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4章 1年3学期

120話 頼り切り

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「マリア様、アレシャスから資料が届きました」
「ありがとエメローネ」


新たな教科書になる資料を受け取り、その内容の密度を感じて驚きです。


「ダンジョンの作り方に、中ボスの設置方法、モンスターの種類に、弱点や強さの数値、おまけにどういった場所を好むのかまで書いてあるじゃない!」


ダンジョンの作り方は、学園に来る前に教わるのですが、それだけではなく、部屋はこういった場所に設置した方が良いなど、詳しく書かれていました。
モンスターは、キングクラスまで書かれていて、ドロップ品はもちろん、弱点と耐性のある属性も記されています。


「それだけではありませんよマリア様、なんでもその資料は見本で、既に量産を済ませているそうです。なんでも、コピーキとかいう魔道具は、既に開発してたそうです」
「こ、これと同じ物が量産されているの?」


まだ朝の仕事をしているのに、わたしは驚き疲れてしまいました。
こちらは教師を見つけるのに必死なのに、アレシャスはお願いした事のほとんどを終わらせているんです。


「でも、これなら教師も選びやすいわ、新人教師には1年生を担当してもらいましょう。お互いに勉強が出来るもの」
「そうですね、この資料があれば1年生が基礎を習得するでしょう」


基礎じゃなくて秘伝に等しいと、わたしは言いそうになって止めたわ。
この教科書に書かれているのは、今まで領主になってから気づくモノだったのよ。


「これにより、ダンジョンの多様性が上がり、素材を取るダンジョンにも磨きが掛かる事でしょう」


エメローネの答えに、わたしも頷いて肯定したわ。
今までは、ただいるだけの教師だったわけだし、今度からしっかりと授業をすれば、それだけで上達するのです。


「本当に素晴らしいわ」


アレシャスの作ってくれた教科書は、基盤をしっかり作る為のモノで、わたしだから良く分かるのよ。


「曲がり角を使って、戦闘をしやすくする方法とかも書かれてるし、通路の広さをそこだけ変えれば良いなんて、普通は考えないわ・・・ほんとにいろいろ参考になるわね」


わたしの知らない事はないと、そんな自信を持って読んだのだけど、その自信は直ぐに無くなって見入ってしまったわ。
でも、最後の方に書かれていた、分岐の使い方を読み悩んでしまったわ。


「う~ん・・・分かれ道を造ったら、すぐに合流させろ?そんなことをしたら、難易度が下がっちゃうはずよね」


そう思って読み進めると、倒さないモンスターを極力減らす為と書かれていて、更には難易度が下がらないそうなのよ。
どうしてよっと、言葉を抑えて読んで行き、その理由が書かれた場所で止まります。


「合流地点に中部屋以上を設置すれば、難易度が下がらなくて済む?・・・部屋を設置しただけで、どうしてそうなるの?」
「自分には分かりませんが、最初の説明にあった、先を見えなくする事になるからじゃないですか?」


エメローネの答えに、わたしはなるほどって思ったわ。
合流して複雑にしていなくても、それが本線に着くと分かるのは、部屋を通ってからだから、難易度の変動はないと言う事だったのよ。


「中部屋以上なら、それだけで難易度が上がるから、逆に複雑になるのね・・・これはおもしろいわ」


普通分岐は分かれ道と考えるもので、どちらかが本線になっているのが当たり前で、どこかでつなげなければ、通らない道のモンスターは討伐出来ないわ。


「それを見事に解決する対策ね」
「自分は、珍しいモンスターが載っているのが良いと思いました。正直、今の見習いたちがうらやましいです」
「ほんとね・・・ねぇエメローネ」


わたしはそう言って、エメローネの耳元で、ある相談をしました。
そして、それをエメローネはうれしそうな笑顔で了承したんです。


「準備には時間がかかりますが、何とかしてみましょう」
「お願いね・・・あとは外の事だけど、鬼神たちが、コボルトとウルフを連れて見つけてくれるのよね?」


エメローネは頷き、詳細を教えてくれけど、敵に寝返った貴族たちのほとんどは見つける事が出来るそうで、鼻の良いコボルトとウルフは断言したそうよ。
それを指揮するのは鬼神たちですから、当然と言えばそうよねっと、わたしも頷いてしまったわね。


