29 / 132
2章 1年1学期前半
29話 他の案は必然
しおりを挟む
「さて、冒険者ギルドに着いたけど、まさかこんなに混んでるとはね」
第3区画に来て、南にある冒険者ギルドに向かった僕は、途中でお店とかも見て回った。
だから今は朝の10時を過ぎて、冒険者は少ないと思ってた。
「一番近いから来たけど、ギルドの外にまで冒険者がいたから・・・これは期待できるかも」
依頼を受けてない冒険者が沢山で少し安心して扉を開けます。
中はラノベでも良くあるテーブルの並ぶ待合い場があり、鎧を着た人たちがなにやら話しています。
「奥に見えるのが受付は3つもあるんだね」
キョロキョロするまでもなく、青めの服を着た3人の受付嬢さんが冒険者の対応をしていて、ほんとにここが異世界なんだと実感します。
その横には木製の大きな掲示板が建てられ、何枚ものクエスト紙が貼られてる。
「顎に手を置いて考えてるってことは、依頼が無いわけじゃないんだね」
冒険者の5人くらいが考え込んでるのが見えます。
僕の依頼も報酬を考えれば受けて貰えそうでホッとします。
「じゃあ依頼を申請だね」
そんな考えで待合室を通ったけど、冒険者がジロジロ見て来て嫌だった。
声は掛けられなかったけど、受付の列に並ぶと前後の冒険者から視線を感じます。
「顔を隠してて良かった~」
ジロジロ見てくる冒険者達はスルーして、僕の番になるのを待ち、受付嬢さんの前に立つと凄く警戒してきました。
隠蔽ローブを羽織り顔も見せてないので仕方ないですけど、もう少しスマイルをしてほしかった。
「あのぉ~すみません」
僕の肩くらいの高さがある受付に手を置き、少し背伸びをして聞きます。
フードでギリギリ顔が見えない位置で聞いたからか、受付嬢さんは顔を引きつらせてるよ。
「ど、どのようなご用件でしょうか?」
「冒険者を雇うにはどうすれば良いですか?」
僕の質問に受付嬢さんは引くように後ろに下がり、後ろに並んでいた冒険者は笑ってきた。
振り向くと、待合所や掲示板にいる冒険者たちも注目していて、僕はかなりまずい状況だと理解した。
「良いカモだとか思われてるのかな?」
でもこれしか方法がない僕は、受付の女性に再度聞いてみます。
でも困った顔をし始めため息までつかれたんだ、隣の受付嬢さんと視線でやり取りをした後、僕を困った顔で見てきます。
「そんなに変な事でしたか?」
「あのね坊や、ローブで隠していても分かるけど、あなた子供でしょ?」
「そうですけど、それじゃダメなんですか?」
「子供の持ってる金額で雇える冒険者なんてここにはいないわ。受付で依頼を出す事は子供でももちろん出来るわよ、でも内容によって値段が変わって来るし大金の時もある。それでも君は平気なの?」
優しく言われたけど表情はとても困っていて、早く帰った方が良いと顔に書かれています。
それでも諦めない僕を見て、動物の革で出来た紙を出してきます。
「これが冒険者のランク表で、雇う為の金額よ」
冒険者のランクが星で表されていて、銅・銀・金・白金に分けられていました。
一人を雇う場合の値段は銀貨1枚で、それ位ならと思ったけど、それは平民にとって大金です。
「一番下の1つ星銅等級冒険者でも、1日銀貨1枚ですか?」
「そうね、でもそれは雇い賃だけの話。それ以外にも内容によって食事代が含まれたり、必要な物の代金も加わるのよ、出せるの?」
例として下級ポーションの値段を言われ、更に銀貨1枚が必要と分かったんだ。
どれだけ高いのかも語られて、食事抜きの宿が20泊出来ると言われました。
「つまり宿は角銅貨1枚で食事は抜きなんですね」
「そうよ、あそこの冒険者が飲んでるブドウ酒は銅貨7枚で30本買えるし、おつまみの干し肉は銅貨5枚、計算は出来るかしら坊や」
頷くだけはして、僕はお金の計算をしていました。
ブドウ酒はちょっと間違っていたけど、誤差の範囲だし受付嬢さんは、王都で売ってる服や食器などの値段も言い始め、硬貨の説明まで始めてくれた。
「親切で嬉しいね」
熱く語ってくれる受付嬢さんに聞こえない様に僕は呟きます。
