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1章 開店

10杯目 ご家族のお誘い

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メンヤさんのダンジョンから集落に帰る道すがら、アタシは賛成してくれる仲間を増やそうと考えていたわ。
それと言うのも、食料確保と言うアタシたちの問題が解決出来るからだったの。


「しかしニーチェ、族長たちの説得は大変だぞ」
「シャードだって反対だったけど、今は違うでしょ?」
「それはそうだが、土産の品だけでは無理だぞ」


シャードが言う様に、食べ物だけを見せてもダンジョンが危険な存在である事は子供でも知ってる常識なので、これ以上の進展はありません。
でも、メンヤさんがダンジョンマスターなら危険はありませんし、更なる友好関係を築ければ集落は安泰なんです。


「その為にも、まずはニャートとケイミュの親を説得ね」
「ニートとトトルは簡単だろうが、ケイミュの方は無理だろう」
「堅物のケニーとミュミュだものね」


ふたりはとても慎重で、族長よりも難しいかもしれないからシャードと唸って悩んでしまったわ。
それでも、2人の家族が賛成してくれれば、族長も意見を変える気になるかもしれず、メンヤさんに会う所まで持って行けば達成できるんです。


「明日の朝、説得に行くわよシャード」
「随分乗り気だが、そんなに必要か?」


食事が貰えるから良いだろうとかシャードが言って来るけど、これは他の種族にも広げるチャンスなの。
森を豊かにして、アタシたちの暮らしを豊かにする唯一の方法と、シャードに強めにお話したわ。


「そ、そうなのかニーチェ」
「シャード、彼の養殖の知識を聞いて分からなかったの?」
「わ、分からん」


信じられなかったけど、アタシはあの会話だけで十分理解したわ。
まだまだ知識を持ってる彼に知恵を借りれば、アタシ達の森は豊かになり国にも認められるようになる、シャードは信じてないけど、メンヤさんの話はそれだけ凄い事だったのよ


「養殖の話をしただけだろう」
「分からないのシャード、養殖の方法は沢山の問題が考えられるけど、メンヤさんはそれを全て聞いて来たのよ」
「それはそうだろう」
「バカねっ!思いついたのと知ってるのは違うのよ」


既に成功するのが決まっているのなら、それは即戦力になり魅力的に感じるの。
数年の実験などが必要なだけでなく、それまでの間の食料提供まで約束される、こんな好条件普通はあり得ません。


「しかも、それ以外にも色々知ってるのよ、友好関係を築いて損なんて無いわ」
「た、確かに」
「だから、明日は絶対に3家族で行くの、これは絶対よ」


その為にも、アタシたちは夜の内に集落を周り、メンヤさんから頂いたお土産を配りました。
その際にニャートの親には、明日の昼にダンジョンに行く約束を交わし、予想通りケイミュの方は返事を貰えなかったわ。


「どうしてもダメかしら?」
「ダメに決まってるだろうニーチェ、ケイミュだって本当はいかせたくないんだ」
「でも、何度も行って戻って来てるじゃない」
「ダメと言ったらダメだ」


ケニーが家の中に入って行ってしまい、アタシたちは一度家に戻ったの。
次の日の朝、アタシとシャードでもう一度説得に向かったけど、ダメと即答されたわ。


「ケニーよく考えて」
「しつこいなニーチェ、どうしてそんなに行きたがるんだ」
「それは簡単よ、美味しい食事がまだまだ沢山あるからよ」
「ふむ・・・本当に安全なのか?」


ちょっとは話しを聞く気になったようだけど、もう一押しが必要だから、メンヤさんには殺気が無かった事を伝えたの。
それだけでは抑えているだけと思うので、相手にはレイスがいた事を知らせて、かなりの脅威がいる事を伝えたわ。


「れれれ、レイスだと!?」
「ええ、森の民全員で戦っても勝てない相手よ、そのレイスが殺気を持っていなかったの」
「なるほどな・・・しかし、今だけと言う可能性もあるだろう」
「そんな事は無いわ、だって今の時点でレイスがいれば全滅させられるのよケニー」


その必要が無いと教えると、やっと納得してくれて、昼に行くことが決まったわ。
ミュミュにも言っておくと約束してくれて、そこでアタシはもう一つの提案を伝える事にしたの。


「族長の説得か」
「そうよケニー」
「なかなか難しいだろう」
「そうね、でも不可能じゃないわ」


食料だけでもそうだけど、その食料が他の種族に分ける事が出来れば、アタシたちの森での地位が上がり、将来は国に認められるかもなんです。
それを聞いて納得するわけもなく、飛躍し過ぎと注意されたの。


「今はそれで良いわ、まずは昼に行って見てからよ」
「随分な自信だなニーチェ」
「それだけの力を感じたのよケニー」


シャードはそうでもないみたいだけど、彼の言葉はそれだけの説得力があり、最近疑問に感じていた事全てを解決してくれたのよ。
どうして獲物が減ったのか、毎日悩んでいたアタシだから分かる事で、言われて見れば納得だけど、そこには到達しなかったからこそだったわ。


「だからね、会えば分かると思うのよケニー」
「そこまで言うなら、そのメンヤと言うダンジョンマスターをミュミュと一緒に見定めよう」
「それで良いわ、きっとふたりが思っている事も、彼なら解決してくれるわ」


彼が外に出る事が出来れば、族長と会って全て解決ですけど、こちらから出向かなければいけないので、アタシ達が頑張るしかないの。
娘が見つけた奇跡の様な出会いを無駄にしない為、アタシ達には責任があります。


「じゃあ、昼に入り口で集合だな」
「ええ、よろしくねケニー」


ケニーと別れて、アタシとシャードは、疲れがどっと出て自宅でグッタリです。


「疲れたなニーチェ」
「ええ、でも良かったわ」


食料が取れなくなった原因を即答して来たメンヤさんの知識は必要、ケニーとミュミュならそれが直ぐに分かるはずなの。
そうなれば次は族長の説得で、その日の夜には動くことが出来ます。


「きっと行けるわ」
「そう言うがなニーチェ、相手はレイスだぞ」
「そうだけど、あれは良いレイスだと感じるでしょシャード」
「まぁな」


あんなに穏やかな顔のレイスなんて聞いた事が無く、伝承や噂ではとても怖い顔と言われていました。
でも、昨晩会ったレイスのオーロラさんは、とても綺麗で笑顔が素敵でした。


「きっと、主であるメンヤさんのおかげなのよ、食事を食べて笑顔が素敵だったでしょ」
「まぁ食事が美味かったからな」
「あの食事を食べて、ムッとした顔なんてしていられないわ」


誰でも和んでしまうと、シャードの最初の態度を指摘したわ。
悪かったとは思っているけど、ニャースラは渡さないとか親ばかを出してきたの。


「将来誰かと番になるのに、この分だと嫌われるわよ」
「そ、そんな事はない、オレを倒せない男が悪い」


そんな事を言ってるからダメなのよっと、ため息が出てしまったけど、その時はアタシも覚悟しなくてはいけないの。
娘はお転婆だけど幸せになって欲しいし、食料事情が解決するのなら、次の子供も考えなくてはいけないわ。


「時間まで、養殖が出来そうな場所を見ておきましょ」
「そうだな、色々話せるようにしておくか」


シャードの手を取り、アタシたちは集落を回って場所の選定をしたの。
場所を記憶してメンヤさんに話せるようにしたのだけど、何処まで出来るのか心配だったわ。
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