
「あのあの、ダンジョン21階からのモンスターですよね」
「そうですウサね、でもそれだけウサ」


簡単に狩れるので、普通に食事に使われていると教えてくれて、オイラたちはまたまたビックリです。
フェニックスフェザーは、オイラたちより少し先にここに来た程度のレベルで、21階に降りれるわけがないと思ったのよ。


「どうして・・・何か秘密があるの?」
「秘密というか、皆さんが頑張った結果ですウサ」
「そんなわけない」
「ブロッサンちゃん、質問するなら食べてない時にしてなの、お肉が飛んだの」


みんなが既に食事に手を付けていて、オイラは出遅れたけど一口食べて、その美味しさに口の中が幸せになったわ。
これが普通とかありえなかったけど、その後アレシュさんが持ってきた料理を見て、特別な料理との違いがはっきりしたわ。


「あ、アレシュさん、何ですかそれは」
「これはね、タレをペーストにして塗り込んだ、お肉のバラ和えだよ」


お肉を薄く切って、そのお肉でお花を作っていて、見た目も綺麗だったけど漂って来る香りで美味しいというのが分かるほどでした。
アレシュさんが特別に作ってくれた事が伝わり、オイラたちは嬉しくて仕方なかったわ。


「さぁ、みんなで食べよう」
「「「「「はい」」」」」


フェニックスフェザーの人たちも途中から合流しましたが、オイラたちは食事に夢中で緊張とかは無く、楽しいお食事が出来て仲良くなることが出来ました。
そんな空気だったのもあり、フェニックスフェザーの強さを感じる事が出来ず、異常な強さを持っている事を疑問にも思わなかったんです。
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