おかげでこの世界のお金をここで把握出来たのは良かったです。下から銅貨・角銅貨に銀貨・金貨にジャール大金貨の順に高額になり、10枚で次の硬貨1枚と同じ価値になるんです。
「なるほど、じゃあ最低でも銀貨2枚は必要って事で、もっと上なら倍額用意するんですね?」
「まぁ~そうね」
受付のお姉さんが歯切れの悪い答え方をした理由、それは彼女の目線の先にあります。
それを追うまでもなく、僕はお姉さんの顔を見たままで嫌な顔をしてしまったね。
「後ろでニヤ付いてるんですよね」
「そうよ、だからよしなさい」
顔を近づけてヒソヒソと教えてくれた。嫌な顔をしていた理由はこれだったんだ。
良い人だねっと、僕も笑顔になったけど雇うのは今は無理みたいです。
「分かりました、ありがとうございましたお姉さん」
僕はそれだけ言ってギルドを出たけど、見事に後ろに冒険者達が付いてきます。数は4人で明らかに悪い事を考えている顔です。
「こんな人達ばかりなのかな?」
僕は道の途中にある小道に入って走り後ろをチラ見した。
急に方向を変えたので冒険者達も焦って追いかけてきてたよ。
「うん、走る速度はなかなかだ、あれでどれくらいの等級かな?」
僕が本気で走れば簡単に撒けるんですが、目的の場所から遠くなるので小道を曲がり物陰に隠れた。
冒険者たちは、隠れている僕に気付かず走っていくのが見えましたよ。
「そんな単純に走って逃げるわけないじゃん、頭はあまり良くないね」
冒険者は素行が悪い人が多いのかと、少し心配になります。
物陰で呟きひょっこり顔を出し元の道に戻った僕は、人選が難しいとため息をついたんだ。
「見通しが甘かったかな、普通に雇うだけなら簡単だと思っていたけど、だまされたり脅される可能性以上にまずい状況だ」
下手をしたら誘拐や売り飛ばされるかもしれない。
バルサハル先生が平民を嫌がるのも分かるかもっと、少しだけ思ったよ。
「それに、僕には秘密にして貰わないといけないこともあるから、口が堅くて裏切らない人を探さないとダメだね」
かなり時間の掛かる問題で難しいと悟った僕は、ダリアたちのお話しを思い出しました。
そして、信じるよりも信じさせる方を選ぶべきと言われたのを思い出した。
「1番は奴隷だけど、僕としては最後の手段かな・・・となると、僕を頼ってくれる人たち」
やっぱりあそこかなぁ~っと、都市の端っこにあるとある施設に向かいました。
そこにはラノベでも定番のあの建物があり、屋根はボロボロ壁も所々壊れてる。
見た目は教会の様だけど、教会とは違って神父さんたちはいない建物。そう、僕が来たのは皆さんもラノベで良くご存じの孤児院ですよ。
「ここしかないよね、ちょっと弱みにつけ込む感じで嫌だけど、ここの子たちにも良い話だし、背に腹は代えられない」
言い訳のような言葉を自分に言い聞かせ、壊れかけの門を通ります。
校庭の様な草が生えたない庭を通り、建物の扉の前に来た僕は、中から聞こえる声に衝撃を受けて固まってしまったよ。
「シャンティ、リミリルお腹空いた」
「もう少し待ってねリミリル、今ティアがダムダムたちを連れて裏の畑で野菜を取ってるの。ムクロスももう少し我慢してね」
子供たちのそんな声が聞こえ、僕は考える前に身体が動きました。
ダンジョン画面を出し必要な物を片っ端から探したんだよ。
「食べ物は勿論だけど、栄養剤に薬もいるかもしれない」
見るまでもなく、子供たちが辛い生活をしているのが想像出来た。
形は違うけど、僕の様に辛い目にあっているのが分かったんだ。
「それなら僕は助ける!こっちの提案なんて断られても良い、まずは何を置いてもお腹を満たさないと、かわいそすぎるよ」
中の様子を想像し、僕は泣きそうになりながらも交換して行きました。
良くラノベでもある境遇だけれど、本当にそんな場面を見たら助けずにはいられません。
「5Pの黒パンと10Pのラビットの肉串、それと50Pのスープも交換して、持てるモノは出してっと」
画面を念じながら操作し、商品をどんどんと交換してアイテム欄にしまって行きます。
扉をノックしたいから、今持てるのは左手だけ、それでもパンと肉串は網カゴに入れて準備万端です。
「果物もあった方が良いかな?」
甘い物として出しても良いかもっと、仲良くなってから出そうと交換だけはしておきます。
