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1章 知名度アゲアゲ

18話 手を下すまでもない

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宿の外に出た俺は、待ち構えていた者たちに名乗り、立ち去るように宣言したよ。


「ふんっ!そんな言葉を聞くわけがないだろう、おいお前たちやってしまえ」
「「「「「へい」」」」」
「やれやれ、まず邪魔な奴らを排除するかな」


上位の冒険者すら知らないギルドマスターを残し、俺は武器を構えた男どもの意識を手刀一撃で刈り取り、残ったギルドマスターを睨みつけた。
どうしてこんな事をするのかと言う俺の質問に、ギルドマスターは上位の冒険者の前で恥をかいたから、その仕返しに痛めつけに来たとか言い放ってきたから、俺はおでこを手で押さえて呆れてしまった。


「それはあんたが勝手に来て恥をかいたんだろう、俺のせいにするなよ」
「黙れっ!お前があんな所で祝いの宴を開いてなければ良かったのだ」
「他でやれってのか?疲れて動けない者もいたのにか?」
「そ、そうだとも」


布団から起き上がるのもギリギリの人もいて、マリューナたちが介抱していたが、そんな事にも目がいってない奴にどうこう言われたくなかった。
そんなだから冒険者に知られてないギルドマスターで、いなくても良いとすら言われてるのを知ってるのか聞きたかったよ。


「あんた、良い歳して恥ずかしくないのか?」
「だ、黙らないかっ!ワシを誰だと思っている」
「だから、冒険者ギルドのギルドマスターなんだろう、誰も期待してなくて、いるのかいないのか分からない存在のな」
「な、なんだと」
「誰もが言ってるし、職員だって困っていたぞ」


だからこそ、俺が新人を教育し注目を集め、期待をされ始めた訳で、今回ギルドで訓練したのも上が話しを聞いてくれなかったからだ。
話しの分かる副ギルドマスターは不在だし、ブレイスの独断ではあったが、ここでブレイスの名前を出さず、お前が無能だから悪いと言い切ってやった。


「ぶ、無礼にも程がある、ギルドから追放してやる」
「やれるモノなら勝手にすればいい、しかしそんな事をしたら大変な事になるぞ」
「ふん、一人の冒険者を追放した程度で大変な事になるわけがない、脅しにもならぬぞ」
「あそこにいた冒険者を思い出せよ、その冒険者が敵になるとは考えないのか?それでもやりたければすればいいさ」


もし冒険者を辞めなくてはいけなくなっても、俺はメメルたちを連れて他のダンジョン都市に行き、そこでみんなを鍛えれば良いだけだ。
その時は、上位のPTがここを去るだろうが、そうなった時の責任はこの男が全て受ける事になり、奴隷落ちどころではないと説明した。


「そそそ、そんな事になるわけが」
「会議室で注意されただろう、もう忘れたのか?」
「だ、だとしても、ワシの財力をもってすれば引き留められる」
「果たしてそうかな、俺の訓練の凄さを知った後だぞ」


どれだけの資金を積まれても、力を欲している者を引き留める事は出来ない。
それは、俺が断っているのに勧誘してきた熱量で良く分かっていて、このギルドマスターがそれに対抗できるとは思えなかった。


「それに、お前は遠くないうちにクビになるぞ」
「な、なんだと、どういう事だ」
「だってな、上位の冒険者を全て敵に回したんだ、それをサポートしてる商会が黙ってる訳ないだろう」


それは、この街のすべてを敵にしたのと同じで、他のギルドからそんな話が来るのは目に見えていた。
だからトドメは刺さないでやるから、今の内に謝る準備でもしていろと伝えたんだ。


「そ、そんな、た、助けてくれ」
「襲ってきた相手を助ける訳ないだろう」
「そこを曲げて頼む、金ならいくらでも出す、だから頼む」
「その金は逃げる為に使えよ、俺には必要ない」
「そこをなんとか頼む、お主ならあ奴らも納得するはずだ」


何も分かってない様なので、冒険者は舐められたらお終いである事を説明し、お前の言う通りにしたらどうなるのかまで細かく教えた。
頭のおかしいお前を助けたら、慕っていた者達も呆れてしまい、離れるだけでなく舐められると断言したんだ。


「お前はそれだけ下に落ちたんだ、だから諦めろ」
「そんな、何とかならぬのか?」
「それを俺に聞くと言う事は、お前は俺を舐めているんだ、そんな事も分からないのか?」


殺そうした相手に何故そんな優しさを向けなきゃいけないのだっと、ギルドマスターの首を掴みそのまま片手で持ち上げて甘く見るなと警告した。
壁に叩き付け、俺達の前に現れるなと警告し、手を離して解放してやった。


