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2章 知名度広がる

30話 王族との旅その1

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キンブルの馬車にサリーヌ様たちを乗せ、俺たちは王都を出たんだが、出るまでに色々あって俺とキンブルは疲れてしまったよ。


「キンブル、馬車の操作平気か?」
「ええ何とか・・・でも、了承して貰えてよかったですよ」


後ろをチラッと見てキンブルがため息を付いたが、メイドと執事4名がその原因だ。
4人には、着物を着て貰う様に説得するのも大変だったが、サリーヌ様に安物の着物を着て貰う許可を貰うのが更に大変だった。


「防御特化の着物にしたと、リューブさんが見せてやっと許可を貰えましたけど、そうでなかったら大変でしたよ」
「ああ、俺がキンブルに渡していた着物の中で、一番高級な振袖を着て来たからな、さすがに村には連れていけないよ」
「帯・帯揚げ・帯締め・かんざし全部が最高品でしたね」
「足袋もな・・・そんな姿で村に行ったら大騒ぎだ」


下駄ではなく草履を履いて来てそれも高価な代物だったから、見えない肌着もおそらく高めの品を着ていただろう。
マリューナに注意され、和装ブラやガーゼ肌着や袖除けを作ったが、昨晩はそのせいでMPポーションがぶ飲みの徹夜になってしまった。


「下着を着けない習慣はないですから、ご苦労様でしたリューブさん」
「あのバッグだけは交換できなかったがな」
「ははは、あの桃色和装バッグはサリーヌ様のお気に入りみたいですよ」
「気に入ってくれたのは良いんだが、性能は何もないぞ」


渡そうとした鞄は、収納紙を裏側に縫い付け大量の荷物が入る様にしたのに、どうしても交換してくれなかった。
珍しい服装だから、それだけで村で騒ぎになるから妥協したが、見る者が見れば分かる美しさだったんだ。


「サリーヌ様は、まだ結婚はしないのかな?」
「そう言えば聞きませんが、リューブさんもしかして」
「いや勘違いだぞキンブル、俺が言いたいのは、広めた時そう言った話題にならなかったのかと思ってな」


他の国が黙ってなさそうだが、それは当たっていた様で、キンブルが断っている事を教えてくれた。
他国の王族と婚姻なんて良くあるのに、どうして断っているのかと聞き返したが、それはキンブルでも知らなかったよ。


「まぁ色々あるんだろうな」
「そうですね・・・ですので、今回の旅は楽しみにしていたそうですよ」
「そうか、それなら頑張らないとだな」


出鼻を挫かれてしまったが、家に子たちには良い刺激だったようで、美しさの境地を見たのか楽しそうに話していた。
しかし、気の索敵は怠らないから、みんなは上達しているのが良く分かったよ。


「っという訳で、今日の昼食は冒険者食を作り、投稿しようと思う」


冒険者は簡素な料理しか旅の最中は作らないが、今回は簡素じゃない立派な料理の投稿だ。
それを知らないメイドと執事は、サリーヌ様の口に入れる事を拒んだが、本人はとても興味を持ってくれて、4人を止めてくれたんだ。


「ですがサリーヌ様」
「セバサス、ワタクシは興味があるだけでなく、遠征の時の知識としてほしいのである」
「た、確かに戦争では食事は大切ですが、サリーヌ様がしなくてもワシたちが」
「セバサス、ワタクシに自分で体験してない事を勧めさせるであるか?」


責任者であるセバサスを黙らせ、早速調理の始まりをサリーヌ様が告げてきたが、投稿用の折り鶴を飛ばしたらメイドと執事が武器を抜いたよ。
映像を取るだけの道具であることをキンブルが説明し、4人は武器を納めてくれたから次に移ったが、流石選抜されたメンバーだと思ったよ。


「まずこのコンロ紙を地面に置き、こちらの紙を底の浅い皿の様に折っていく」
「紙なんて折ってどうするのよ」
「マリネルさん、その紙はフライパン紙と言ってな、火に掛けても燃えないんだ」
「そんなはずないわ、紙は火に弱いモノよ」


火魔法をマリネルさんが使って試すと、フライパン紙は燃える事無く温まるだけだった。
不思議そうにしてくれたおかげで良い絵が撮れたとお礼を言ったが、調理は準備の段階なので次に移ったよ。