ちなみポイントで交換した物は、アイテム欄に自動で入ります。そして袋やカゴや鍋といった、入れ物にしっかりと入った状態で交換出来るんだ。
「アイテム交換録を上げておいて本当に良かった」
網カゴや鍋といった入れ物は、最初は出て来ませんでした。でも5ポイントを振り込んでからは、袋なども無料になり詰められた状態で出て来たんだ。
「僕の欲望さまさまだったね」
はははっとあの時は決して無駄では無かったと、少し心が救われた気分です。
そんな風に思える様にしてくれた子供たちに、感謝の気持ちを伝えたいよ。
「っと、そんな事思ってる場合じゃなかった、早く助けないとね」
ダリアたちと一緒の時は、何度も役に立ってくれたアイテム交換碌、ここでも頑張ってもらうよっと、僕はテンションが少し上がり始めた。
もし、今の状態でおねだりされたら、お兄さんなんでもあげちゃうかもっとノリノリでした。
「仲良くなれるかな」
かわいそすぎる子供たちを想像してテンションがおかしいですが、僕はそのままの勢いでノックを忘れ、ドアノブを握ろうとします。
でも、扉は勝手に開き、僕の手は空振ってニギニギと手が動くだけに終わったんだ。
「良い匂い」
扉を開けたのは、僕の胸くらいの背丈をしてるリスの耳としっぽが生えてる子供でした。
鼻をヒクヒクさせて可愛いったらないですよ。
「えっと、君は」
「お腹空いた」
その子は、僕の臭いを嗅いでるのが分かったけど、それは当然持ってる食べ物の匂いを嗅いでたんだ。
にぎにぎしていた手でパンを掴んで彼女に差し出したんだよ。
「食べるかい?」
「良いのっ!?」
リス獣人の子供にパンを差し出すと、大きな尻尾をフリフリさせて受け取りました。
とても可愛いくて頭を撫で様としたけど、その子は他の子供に抱き抱えられ、遥か後方に移動してしまった。
僕の手は、またまたニギニギと空振りに終わったよ。
「ダメでしょリミリル!?すみません返します」
リスの子を遠ざけたのは白い髪の獣人の子で、僕が言葉を発する暇もなく、リスの子を抱き抱えて奥に行ってしまいました。
他の子も一緒に移動したけど、僕の目線はちょっと先の床に向いてて、リスの子に渡した黒パンがそこに置かれたんだ。
「あのリスの子、とても悲しそうな顔してた。食べてほしかったけど、可哀そうな事をしたね」
一度は受け取って貰えたけど、本来は白い髪がとても綺麗なあの子の反応が正しいんだ。
優しい人には注意する、それがダリアたちから教えてもらった事なんだよ。
「あの子を連れて行った子は狼かな?イヌって可能性もあるけど・・・まぁ良いか」
イヌっぽい白髪の女の子が奥の方に走っていったので、僕は後を追うことにしました。
礼拝堂の様な最初の部屋はとても広く、その奥には扉のない部屋がいくつもありました。
「何処もボロボロだ、住んでる人がいるとは思えない」
酷い所で僕のやる気は上昇して行き、一番奥の部屋から声が聞こえたのでそこに足が向かった。
途中の部屋をのぞいたけど、食堂だったり藁のベッドがいくつも置いてあった。結局はボロボロだった。
「やっぱり、現実に見ると違う・・・悲惨だよ」
ベッドの数を見ると結構な人数がいそうで、さっきの子達だけじゃないのが想像出来ました。
僕は念のためにもう少し食料を交換し、食べ物だけでも置いて行こうと考えます。
「きっと、あの子たちは食べ物を受け取らない。まずはあの警戒心を解かないとだ」
食べ物に睡眠薬を入れたり、油断してる所を捕まえて奴隷にするとかありそうです。
あの子たちの気持ちは痛いほどわかる、だからこそ何とかしてあげたい。その思いを胸に奥の部屋に入ると、部屋の隅っこに子供たちが固まっていました。
「震えてる、あの子たちが獣人だからってのもあるのかな。人数は・・・20人か」
僕は遠目から人数を数え、串焼きとパンの入った網カゴを子供たちの近くの床におきました。
僕は少し離れ部屋の入り口で座り向こうの反応を待ちます。
「リスの子が匂いで分かったんだ、きっと気付くよね」
子供たちは、こっちを見ないで下を向きずっと怯えてた。
臭いに釣られてこっちを見てくれるまで待ったけど、それは長くは掛からなかったね。
