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2章 戦争の第一歩

46話 あれから1か月

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「た、助けてください!」

「はいは~い入り口はあっちですよ~ゆっくり歩いてくださ~い」


私はフラフラの兵士の目の前に飛んで誘導しました、私の指の先にはロープと板で出来た簡易式のエレベーターがあるの、エレベーターというよりもリフトかしらね。


「あの痩せ具合と何日もお風呂に入ってない感じからして、そろそろ限界かしら・・・あれから1か月、まぁ持った方ではあるわね」


あれから色々あり1か月経ったのよ、最初は相手も元気で、砦から出て来て壁を攻めて来たんだけど、私たちは相手にしなかったの、魔法とかで壁を壊してきても、直ぐに私が直してしまうし、兵士を狙った攻撃は私とミサーラのシールドで防いじゃうのよ、こちらは攻撃をしないで向こうが攻撃しっぱなしで疲れて撤退していったわ。

その時の顔はかなりひどかったわね。


「まぁ決め手はやっぱり、夜のお誘いだったかしら、見張りを食事に誘って良かったわ」


2週間が経ち相手の疲労が見えた頃、夜に砦の近くまで行って見張り役にこっそりと降りて来てもらって食事に誘ったのよ、最初は警戒していたけど、何度もしていたら来るようになったわ、それのおかげで優しい所を見せて、尚且つ中の混乱を誘いました、敵兵の半分は私たちの壁まで来ています。


「頑張って籠城してるわねぇ、敵の援軍が来ないのはちょっと拍子抜けだけど、こちらの準備も出来たし、そろそろ次の作戦に移りましょうかね」


シールド小型カメラで敵の砦内を見て、私は次の作戦に向けビクトールたちをバスに呼びました。


「あ、あのラリーファ、空を飛ぶのにこの服はちょっと」


バスの中でみんなには着替えてもらっています、ビクトールたち飛行部隊用の白いヒラヒラのドレスです。

その姿で空から舞い降り、砦の兵士を説得してもらうのよ、天使が降臨したと今の精神状態なら思うかもです。


「ヒラヒラがすごく綺麗じゃない、これで兵士たちの心は鷲掴みよ、さぁ頑張って」

「うぅ~ラリーファを信じますわよ、これが成功したら必ず戦闘をさせてくださいましね」


私は頷き手を振りました、ビクトールたちが顔を赤くしてスカートを抑え、すごく恥ずかしそうにして飛んで行きましたよ。

スカートはなるべく風になびかない様にしているし、真下に来なければ見えることはありませんって説明したのよ、それに成功したらご褒美に地上戦をする約束までしたの、ほんとみんな戦い好きね。


「出来れば接近戦は控えたいのだけど、仕方ないわね・・・さて、説得に数日掛かるとして、私は次ね」


この1か月、ここまでの道にレールを敷き魔導列車を運行させたんです、これで補給路は完璧です、おかげで兵士たちの輸送もスムーズになりました、国からも兵士が補充され、ここから他の残っている砦に移動して戦う予定なの。


「国からの部隊は徒歩なのがまだちょっと面倒ね、その部隊との時間差を考えて攻めないといけないわ」


足並みをそろえないといけないのは大変です、自動車の運転を教えられるように早くしたいわね。

ちょっと愚痴をこぼしながらペルーロたちの所に向かいました、私たちが担当する砦は敵の王都の南東です、ビクトールたちも説得を終わらせたら来るように言ってあります。


「お待たせペルーロ」

「やっとわんねラリーファ」

「そうね、相手の勢いは既になくなってるわ、今回の砦が半分取れたら和平交渉に持ち込める、頑張りましょうね」


私たちの部隊を入れて5つ、その内3つの砦を取ればそう言った話を国が持ち込む予定です、もちろん私もその交渉に参加するわよ、メリーナが護衛でビクトールが大使として行く手筈になっています。


「あれが南東砦ウサ?」


2日後、私たちはバスなので4時間で目的の砦前に着き砦を眺めています、作りは私たちが拠点にした砦と同じで、四角く壁を作りその角に塔が建ってるわ。


「それで、今回の作戦はなんだわん?」

「今回は傭兵たちもいるから、それに合わせた戦い方よ」


私はペルーロの肩から前に飛び、収納から大きな固定バズーカを出したわ、これで門を破壊して突撃よ。

下手な小細工が要らないほど、敵の士気も数も減っているの、王都を攻めるのならば違いますが砦戦は私たちの方が多いのよ、数で言うと相手は2000で、こちらは6000プラス10人ね。