「更に怪しい国には、レッドドラゴンが向かいます。同乗するウサギマジシャンとスライム騎士は、とても張り切っていましたね」
「そう・・・なんだか、アレシャス君頼みって感じね」


全部彼の獣魔だし、なんだか悪い気になります。
でも今は、信頼できる人手が足りませんし、彼に頼るしかないんです。


「我々十騎士が動ければ、少しはいいのですが」
「それは彼に止められてるんでしょ?」
「はい、何でも今は、十騎士たちの訓練を優先して欲しいそうです」


そう言ったエメローネは、かなり苦しそうな顔をしました。
きっと、自分たちの力の無さを嘆いているのよ。
十騎士たちの訓練を優先するのは、分からないでもないのだけど、とても歯がゆく感じたのよ。


「アレシャス君からのお願いだから仕方ないわ」
「そうですが、我々としては不甲斐ないと思ってしまいます」
「そうよね、相手は11歳の子供だものね」
「そうなんです。反論したくても、あれでしたからね」


その話し合いの時の事を想い出すと、彼は11歳なのかと思ってしまうわ。
エメローネを含めた、十騎士全員を相手に、彼は圧勝したのよ。
それも目隠しをして、剣は銅の剣のおまけつきです。


「訓練重視にしたかったのは分かっていましたが、さすがにあれは自信を無くしますよ」
「そうよね、反論したら10倍になって返って来ると思わせたのよね」
「はい、そのせいで十騎士の信用が下がると思ったのですが、そうはならずに、アレシャスたちを使っているのがワタシたちだと思われてます」


そう言ったのもあって、子供の考えではないと思ってしまうわ。
自分たちが何を言われても働いてくれてる、わたしはそれを聞いて、家臣にしたいと思ったわ。


「それもあって、皆も必死に訓練をしています。時間がある時は、ずっとあの滝の模型をみています」
「公務に支障が出ないようにね・・・それで、エメローネは出来るようになったの?」


その質問に、すごく悔しそうな顔をして来たから、まだなのねっと、わたしはお茶を進めました。
こんな顔をするのを見たのは、ドラゴンに負けた時以来で、とても大きな壁の前にいるのだと感じたわ。


「まぁ仕方ないわよエメローネ」
「ですがマリア様、もう少しなんです!あの感覚を思い出せればいけるんですよ」


エメローネは焦ってるから、きっとまだまだダメなのよ。
わたしが教えて貰ったコツは、どんな時でも焦らない事、エメローネはきっとみんなの見本になる為に空回りしているわ。


「今度、ブルーにでも頼んで息抜きをさせなくちゃだわ」
「マリア様?」
「何でもないわエメローネ、公務に支障が出ない程度に頑張りなさい。これはわたしの命令よ、その後4カ国会議に着ていくドレスをアレシャス君に頼んでちょうだい」
「はい?」


わたしの指示に、首を傾げているエメローネだけど、今回の奇襲を受けて相当疲弊していると思われいるのよ。
でも、わたしが素晴らしいドレスで登場すれば、こちらが襲撃されても余裕を示すことが出来る。


「白騎士という切り札を出し、今のわたしたちは満身創痍と思われてる」
「なるほど、ここで余裕だと見せつけるのですね」
「そうよ・・・それにあなたも、お話を聞く時間を作れるでしょ?」
「そそそれは!?・・・まぁそうですね」


アレシャスは忙しいのか、あまりこちらに来ないの、口実を作ってあげれば来てくれて、エメローネも訓練のヒントを貰えるわ。
訓練の進捗も見てもらえるし、言う事はないと、エメローネも賛成してくれたわね。


「ですが、もう少しこちらに来てほしいですよ」
「わたしたちも忙しいように、彼も学生で忙しいのよ。わたしと一緒に入学したら、鍛え直して貰いましょ」
「はいマリア様!」


エメローネは、すごく元気の良い返事をしたのは、よほど楽しみなのが感じられたわね。
でも、それが叶うのは、早くて2年後で、相当先の話となるから、今の訓練には間に合わないわ。
シャルティルと一緒に入学とか楽しそうだけど、それは無理な話です。
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