「さて、コンロ紙にフライパン紙を乗せ温めている間、こちらに入れていた野菜を切るぞ」
「それって、サリーヌ様に渡そうとした和装バッグですね」
「ピューミさん、この和装バッグは普通じゃないんだ、中に沢山の品が入る魔法のバッグなんだよ」


商品を売り込むため、牡丹の花柄のバッグを開けて中に手を入れ、バッグよりも大きなキャベツを取り出した。
それを見て、メイドのピューミさんが驚いてくれて、投稿を見てる人たちもこうなるだろうとニコリとした。


「バッグの中は時間が止まっていてな、品質も落ちないからこのバッグは旅で譲歩するぞ」
「そ、それは凄いですね」
「売り出しには数が足りないが、その内売り出すから楽しみにしてくれ」


宣伝としてばっちりな表情をピューミさんはしてくれて、後ろ盾の必要性を悟ってくれた。
全世界に向けて映像を流すから、力を持ちすぎたと思われるかもしれないが、そこはサリーヌ様の手腕頼りだ。


「このキャベツとブロック肉だが、ピューミさんとマリネルさんで捌いてくれるか」
「「は、はい」」
「ありがとう、執事のお二人は飲み物を作ってくれるかな」
「それは・・・どうしますセバサス様」
「ラキン、言われた通りにするのじゃよ」


茶葉の入った袋を渡すと、二人はコンロ紙の上に鉄製のポットを乗せて水を魔法で出して沸かし始めた。
それを見た後、俺はメイド2人が捌いてくれたキャベツと肉をフライパン紙で炒め、メメルたちを呼んだんだ。


「みんな、出来てるか?」
「勿論よ」
「これで良いんですよねリューブ師匠」


皆から受け取ったのは岩塩を砕いた塩で、それ自体は普通のモノだが、メイドの二人が驚くほどに細かく砕かれていた。
鉄扇で繰り出した紙吹雪で砕いたからそれだけ細かくなり、これを使った料理はとても美味いと説明しながら炒めた。


「ただの塩ですよね」
「普通と同じじゃない」
「お二人とも、リューブさんは嘘を言う人ではありません、味見してみてください」


マリューナが小皿にキャベツ炒めを乗せて渡すと、メイド二人は疑いながら一口食べて驚いた表情を見せてくれた。
これで、鉄扇を使った技の方も広がりやすくなると、俺はちょっと楽しくなったよ。


「でも、料理がキャベツ炒めだけとは、ちと味気ないであるな」
「サリーヌ様、俺の投稿を見ているのなら知ってるでしょう、この後が大事ですよ」
「そう言えば、お主はいつも最後に皆に先の技術を教えていたのであるな」
「そういう事です、ですので今回もお見せしますよ」


鉄扇を構えた俺は、魚を頭上に放り投げ鉄扇の上に小さな竜巻を作って浮かせた。
小竜巻と言う技で調整がとても難しいが、みんなが使った紙吹雪の上位となる技だと説明し、小竜巻でニンジンをぶつ切りにして見せた。


「同じように玉ねぎと肉を刻み、フライパンにも使った火に強い紙を何枚も重ねで鍋を作り、刻んだ品を入れる」


コンロ紙で温め肉と野菜を炒めた後、水魔法で鍋いっぱいに水を溜めて温めた。
クツクツと煮えてきたら、モーモーの乳を入れてかき混ぜてクリームシチューの出来上がりだ。


「クリームシチューって何ですか?」
「モーモーは知ってるだろうマリネルさん、その乳を入れたスープってとこだ」
「モーモーって、お肉は流通してますけど、乳は飲めないはずですよ」
「普通はそうなんだが、さっきの小竜巻を使うと食用になる」


これが今回の最後のシメであり、新たな食料の宣伝も行った。
味見の際は、危険がないか俺が最初に食べて見せ、みんなが食べた時は映像に似合う笑顔で美味しいと言葉を貰ったんだ。


「すごいであるなリューブ殿、やはりそなたは凄いのである」
「まだまだこんなモノじゃ無いわよ」
「そうですよサリーヌ様、リューブ師匠は本当に凄いんです」
「そうなのであるな、それは楽しみであるな」


それはメメルたちからの期待で、それを叶えない俺ではないので、その日の夕飯はとても豪華にしようと決めた。
そして、その晩は投稿できない物を使って休むんだが、それを見てメメルたちはどや顔を決めたよ。
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