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2章 成果

29話 悪いタイミングの襲撃者たち

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「んにゃ~ベルトロン?」


訓練の成功を祝してお祝いをした深夜だと言うのに、俺は嫌な気配を感じて目を覚まし、ベッドから出たら横に寝ていたエメラも起きてしまった。
トイレと伝えて部屋を出たが、そんなわけがなくて家の外に出たんだ。


「う~ん、戦う気があるのは・・・50人って所か?」


近づいてくる殺気がそれくらいの数で、俺は一人でそいつらを待った。
姿が見えてくると人数がもっといた事で、殺気を持っていないのが不思議だったんだが、見たことのある顔も確認できて納得した。


「スラムのリーダーじゃないか、久しぶりだな」
「そうだね、今日はあんたに会いたいってやつらがいてね、そいつらを連れてきたんだ」
「そうだったのか」


エメラを探している時の女リーダーが30人の部下と共に現れ、殺気の出している冒険者たちに視線を向けたが、正直誰なのかが分からない。
それが分かったのか、冒険者の一人が前に出て来て、俺を指差して怒鳴ってきたよ。


「オレ様を忘れたのか貴様っ!」
「そう言われてもな」
「オレ様は6つ星の冒険者【アルフレックス】だぞ」


名前を名乗ってきて、PT名も教えてもらったが、正直興味が無いので知らなかった。
6つ星の【ブラックソード】と言われ、腕を組んで考えたがやっぱり思い出せなかった。


「まだ分からないのか」
「そう言われてもな、6つ星なんてこの国に50人はいるし、せめて7つ星になってくれなくてはな」
「なっ!なんだと」


この世界で最強と言われている7つ星は、6人と少なく名前を知らない者はいないだろう。
しかし、1つ星が下がると300人はいるから、俺の興味はそこにはなかった。


「俺に恨みでもなるのか?」
「まだ分からないのかっ!ダンジョンでオレ様の勧誘を断っただろう」
「勧誘?」


ダンジョンの中での事と分かり、俺は更に思い出してみたんだが、そこで頭に浮かんだ出来事は、75階でモンスターに囲まれたクランを助けた事だった。
モンスターを倒した後、リーダーらしき男に声を掛けられた気がしたが、直ぐに離れたので覚えていなかった。


「そうか、あの時の集まりがお前らだったのか」
「やっと思い出したようだな」
「勧誘は断ったんだ、それだけだろう?」
「違うっ!お前はオレ様のプライドを傷つけた、それは万死に値するんだよ」


言いがかりにもほどがあり、戦う気満々で剣を抜いて来た。
俺も仕方ないから戦う事にしたんだが、そこで問題はスラムの者たちで、質問することにしたよ。


「スラムのリーダーに聞きたい、俺と敵対すると言う事で良いのかな?」
「当然だろう、オレ様に逆らう訳がない」
「おい、俺はお前には聞いてない黙ってろ、そっちの女性に聞いてるんだよ」
「なっ!」


ブラックソードのリーダーは、顔を赤くして怒ってきたが、そんな事は関係なくスラムのリーダーの答えを待った。
その答えによっては、この後俺はスラムを掃除しないといけないが、ここに向かって来ている時にも感じていたので、答えは分かっていたよ。


「さっきも言ったけどね、案内を依頼されたから来ただけさ、あんたと事を荒立たせる気はない」
「なっ何故だ!」
「何故も何もないんだよ、こちらはそう言った内容だから引き受けたのさ、こいつと戦うなんて絶対にイヤだね」
「じゃ、じゃあどうして、武装してこの人数を連れてきたんだ」


その答えは、ブラックソードのクランを警戒しての事で、裏切るだろうから人数を集めていたと笑顔で言ったんだ。
それを聞いて、赤かった顔を更に真っ赤にして怒ってきたが、警戒するのは当然の事だ。


「ふんっ!見くびられたものだな、こちらの方が数は上だぞ」
「あらあら、6つ星冒険者と言っても普通の人間ね、これだけのはずないでしょ」
「な、なんだと」
「気配を消して後70人隠れてるのよ、そちらの男性は気づいていたのに、残念な人ね」


