上 下
68 / 102
幸せのフォースステップ

68歩目 知らなかった敵の情勢

しおりを挟む
「あそこに行くのサモン?」

「そうですよユニ様、あそこで馬車を引く馬を買って進むつもりです」


サモンに肩車をしてもらいニット帽をかぶったユニが村を指差しています、本当はサモンが門番と交渉するのでウモンと変わってもらう予定でした、でもウモンは村の門番を警戒していた為、顔が凄く怖いとユニが嫌がってしまい今も肩車をしています、隣でユニに嫌われたとウモンはショックを受けてしょげています、サモンは見て見ぬふりをして門に向かって手を振ります。


「ようこそ旅の方々」


門番が笑顔でサモンたちを歓迎しました、身分証も見せてないのに通してくれます、サモンとウモンだけならば警戒したかもしれません、ウモンは睨みサモンは緊張した笑顔で手を振っていますからね、でもユニはすごく良い笑顔で門番に手を振っていたので警戒心が無くなっていたんです、サモンたちは心の中で『やった』と思いながら門を通りました。


「そうだ!ちょっと待ってくれ君たち」


3人が通った後、門番に後ろから止められサモンとウモンはひやっとします、何ですかと振り向きぎこちない笑顔です。


「ちょっと注意しておこうと思ってな、ここはインターって人種の村なんだ、他種族にはあまり対応が良くない人もいる、あまり騒ぎは起こさない方がいいぞ」

「そ、そうですか、助言有難うございます」


サモンが頭を下げてお礼を言います、ユニが落ちそうになってウモンが支えているのを見て、門番は少し笑っていました、何とか落ちずに済み3人で手を振り村に入って行きます。


「ごめんなさいユニ様、ちょっと焦ってしまって」


ある程度村に入ると、ユニにサモンが謝ります、ユニはプンプン怒ってサモンの頭を叩きます。


「もうっ!落ちたら痛いんだよサモン、気を付けてよね」

「はい、ごめんなさいユニ様」


サモンは怒られながらしょんぼりと歩きます、ウモンはここぞとばかりにユニを撫で機嫌を直してもらうように努めました、それから少し歩いているとふたりはある事に気付きました。


「そう言えば、アタシたちも気を付けないといけないぞサモン、ユニ様に【様】を付けていると面倒が起きるかもだ」

「確かにそうだねウモン、旅人で【様】なんて付けてるのは位の高い人だもんね、ユニ様がお嬢さまって事になって狙われるかもだ、ユニ様それでよろしいですか?」

「ユニはぜんぜん気にしないよ、というかね、ユニは前からずっと言ってたじゃん!他の人がいない時はそうしてって、ふたりがそれを嫌がってたんでしょ!」


サモンとウモンは『そうだっけ?』と顔を見合っています、ユニは「そうだよ」とサモンの頭を叩きます。


「まぁそう言う事なら・・・ユニ、頭を叩くのは止めて」

「は~い」


サモンは直ぐにやめてくれたユニを見て『これは使えるかも』と思いました、そしてウモンが周りを見回して本題に入ります。


「それで、馬を買うのにちょっと大きめの村を選んだのは分かるんだが、ちょっとここは大きすぎじゃないかサモン」

「仕方ないんだよウモン、馬はともかく、冒険者ギルドはこれくらいじゃないと村には無いんだ、オレたちの場合、鑑定水晶を使われたら一発だよ、街には身分証が無いと入る時それを使われちゃう、だからある程度の村で水晶を使わないで入れて、更にギルドのある村となるとこのくらいになっちゃうんだよ」


ウモンがそれを聞き、それでも大きすぎると思っています、人種以外も他の種族が沢山いて、目くらましには丁度良いと了承はしました、でもほとんど街と言っていいほどの規模です、悪い事を考える人はそれだけたくさんいるとウモンは警戒します。


「さてと、ギルドの登録は無事に済んだけど、馬はちょっと高いね」


ウモンの警戒も空振りに終わりつつ、何事もなくギルド登録が出来ました、早速馬を売っている商人の店に行ったんです、でも値段を見てガッカリした感じに3人は出てきます、冒険者ギルドでお金を手に入れる為、自分たちの脱皮を素材として売ったんです、でも全然足りなかったから落ち込んです。