第3区画に来て、南にある冒険者ギルドに向かった僕は、途中でお店とかも見て回った。
だから今は朝の10時を過ぎて、冒険者は少ないと思ってた。
「一番近いから来たけど、ギルドの外にまで冒険者がいたから・・・これは期待できるかも」
依頼を受けてない冒険者が沢山で少し安心して扉を開けます。
中はラノベでも良くあるテーブルの並ぶ待合い場があり、鎧を着た人たちがなにやら話しています。
「奥に見えるのが受付は3つもあるんだね」
キョロキョロするまでもなく、青めの服を着た3人の受付嬢さんが冒険者の対応をしていて、ほんとにここが異世界なんだと実感します。
その横には木製の大きな掲示板が建てられ、何枚ものクエスト紙が貼られてる。
「顎に手を置いて考えてるってことは、依頼が無いわけじゃないんだね」
冒険者の5人くらいが考え込んでるのが見えます。
僕の依頼も報酬を考えれば受けて貰えそうでホッとします。
「じゃあ依頼を申請だね」
そんな考えで待合室を通ったけど、冒険者がジロジロ見て来て嫌だった。
声は掛けられなかったけど、受付の列に並ぶと前後の冒険者から視線を感じます。
「顔を隠してて良かった~」
ジロジロ見てくる冒険者達はスルーして、僕の番になるのを待ち、受付嬢さんの前に立つと凄く警戒してきました。
隠蔽ローブを羽織り顔も見せてないので仕方ないですけど、もう少しスマイルをしてほしかった。
「あのぉ~すみません」
僕の肩くらいの高さがある受付に手を置き、少し背伸びをして聞きます。
フードでギリギリ顔が見えない位置で聞いたからか、受付嬢さんは顔を引きつらせてるよ。
「ど、どのようなご用件でしょうか?」
「冒険者を雇うにはどうすれば良いですか?」
僕の質問に受付嬢さんは引くように後ろに下がり、後ろに並んでいた冒険者は笑ってきた。
振り向くと、待合所や掲示板にいる冒険者たちも注目していて、僕はかなりまずい状況だと理解した。
「良いカモだとか思われてるのかな?」
でもこれしか方法がない僕は、受付の女性に再度聞いてみます。
でも困った顔をし始めため息までつかれたんだ、隣の受付嬢さんと視線でやり取りをした後、僕を困った顔で見てきます。
「そんなに変な事でしたか?」
「あのね坊や、ローブで隠していても分かるけど、あなた子供でしょ?」
「そうですけど、それじゃダメなんですか?」
「子供の持ってる金額で雇える冒険者なんてここにはいないわ。受付で依頼を出す事は子供でももちろん出来るわよ、でも内容によって値段が変わって来るし大金の時もある。それでも君は平気なの?」
優しく言われたけど表情はとても困っていて、早く帰った方が良いと顔に書かれています。
それでも諦めない僕を見て、動物の革で出来た紙を出してきます。
「これが冒険者のランク表で、雇う為の金額よ」
冒険者のランクが星で表されていて、銅・銀・金・白金に分けられていました。
一人を雇う場合の値段は銀貨1枚で、それ位ならと思ったけど、それは平民にとって大金です。
「一番下の1つ星銅等級冒険者でも、1日銀貨1枚ですか?」
「そうね、でもそれは雇い賃だけの話。それ以外にも内容によって食事代が含まれたり、必要な物の代金も加わるのよ、出せるの?」
例として下級ポーションの値段を言われ、更に銀貨1枚が必要と分かったんだ。
どれだけ高いのかも語られて、食事抜きの宿が20泊出来ると言われました。
「つまり宿は角銅貨1枚で食事は抜きなんですね」
「そうよ、あそこの冒険者が飲んでるブドウ酒は銅貨7枚で30本買えるし、おつまみの干し肉は銅貨5枚、計算は出来るかしら坊や」
頷くだけはして、僕はお金の計算をしていました。
ブドウ酒はちょっと間違っていたけど、誤差の範囲だし受付嬢さんは、王都で売ってる服や食器などの値段も言い始め、硬貨の説明まで始めてくれた。
「親切で嬉しいね」
熱く語ってくれる受付嬢さんに聞こえない様に僕は呟きます。
おかげでこの世界のお金をここで把握出来たのは良かったです。下から銅貨・角銅貨に銀貨・金貨にジャール大金貨の順に高額になり、10枚で次の硬貨1枚と同じ価値になるんです。