「ゴボッゲホッ」
「お前に残った道は、謝罪か逃走のどちらかしかない、せいぜい考えるんだな」


どちらでも俺には関係はないんだが、ギルドマスターは逃げるしかないとブツブツ言っていた。
俺も眠いので、振り返る事なく宿に戻り部屋に入ったが、流石に疲れてフラフラして来たんだ。


「あの人数は無理があったな」


子供たちの為だから俺も限界まで気を酷使したが、その甲斐はあって十分な成果を得られた。
ベッドで寝てる子供たちを見て、大切にする優先順位を再確認したよ。


「ブラヌたちはまだ幼いからな、慎重に教えて行くぞ」


あんな奴の事よりも、家の子たちの先の事が心配で、気の放出はそれだけ危険で個人の性格が出る物だった。
威力を出そうとして、身体に負担の掛かる技でも編み出しそうだから、絶対に止めると決めていたよ。


「無理をする事は無いからな、時間を掛けて強くなれば良い」


誰に言うでもなく口から言葉が出ていたが、それは俺の心からの言葉で、焦って失敗したあいつらも含まれたから、ふと思い出してしまった。
ライジングランサーは、ゆっくり強くしたかったのに、周りの期待がそうさせなかったんだ。


「だからこそ、今回の装備を俺の品にしたんだ、今度は間違わないぞ」


周りがどんなに期待しようとも、俺のペースでゆっくりと訓練して今は順調だが、ライジングランサーも最初はそうだったから油断ができない。
ライジングランサーと違い基本が出来ているが、それでもまだ10歳の子供で、身体もしっかりと出来ていないから心配だ。


「俺の知ってるあの物語では、4歳の子が戦闘力710だったが、あれはフィクションだし、戦闘民族だからなぁ」


この事もいつか打ち明ける事になるかもしれないが、あちらとは関係ないから情報として持つ程度に思っていた。
俺がこちらに来たのが15歳の時で、既に22年も暮らしているから、身を固める時期なのかもしれないとなんだかしんみりしていたよ。


「冒険者を辞める時がその時と思っていたが、まさか子供たちに教え初めて知るとはな」


マリューナは指導者としての後輩にあたる感じで教えていて、ここで学校でも作ろうかと思い始めていたんだ。
撮影用の折り鶴も、改良すれば俺でなくても使えるだろうし、スキルの伝承なんてのも考えられた。


「紙作成スキルはチートだからな」


一人でこの世界に降り立ち、俺を守ってくれたスキルだから高性能なのは当然だった。
今までは自分の為に使って来たが、これからは子供たちの為にと言う思いを噛みしめ、俺は空いていた自分のベッドに入ったんだ。


「もう少ししたら部屋も別にしないとな」


ランクも上がり、お年頃でもあるのだからっと、マリューナにも負担を掛けている事を心配した。
本腰を入れて拠点を作り、ここに骨をうずめる覚悟も決まったので、俺も安心して寝たんだが、次に起きた時全員が俺のベッドに潜り込んでいて驚いたよ。


「おいおい、こんな事今までなかっただろう」


寝ているみんなは俺に抱き付いて離れず、マリューナまでそれに加わっていた。
最初に起きたのがマリューナで、どうしてこうなっているのか聞いたら、外の騒ぎを聞いて心配したと言われたよ。


「もしかして、俺が戻って来た時起きてたのか?」
「はい・・・もしかしたら、リューブさんが帰って来ないんじゃないかって、みんな心配してて」
「まったく、そんな事絶対にないぞ」
「そうだとは思いましたけど・・・一度考えてしまったら、もう怖くて仕方なかったんですよ」


戻って来ても、寝たらいなくなっているかもしれないっと、不安で仕方なかった様で、みんなでベッドに入る時は言葉はいらなかったらしい。
やれやれと思うのが普通だが、俺はそれを聞いて嬉しかったよ。


「リューブさんがメメルちゃんたちを家族の様に思っているのは分ってます・・・でも、守る為に自分を犠牲にしてしまう気がして怖いんですよ」
「まぁそうかもしれないが、みんなを置いてなんていかないぞ、勿論マリューナもそれに入っている」
「私も入れてくれるんですね、とっても嬉しいです」


笑顔で寄り添って来るマリューナは、そのまま二度寝を始め、俺も動けないからそのまま目を閉じて寝る事にした。
次に目を覚ました時、みんなはしっかり起きて俺をジッと見ていた。


「みんな、おはよう」
「「「「「おはようございます」」」」」
「今日は朝から訓練の予定だったんだが、昼からにしてくれ」
「ど、どうしたのよリューブ師匠」


どうしたのかとみんなは不思議そうだったが、俺の拠点巡りと言う言葉を聞き、嬉しそうな顔をして賛成してくれた。
朝食を摂りギルドに申請をしに行ったんだが、そこでまた騒動になってしまったよ。
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