俺に向かってニコリとしてきた女性リーダーは、それだけ言って離れていったよ。
ブラックソードのメンバーは、それでも俺に向かって来る様で、殺気を上げて来た。


「言っておくが、それ以上一歩でも近づくなら、その命はないと思えよ」
「くっくっく、この数を相手に勝てると思ってるのか?」
「思っているから言っている、その異常さを悟れよ無能」
「なっ!良く言ったな貴様、あんな連中がいなくても、オレ様たちは強いんだよ」


ブラックソードのリーダーが一歩足を踏み出したので、俺はその瞬間に男の足を手刀で切断した。
リーダーが部下に突撃を宣言するタイミングだったから、俺の接近にも攻撃にも気づかなかったわけだが、まさか切断してしまうとは思わなかったよ。


「うぎゃあぁぁーー!あああ、足がっ!オレの足があぁぁーー」
「おいおい、お前6つ星なら身体強化くらいしろよ、そんなだから75階程度で苦戦するんだ」


傷口を抑えて騒ぐリーダーの治療を始めた部下たちだが、さすがに50人もいると俺に向かって来る連中もいた。
しかし、20人が詠唱で向かってこなくて、20人で襲って来てもその動作はバラバラで、少し体を逸らせば数名の剣は空を切り、他の剣は指で少し押せば味方に当たる。


「「「「「うぎゃっ」」」」」
「「「「「ぐえっ!」」」」」
「「「「「い、いでぇ~」」」」」
「さぁまだやるのか?」


戦えるのはまだまだいるんだが、さすがに怖がって近づいてこない。
しかし、逃げる訳でもないので、リーダーの男が倒せと命令した事で攻撃が始まった。


「しかし、魔法も撃ってくるとか、これからが本番って訳か」


飛んできている火の玉や氷の矢を眺め、俺はやれやれと思ってしまった。
学園の3年生がそうだったように、詠唱は遅いし飛んでくる魔法は弱くて話にならない。


「はじいても良いのだが、スキルはそうは言ってないな」


その魔法は、俺の攻撃に使う事が決まっていて、手に当たる時に魔力で包み込み、方向を変え魔法を放った奴に返してやった。
魔法士たちはそれで倒せたんだが、避けれないとか弱すぎだ。


「さて、残りは10人だが、そろそろ飽きてきた」


一人でダンジョンに入ってきた時の様な気分で、戦ってもつまらない。
やはりみんなに教えていた方が楽しいので、早い所終わらせることにしたよ。


「リーダーのお前、これ以上やるなら命は貰う、これは最後の警告だ」
「お、オレに手を出したら、お前はおしまいだぞ」
「そういう事はな、夜襲なんてしてないで、しっかり手を打ってから言え」


俺はいつか来る時の為に準備をしているが、今回それを使う事はない。
何故なら、こいつらが逃げる事が出来ないからだ。


「お前たちはここで死ぬ、それを知る者はいないし、報告だってできないんだよ」
「こ、コノヤロー」


リーダーは、最後の抵抗に剣を投げて来たが、そんな物が俺に当たるはずもなく、飛んできた剣を攻撃して跡形もなく粉砕した。
それを見て、そこにいた奴らは顔を真っ青にして、やっと戦意を失ったようだ。


「おおお、オレ様の剣が」
「何かの魔剣だったようだがな、お前は何も知らないから失った」
「な、なにを言ってやがる」
「魔剣はな、魔力が籠っているから丈夫で強くなるんだ、それをお前は投げるだけで済ませてしまった」


もう少し知識を持てと言ったんだが、男は分からず怒鳴ってきたので、距離をつめて首を切断した。
他の連中も同じように倒し、逃げる奴らもいたが、そいつらはスラムの連中が捕まえたよ。


「さすがだな」
「いつから気づいていた?」
「最初からだ、あんたらのリーダーはそう言うやつだろ?」
「なるほどな、通りで姐さんが気に入るわけだ」


死体と捕虜を任せ、借りはいずれ返す事を伝え襲撃は静かに終わった。
後日、6つ星のクランが姿を見せなくなったと噂になったが、それほど騒ぎにはならずダンジョンで死んだと言われる始末だったよ。
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