「それなら分かりやすいわん」

「まぁ他にもあるのだけど、今回は破壊が目的なの、レールを敷くのに邪魔なのよ、あの砦」


敵国との交渉を済ませ仲間に取り込んだ場合、列車のレールを敷くことになります、でも近くに私の拠点があるからここには必要ないんです、国に繋げてそこから更に分岐させる予定よ。


「良く分からないわん、とりあえず突撃するわんね」

「そうそう、今の私たちは何も考えずただ突撃よ、じゃあ行くわよ!」


私の大型バズーカが火を吹き、敵の門と正面の壁が崩れました、もちろん1発じゃなく何発も撃てる仕様だからよ。その音を聞き兵士が突撃して行ったわ、合流した傭兵PTも今回が初戦で報酬も良いから張り切ってるわ、士気は最高潮って感じなの。


「ミサーラ!補助魔法だわん」

「了解ウサ!」


砦内でペルーロとミサーラが離れずに戦ってるわ、私は二人の為にシールドを操作してるの、敵兵は門を破壊されて大混乱よ。


「圧勝なのは良いのだけど、歯ごたえが無くて傭兵たちがつまらなそうね、もう少し頑張ってほしいのだけど」


本来は壁の外での戦いがあったはずが、いきなり砦内での戦いになった為、敵兵士は切り替えが出来てません、攻撃をシールドでガードしてみんなの顔を見てそう思ったの、そこに元気な声が聞こえてきました、どうやらここの大将みたいよ。


「我の名はファンダル!死にたい奴からかかってこんかい!」


叫びながら大きな斧を振り回しているわ、普通の兵士はそれで吹き飛ばされてる、これはかなりの強者ね。


「さて、誰が行くのかしら?」


私が様子をうかがっていると、どうやらドワーフPTのディフェンスシブが戦うみたい、オティレさんが小柄ながらに斧を構えています。

あれは対抗しているのね、分かるわよ。


「ふんっ!他種族風情が我のマネ事か?笑わせる」

「わしゃしゃ、それはワシに勝ってから言うんじゃな木偶の坊」

「言うではないか、行くぞ!」


オティレさんと大将の戦いが始まりました、他の場所では既に勝利を収めているようで、みんなこの戦いを見ています。


「なかなか見どころがあるわん、手に汗握るわん」

「そうウサね、でもペルーロなら瞬殺ウサ」


観戦しているとペルーロとミサーラがイチャイチャし始めたわ、オティレさんはPTで戦っているわけではなくタイマンなの、それに砦戦自体は既に勝負が決まっているから安心してるのね。


「こういった時に不意打ちってしないわよね、私は警戒するけど」


お約束的な物を私は警戒しました、でも騎士の名乗りをしてから戦うとか、1対1にちゃちゃを入れるなとか、美徳で済んでる内は平気なのよ、問題は作戦が複雑になるとそう言った考えはまず通用しないわ、それを受けた時の打撃は相当よ。


「まぁ最初は私かもだけど・・・どうやら終わりそうね」


斧同士の戦いは一撃が重いので短期戦です、2人は息を切らせ最後はオティレさんの斧が相手の腹に命中よ、もう少し背丈があったらオティレさんの頭は潰されていたかもってくらいギリギリでしたね。


「まぁそれも考慮した間合いだとは思うけど、強さが拮抗していると少しの差で変わるわよね」


そう言った戦いはカッコいいんだけど、私は勝算を考えてしまうのよ、確実に勝てると思えるように作戦を立てるわ。


「ど、どうして終わっていますのよ!?」


私たちが勝どきを上げると、空からビクトールたちが丁度降りてきました、しっかりと戦闘服を着てるので着替えたんですね。


「着替えないで、あのままくれば間に合ったのに、あれでも戦えるわよ」


白いドレスをなびかせて闘う姿を想像して、なかなか良いわねって思っていると、ビクトールたちが引いていました。

作戦としても良いと思うのよ、二つ名が付きそうじゃない。


「つ、次は絶対わたくしも戦いますからね、良いですねラリーファ!」

「仕方ないわねビクトール、次は頼むわね」


私は次があればねぇって思いながら返事をしたわ、この後はしばらく戦いはないと思ってるわ、もう一つの中規模国、ジブラーン国がどう出るかだけど、攻めてくることはしないわよね普通。


「まぁそうなる前にって考えも出てくるかもね」


その時はビクトールたちの出番よって事で、私は準備していた魔導機関車のレールを砦間に敷き始めたの、もちろん全自動シールドロボたちがやってくれるわ。
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