「アタシの皮が10万メローって安くないか?」


ウモンが不満を言って怒っています、サモンが旅をしているので状態が悪くなっているからと、フォローを入れました。


「そうだよなサモン・・・くそっ!城に戻ればもっと状態の良いのがあるのに、何だか汚された気分だよちくしょう!」

「考えすぎたらダメだよウモン、馬が1頭5万メローするから、2頭と馬車を買うと27万メロー必要だ、オレの皮も合わせて20万メローで少し足りない、オレとウモンで外のモンスターを倒して金を稼ごう、その内またオレたちの皮が剝がれるから、稼いでたお金を足して旅に出発できる」


宿を取ったりしながら村を歩き今後の計画を話します、でも露店を見て聞いているウモンとユニの返事が変だったのでサモンは二人を見ます、ふたりの目線の先には露店が沢山立ち並び、とても良い匂いと変わった物が沢山見えました、ふたりはそれにつられているんです。


「なんだか、しばらく見ない内にこちらの大陸は随分豊かになったんだな、これなんかすごく旨そうだぞ」


ウモンがブドウを持ち上げて舌をシュルっとだしました、ユニも食べたそうにした為、サモンが店の店員に値段を聞きます、その値段の高さにびっくりしながらも払いました。


「2フサで1000メローもしたよ、二人とも節約しないと先に進むのがどんどん遅れるからね、もう買い物は」


サモンがそう言っている間にも、二人は他の露店に走っています、サモンはガックリして諦めムードです、自分に今日だけだと言い聞かせた、明日からは絶対に止めると意気込みます。


「何これ?おもちゃなの」


ある程度露店を回った所で、ユニが一つの店に飾ってある、手の平サイズの丸い品物に興味を持ちました、露店の看板には武器屋となっています。


「ユニ、それは武器だから危ないよ」

「だがサモン、こんな武器見た事ないぞ、どうやって使うんだ?」


ウモンも品物を持って首を傾げます、サモンも同じなので店員に使い方を聞きました。


「これはヨーヨーと言いまして、ある人が作った武器です、こうやってリングを手首にはめます、するとそっちの丸い方に魔力の糸が伸びて自在に操る事が出来ます」


店員が器用にヨーヨーを回し始め、ユニがそれを嬉しそうに見始めました、更に店員が連続でクルクルと回したり、魔力糸を三角にしてその間にヨーヨーを通したりと、華麗な技を見せてくれたのでウモンも興味津々です。


「難易度の高い技をした後は標的にぶつけますとすごい破壊力ですよ、もちろん回しているだけでも強力です、何せこのヨーヨーは魔法鉄で作れらていますからね」


店員が説明をしながら標的にしていたお皿を粉砕させました、他のお客さんも歓声を上げ、ユニはもう欲しくて仕方ないようです、サモンの服を引っ張りねだっています。


「こちらのけん玉も同じ感じで、小・中・大のお皿と突起に玉を刺すと威力が上がります、どれも2000メローですよ」

「いや、ちょっと高いかな、ふたつで2000メローにならないかな?」


サモンが渋っていると、ユニと一緒にウモンも目を潤ませてきます、それでも何とか断ろうとサモンは必死です、その雰囲気を感じた店員がもう一押しだとある物を出しました、それを見てサモンの目が変わります。


「今なら技の種類を記載した書物もお付けしますよ、本来ならこれだけで4000メローもする貴重な書物です、ですがそちらのお嬢さん方の悲しい顔は見ていられません、全部で4000メローでどうですか?」

「買った!?」


サモンは本を店員から奪ってお金を渡します、店員は驚いていますがサモンの顔は本に夢中でした。


「サモンは書物に目がないからな、それがタダとか言われたら」

「そうだねウモン、でもユニも買って貰えたから嬉しいよ」


ウモンに肩車をしてもらいながらヨーヨーを操ってユニが遊んでいます、ウモンはけん玉を片手で使い、皿に乗せたりと軽快に操って楽しそうです、二人は書物に載っている技をホントは試したいと思っています、でも今はサモンが夢中で読んでいるので無理だと、少しがっかりです。


「は~い!お待ちどうさま、焼いたサツマイモに黒パン、それと猛牛の肉団子にポトフだよ」


昼食は露店を回って軽めにしていた3人ですが、夕食をしっかり取る為に早めに食事屋に入りました、混んでいる時間に入ると門番の忠告に出くわす可能性があると、本を読みながらサモンが注意したからです。


「すごくおいしそう!」

「そうですねユニ、アタシもこんなに肉が入っているとは思わなかった、やっぱりこちら側は豊かになったのかもしれないな」


ふたりがそう話していますがサモンは本に夢中です、ウモンが本を取り上げ食事中だと注意しやっと食事を見ます、遅れて驚いているサモンを後にして、ウモンとユニが一口食べて味に驚きました。


「美味し~い!」

「ユニ、あまり大声を出してはダメよ、ほら口を拭いて」


ウモンがユニの世話をしていると、サモンが立ち上がって驚きます、そして近くの店員を呼び止めました。


「どうかしましたかお客様?」

「すみません、オレたち最近ここに来たのですけど、これってほんとに500メローですよね?他のお客さんと間違ってませんか?」


サモンの心配そうな顔を見て店員の女性は笑っていました、そしてサモンたちに向かって笑顔になり間違ってないと伝えてくれます。


「ほ、ホントですか?後になって間違ってたとか言われても困りますよ」

「平気だってばお兄さん、これは最近流通が多くなった食料なんだ、しかも保存期間も長いんだよ、だから安く手に入るからその値段なのさ、しかも栄養があっておいしい!」

「そ、そうでしたか、ありがとうございます」


サモンがお礼を言うと店員が手を伸ばしてきます、サモンはちゃっかりしているなと、穴あき銅貨を1枚店員の手に置きました、笑顔の店員を見送った後、椅子に座り直してウモンを見ます。


「ウモン、これはまずいんじゃないかな」

「そうだなサモン、新しい食料に強い武器、こちらはかなり変わっているようだ、アタシたちはもっと敵を知らないといけないかも知れない、帰ったら魔王様に報告だ」


ひそひそとそんな話をして食事を取ります、料理の美味しさは素晴らしかっと喜びは隠せません、でも3人は部屋についてまた驚いたんです。


「フワフワフカフカだー!」


ユニがベッドに飛び込んで布団にスリスリし始めます、サモンとウモンは布団を触って確かめていました。


「こんな質の良い布団を普通の宿で・・・ほんとにどうなってるの?」

「考えるのはお前の仕事だぞサモン、それよりもアタシは先に休む、これなら疲れが取れそうだしな」


サモンが唸っている間に、ウモンは布団に入って寝る準備を始めます、ズルいとサモンが叫びますが既に吐息が聞こえ出し、そんなに気持ちいいのかとサモンはガックリしてしまいます、ユニもいつの間にか寝息を立てている様です。


「流通がしっかりとしている?でも生産が出来ていないとそれも意味がない・・・もしかして両方がしっかりしている、いや流石にそれは・・・」


ブツブツと考え込みながら交代の時間まで見張りを続けます、結局情報が足りなくて答えが出る事はありませんでした。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

ダンジョンマスターのお品書き、スライム産業から始める女神反抗作戦、みんなで一緒にいただきます!

まったりー
ファンタジー
スライムの核はジャガイモだった。 異世界に飛ばされた家庭科教師の主人公は、飛ばされた先のダンジョンでそれに気付き、スライムの核は野菜になるのではと量産する事を決めます。 それは女神に反抗する唯一の方法でした、突然異世界に飛ばされ大変な運命を背負ってしまった生徒たちを救う為、そして何より女神の野望を砕く唯一の抵抗だったからです。 女神は言いました、自分を崇め願う為に世界はあり、自分を崇拝する為の【物】だから、どんな事に使おうと勝手だと、主人公は女神に願わない世界にしようと奮闘する。そんな物語です。

異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

晴樹
ファンタジー
南結城は高校の入学初日に、クラスメイトと共に突然異世界に召喚される。 異世界では自分たちの事を勇者と呼んだ。 勇者としてクラスの仲間たちと共にチームを組んで生活することになるのだが、クラスの連中は元の世界ではあり得なかった、魔法や超能力を使用できる特殊な力を持っていた。 しかし、結城の体は何の変化もなく…一人なにも与えられていなかった。 結城は普通の人間のまま、元の界帰るために奮起し、生きていく。

異世界チートはお手の物

スライド
ファンタジー
 16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...