上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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2章 1年1学期前半

31話 お試しダンジョン

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「はぁ~いててて」


僕は今、シャンティに薬を頬に塗って貰っています。
それと言うのも、畑組の年長者であるティアってウサギ獣人の女の子のせいなんだ。


「す、すみませんアレシャスさん」
「シャンティが謝る事じゃないよ、僕が不用意だった」


部屋に入ってきて油断していたから、さすがの僕も突然すぎて避けれませんでしたよ。
それにレベルは1だと思うけど、さすが獣人って感じの早さだったね。


「じ、自業自得よっ!シャンティにあんなに近づいてるからいけないのよ、あたいは悪くないわ」


そう言って謝りもせず腕を組んでふんぞり返ってる茶色髪のウサギさん。
ウサギ獣人は、もっとオットリしている雰囲気があると聞いてたんだけど、この子は性格がとてもキツイです。


「ほんとにごめんなさいアレシャスさん、ティアも悪気があったわけではないんです」
「そうなの?」
「はい、ティアはみんなのことを大切に思っていて、心配なだけなんです」


僕の頬に薬を塗りながらシャンティが代わりに謝ってくれたけど、それを聞いてティアが「違うわよ!」って否定してきた。


「ほら、見てくださいアレシャスさん」
「ああ、あれだけ赤くなってたら分かるね」


なるほど~っとシャンティの言ってる事が正しいと納得です。
つまりは一番上のお姉さんだから、意地を張って頑張ってるんだ。


「そう考えると、何だか可愛いね」
「そうなんですよ、頑張ってるティアは可愛いんです」


シャンティとヒソヒソ話して、僕はちょっとだけティアの見方が変わったんだ。
だから笑顔の謝罪を受け、今回は違うとシャンティには言わない。


「でも、痛いから次はない方が助かるよ」
「それは、しっかりと言っておきます」
「うん・・・それで、今後の事を話をしたいんだけど、良いかな?」


僕の治療は終わっているので、さっそく話を戻しました。
戻って来た他の子達は食事をしていて、ティアにも食べて貰いながら聞いて貰ったよ。


「ダンジョンねぇ~」
「ダンジョンって言ってもね、今言ったモンスターばかりだから危険は少ない、王都の外よりは良いはずだよ」
「ふぅ~ん」


僕の話を聞いて、最初のシャンティよりも怪しんできます。
このままでは断られる空気が漂っていますが、今回はシャンティが味方になってくれたんだ。


「ティアどう思う?私は受けた方が良いと思うんだけど」
「う~ん。でもシャンティ、危険なんでしょ?」


考え込んでいるティアも、危険が少なからずあるのが気になっています。
ティアもそこは否定できず黙って悩んでしまった。


「ポーションも渡すし、サポートは責任を持つよ。だからお願い」
「その費用は?」
「もちろん僕が持つ。なんなら、ポーションは毎回使い果たしても良いよ」
「良し!決めたわ」


ティアの垂れていた長い耳がピーンと立ち、鋭い目をして僕をキッと見て来たよ。


「そのお試しってヤツはやってあげる。でもまずはそこまでっ!もしそこで子供たちが危ないとあたいが思ったら、そこで終わりよ!」
「もちろんだよティアさん、ありがとう」
「さんっ!なんて気持ち悪く付けないでちょうだいっ!不愉快だわ」


ティアは怒りプイッて後ろを向き、子供たちの方に走って行ってしまった。
僕は悪いことを言ったのかと、シャンティに視線を向けると、シャンティは困った顔をしながら教えてくれたんだ。


「ティアは、騙されてここに連れてこられたんです。恐らくそれが原因じゃないかと」
「そうなんだね」


きっと、彼女に笑顔で言い寄って来たヤツがいて、そう言った口調だったんだ。
言葉遣いを丁寧にして印象を良くし、最期に裏切るなんて良くある手だもんね。


「ティアも大変な目に合ってここにいるんだね」
「恐らくは、私もそうですから」


シャンティからも言われ、僕の責任は重いと感じた。
子供たちの世話を優しい笑顔でしているティアとそれを支えるシャンティ。それに答えないといけないんだと、僕は強く思ったよ。


「さぁこの5人でやるわ、始めてちょうだい」


食事が終わり、小さい子達を寝かしつけてティアたちの準備が整ったんだけど、僕は凄くビックリしてます。
5人のメンバーは、ティア【ウサギ獣人】シャンティ【オオカミ獣人】ダムダム【タヌキ獣人】リミリル【リス獣人】ムクロス【ネコ獣人】で、まさかの大人数だったんだ。


「5人も入ってくれるんだね・・・それで、このメンバーにした理由を聞いても良いかな?」


僕の予想では、ティアとシャンティだけだと思っていたので、本当にびっくりでした。
更に年齢もそれほど高くない子たちが参加してたから、ちょっと気になったんだ。


「何より、文句あるの」
「いや、別にそうじゃないけど、気になるでしょ?」


理由を聞きたいだけだったけど、垂れていた耳をまたまたピーンっと立たせて僕を見てきたよ。
その目は怒っていて、また怒らせたかな?っと、後ろに下がって心配になります。


「この子たちがどうしても行ってみたいって言うから仕方なくよ!別にあんたを信じたわけでも、シャンティに言われたからでもないんだからね!」


なんだそうなのかと、ティアの心境が分かって安心です。
彼女は危険だから反対したけど、みんなに押し切られたんだ。
シャンティをチラッと見ると、どうしてか顔を赤くして下を向いてしまい答えが返って来なかった。


「僕を信じられないのは当然だよ、僕が同じ立場でも慎重になる、それで良いんだよティア」
「わ、私はっ!!あなたを信じます。だから私からも無理に頼みました」
「シャンティ、ありがとう」


みんなに押し切られてティアは怒っていて、シャンティは僕を信じてくれた。
僕がお礼を伝えたら下を向いてしまい、悪い人の臭いはしないとか、良い臭いがすると、モジモジしながら変わった事も言っていました。


「まあ、みんなの安全を最優先にするから、そこは安心してよ」
「当然でしょ、そうじゃなかったら許さないわ」
「そうだね、じゃあ門を出すね」


一声掛けた僕は、礼拝堂に似合わない大きな門を出現さてました。
みんな視線を上げて凄いと声を揃え、それは警戒してるティアも同じだったよ。


「こ、これがダンジョンに繋がる門なの?先が見えないんだけど」
「他の空間に繋がってるからね」


いよいよダンジョンに入るのかと、ティアたちは震えだした。
でもね、そこまでの事態にはならない、なぜなら僕が一緒に入るからだよ。


「じゃあ入ろうか」
「「え!?」」


床に置いたダンジョン玉から手を離し、僕が立ち上がって先頭を行こうと前に出ると、ティアとシャンティが驚いた声を出しました。
僕は不思議で後ろを振り向いたんだけど、二人の後ろにいた3人が動かない2人にぶつかっていたね。


「あ、あんたも来るの?」
「さっき言ったでしょティア、試したいことがあるってさ。じゃあ行くよ」


こうして僕を先頭に門を通りました。
僕自身が入れるのは知ってるけど、ここで問題にしていた事が起きましたよ。


「やっぱりだ、2PTになっちゃってるね」


ダンジョン画面を見ながら僕はPT数を確認し、これがダンジョンヒューマンが入れないと思われていた、もう1つの理由だと答えが出ました。
うんうん頷いていたら、ティア達が恐る恐る僕を見てきます。子供たちはシャンティにしがみついて、何とも可愛いかったよ。


「ど、とうしたのよ」
「確認が終わっただけだよティア。じゃあみんな、一度出ようか」
「「「「「え!?」」」」」


ここで問題なのは、レベル差で分けられた訳ではないと言う事で、僕が倒してもみんなに経験値が入らない事よりももっと深刻な問題なんだ。
ダリアからもそこら辺を教えられてなく、僕がずっと不安に思っていた事だった。


「使役してるモンスターとは違う、これは問題だよ」


みんなと外に出て、僕はどうしようと考えます。
2PTになってしまった理由は、僕を仲間と見てない事なんだ。


「気持ちの問題だから、さてどうしようか」


ダンジョンの門は、入って行く人の感情を読み取りPTを分ける。だからメンバーでは無いダンジョンヒューマンがハブられ入れないのが確定したんだ。


「最初は1PTしか入れないし、ポイントを振らないとダメだからね~」


入るPTの数を増やすには、結構高めのポイントが必要です。
ダンジョンヒューマンの実験だし、ポイントを使わず実験していたと予想できるんだ。
これで1つ目の実験が出来たけど、このままじゃもう1つに進めないからみんなにお願いをします。


「いいかいみんな、僕を皆の仲間だと思って入るんだ、いいね」
「難しいわねそれ、そもそもあんたを信用してないのよ」
「うっ!?」


正直な言葉にグサッと刺されたけど、そこを何とか絶えてお願いしますよ。


「契約者とか、何でも良いからさ。お願いだから考え直して」
「そう言われても、無理じゃないかしら?」


無理とまで言われたけど、ダンジョンの探索はその後なので、何度も出入りを繰り返し、やっと1PTにする事が出来たんだよ。


「はぁ~試すこと45回、まさか最初にこんなに疲れるとは思わなかったよ」
「それはこっちのセリフよ。あたいたちの緊張感を返しなさいよね」


あれだけ怖がっていたみんなも慣れたみたいで、そこは良かったと前向きに考え次に進みます。
ダンジョン画面でモンスターの位置を確認して、さぁいよいよ戦闘だよっとみんなに声を掛けます。


「この先に動きのちょっと早い、ニンジャってニンジンのモンスターがいる。僕が最初に戦うから、みんなは見ててね」


僕は3m幅の道を進み、分岐の手前で武器を構えて止まりました。
その先には、1mくらいのニンジンに手足が生えたモンスターがいて、手には細く伸びたニンジンが握られてたよ。


「あれが武器なの?」
「そうだよティア、あれなら平気そうでしょ」


本物の刃物だったなら、子供たちには到底任せられず、ティアもシャンティも反対したでしょう。
相手の武器は、僕のショートソードで受けると折れてしまって、ニンジャはびっくりしてます。


「なにあれ?」
「ティア、これがここ野菜ダンジョンのモンスターだよ。武器もモンスターもみんな野菜なんだ」


僕はショートソードでニンジャを両断して見せた。
こいつらはほんとに弱い、刃物を持てるようになった上位種だったとしても、中忍ニンジャはゴブリンの半分くらいで、雑魚の中の雑魚なんだ。


「あれでモンスターと言えるの?」
「こいつらは食料調達用にいるんだよ」


この国では、領主になったダンジョン貴族が低層階で使う、食料生産用モンスターとして知られてる。
スライムでなくこいつらならと、2年前を思い出していましたね。


「どうかな?みんなは武器を持ってないから、素手で戦うことになるけど、倒せそう?」


子供たちに刃物は危険と思い最初は持たせていません。
僕はモンスターのドロップした野菜を拾いながらティアに聞いてみたよ。


「ティア?」
「あんなに弱いのに、こんなに新鮮なニンジンが穫れるって言うの?」


ティアが鼻をヒクヒクさせ、すごく不思議そうな顔をしてきたけど、これがダンジョンの強みであり、それだけでもインチキって言えるほどなんだ。
だからこの国では、畑を使っているのは相当田舎か、他種族の村や街でかなりの差別がされてる。


「なんだかズルいわね」
「そこがダンジョンなんだよ。まだまだたくさんいるからさ、ドンドン行くよ」


こうして僕を先頭にダンジョン探索は進んで行き、子供たちも参加し始めて戦ったんだ。
1階しかないのが勿体ないくらいで、僕は手ごたえを感じていたよ。
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