「なるほど、じゃあ最低でも銀貨2枚は必要って事で、もっと上なら倍額用意するんですね?」
「まぁ~そうね」
受付のお姉さんが歯切れの悪い答え方をした理由、それは彼女の目線の先にあります。
それを追うまでもなく、僕はお姉さんの顔を見たままで嫌な顔をしてしまったね。
「後ろでニヤ付いてるんですよね」
「そうよ、だからよしなさい」
顔を近づけてヒソヒソと教えてくれた。嫌な顔をしていた理由はこれだったんだ。
良い人だねっと、僕も笑顔になったけど雇うのは今は無理みたいです。
「分かりました、ありがとうございましたお姉さん」
僕はそれだけ言ってギルドを出たけど、見事に後ろに冒険者達が付いてきます。数は4人で明らかに悪い事を考えている顔です。
「こんな人達ばかりなのかな?」
僕は道の途中にある小道に入って走り後ろをチラ見した。
急に方向を変えたので冒険者達も焦って追いかけてきてたよ。
「うん、走る速度はなかなかだ、あれでどれくらいの等級かな?」
僕が本気で走れば簡単に撒けるんですが、目的の場所から遠くなるので小道を曲がり物陰に隠れた。
冒険者たちは、隠れている僕に気付かず走っていくのが見えましたよ。
「そんな単純に走って逃げるわけないじゃん、頭はあまり良くないね」
冒険者は素行が悪い人が多いのかと、少し心配になります。
物陰で呟きひょっこり顔を出し元の道に戻った僕は、人選が難しいとため息をついたんだ。
「見通しが甘かったかな、普通に雇うだけなら簡単だと思っていたけど、だまされたり脅される可能性以上にまずい状況だ」
下手をしたら誘拐や売り飛ばされるかもしれない。
バルサハル先生が平民を嫌がるのも分かるかもっと、少しだけ思ったよ。
「それに、僕には秘密にして貰わないといけないこともあるから、口が堅くて裏切らない人を探さないとダメだね」
かなり時間の掛かる問題で難しいと悟った僕は、ダリアたちのお話しを思い出しました。
そして、信じるよりも信じさせる方を選ぶべきと言われたのを思い出した。
「1番は奴隷だけど、僕としては最後の手段かな・・・となると、僕を頼ってくれる人たち」
やっぱりあそこかなぁ~っと、都市の端っこにあるとある施設に向かいました。
そこにはラノベでも定番のあの建物があり、屋根はボロボロ壁も所々壊れてる。
見た目は教会の様だけど、教会とは違って神父さんたちはいない建物。そう、僕が来たのは皆さんもラノベで良くご存じの孤児院ですよ。
「ここしかないよね、ちょっと弱みにつけ込む感じで嫌だけど、ここの子たちにも良い話だし、背に腹は代えられない」
言い訳のような言葉を自分に言い聞かせ、壊れかけの門を通ります。
校庭の様な草が生えたない庭を通り、建物の扉の前に来た僕は、中から聞こえる声に衝撃を受けて固まってしまったよ。
「シャンティ、リミリルお腹空いた」
「もう少し待ってねリミリル、今ティアがダムダムたちを連れて裏の畑で野菜を取ってるの。ムクロスももう少し我慢してね」
子供たちのそんな声が聞こえ、僕は考える前に身体が動きました。
ダンジョン画面を出し必要な物を片っ端から探したんだよ。
「食べ物は勿論だけど、栄養剤に薬もいるかもしれない」
見るまでもなく、子供たちが辛い生活をしているのが想像出来た。
形は違うけど、僕の様に辛い目にあっているのが分かったんだ。
「それなら僕は助ける!こっちの提案なんて断られても良い、まずは何を置いてもお腹を満たさないと、かわいそすぎるよ」
中の様子を想像し、僕は泣きそうになりながらも交換して行きました。
良くラノベでもある境遇だけれど、本当にそんな場面を見たら助けずにはいられません。
「5Pの黒パンと10Pのラビットの肉串、それと50Pのスープも交換して、持てるモノは出してっと」
画面を念じながら操作し、商品をどんどんと交換してアイテム欄にしまって行きます。
扉をノックしたいから、今持てるのは左手だけ、それでもパンと肉串は網カゴに入れて準備万端です。
「果物もあった方が良いかな?」
甘い物として出しても良いかもっと、仲良くなってから出そうと交換だけはしておきます。
ちなみポイントで交換した物は、アイテム欄に自動で入ります。そして袋やカゴや鍋といった、入れ物にしっかりと入った状態で交換出来るんだ。
「アイテム交換録を上げておいて本当に良かった」
網カゴや鍋といった入れ物は、最初は出て来ませんでした。でも5ポイントを振り込んでからは、袋なども無料になり詰められた状態で出て来たんだ。
「僕の欲望さまさまだったね」
はははっとあの時は決して無駄では無かったと、少し心が救われた気分です。
そんな風に思える様にしてくれた子供たちに、感謝の気持ちを伝えたいよ。
「っと、そんな事思ってる場合じゃなかった、早く助けないとね」
ダリアたちと一緒の時は、何度も役に立ってくれたアイテム交換碌、ここでも頑張ってもらうよっと、僕はテンションが少し上がり始めた。
もし、今の状態でおねだりされたら、お兄さんなんでもあげちゃうかもっとノリノリでした。
「仲良くなれるかな」
かわいそすぎる子供たちを想像してテンションがおかしいですが、僕はそのままの勢いでノックを忘れ、ドアノブを握ろうとします。
でも、扉は勝手に開き、僕の手は空振ってニギニギと手が動くだけに終わったんだ。
「良い匂い」
扉を開けたのは、僕の胸くらいの背丈をしてるリスの耳としっぽが生えてる子供でした。
鼻をヒクヒクさせて可愛いったらないですよ。
「えっと、君は」
「お腹空いた」
その子は、僕の臭いを嗅いでるのが分かったけど、それは当然持ってる食べ物の匂いを嗅いでたんだ。
にぎにぎしていた手でパンを掴んで彼女に差し出したんだよ。
「食べるかい?」
「良いのっ!?」
リス獣人の子供にパンを差し出すと、大きな尻尾をフリフリさせて受け取りました。
とても可愛いくて頭を撫で様としたけど、その子は他の子供に抱き抱えられ、遥か後方に移動してしまった。
僕の手は、またまたニギニギと空振りに終わったよ。
「ダメでしょリミリル!?すみません返します」
リスの子を遠ざけたのは白い髪の獣人の子で、僕が言葉を発する暇もなく、リスの子を抱き抱えて奥に行ってしまいました。
他の子も一緒に移動したけど、僕の目線はちょっと先の床に向いてて、リスの子に渡した黒パンがそこに置かれたんだ。
「あのリスの子、とても悲しそうな顔してた。食べてほしかったけど、可哀そうな事をしたね」
一度は受け取って貰えたけど、本来は白い髪がとても綺麗なあの子の反応が正しいんだ。
優しい人には注意する、それがダリアたちから教えてもらった事なんだよ。
「あの子を連れて行った子は狼かな?イヌって可能性もあるけど・・・まぁ良いか」
イヌっぽい白髪の女の子が奥の方に走っていったので、僕は後を追うことにしました。
礼拝堂の様な最初の部屋はとても広く、その奥には扉のない部屋がいくつもありました。
「何処もボロボロだ、住んでる人がいるとは思えない」
酷い所で僕のやる気は上昇して行き、一番奥の部屋から声が聞こえたのでそこに足が向かった。
途中の部屋をのぞいたけど、食堂だったり藁のベッドがいくつも置いてあった。結局はボロボロだった。
「やっぱり、現実に見ると違う・・・悲惨だよ」
ベッドの数を見ると結構な人数がいそうで、さっきの子達だけじゃないのが想像出来ました。
僕は念のためにもう少し食料を交換し、食べ物だけでも置いて行こうと考えます。
「きっと、あの子たちは食べ物を受け取らない。まずはあの警戒心を解かないとだ」
食べ物に睡眠薬を入れたり、油断してる所を捕まえて奴隷にするとかありそうです。
あの子たちの気持ちは痛いほどわかる、だからこそ何とかしてあげたい。その思いを胸に奥の部屋に入ると、部屋の隅っこに子供たちが固まっていました。
「震えてる、あの子たちが獣人だからってのもあるのかな。人数は・・・20人か」
僕は遠目から人数を数え、串焼きとパンの入った網カゴを子供たちの近くの床におきました。
僕は少し離れ部屋の入り口で座り向こうの反応を待ちます。
「リスの子が匂いで分かったんだ、きっと気付くよね」
子供たちは、こっちを見ないで下を向きずっと怯えてた。
臭いに釣られてこっちを見てくれるまで待ったけど、それは長くは掛からなかったね。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる