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2章 コスで冒険

40話 こんなのでも好き

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「美味い!?ここは王都1だな」


メニューに載ってないピザを食べ、アタシもみんなもすごくご満悦よ、イーザスと同じ意見なのは不本意だけど、ほんとに美味しかった、イーザスは王都1とか言ってるけど、世界1かもしれないわ、ここに連れてきてくれたアースロにお礼を言わないとね。
酒盛りも終盤になりお礼は伝えたわ、でもその時アースロがまだ伝えてないんですねっとかぼそっと言ってきたの、大きなお世話よ。


「それが出来ないから今のままなのよ」


イーザスは胸の大きな女性が好きなの、アタシは大きな方だけどギリギリ入らないらしいわ、それを聞いた時殴ってやったけど、それも言えない理由ね、今更言えないわ。
ピザを突いて店員にちょっかいを掛けてるイーザスを睨んだの、何処の街に行っても一晩限りの女性を抱くわ、固定した人を作りなさいって言ってるんだけど、見つからないって愚痴ってくる、それがとうとう見つかったかもしれない。
そんな出来事があったらこの酒場に確認に来たわ、顔に出さないけどイーザスはすごく落ち込んでる、アタシはがっかりしたような、ホッとした感じを覚えたわ、イーザスあの救ってくれた女性が好きなのよ。


「大変なんですねファンシャさん」

「そうなのよ、こいつのせいでね」


問題の店員エリナさんがワインを注いでくれたわ、反射的に返事をしたけど、耳打ちで手綱をしっかりつかんでくださいって言ってきたわ、アタシ言われるとは思ってなくてドキッとして見たちゃった、エリナさんは頑張ってとか口を動かすだけでウインクしたわ、聞かれたから焦ってテーブルを離れるエリナさんの腕を掴んで止めたわ。


「き、聞いたのよね、話さないでお願い」

「分かってますよファンシャさん誰にも言いません・・・でも、見てれば分かると思いますよ、頑張ってくださいね」


PT内では女性陣は知ってるわ、でもそれ以外は知らない事実よ、出来れば告白したけどそれが出来れば苦労はない、そう思って店を出たわ、イーザスが予想通りあの子たちの話をし始めたわ。
みんなも酔ってるから普通に返してるけど、女性陣はアタシに注意するように目線を送って来ます、もう少し待ってね。


「さすが王都だな、何処を見ても美人が多い、あの酒場はその中でも美人ぞろいだったなぁ~もう少しボリュームがあれば満点だった」


アタシは後ろで聞いててため息が出ます、リーダーの女好きはほんとに困ってるの、誰かひとりに絞れないのかいつも言ってるの、自分で言っててかなり苦しくなるけど、イーザスはそんな事お構いなく沢山の花をめでたいとか言ってきたわ。
今も仲間の男たちとそんな事を話してる、この後遊びに行く勢いよ、女性陣はジト目でそれを見送ったわ、サイテーとか言ってね。


「良いんですかファンシャさん、男どもを放置して」

「息抜きも必要でしょサースラ、それが嫌なら相手をしてあげなさい、イルグが好きなんでしょ?」


真っ赤な顔をしてアタシの弟子のサースラが焦ります、でもみんな知ってる事よ、好きな人が出来たとか誰が好きとか、そう言ったお話は尽きないわ、夜に集まって話すのが楽しみでもあるのよ。
その内取られちゃうわよっと忠告しました、まるで自分に言ってる様ですけど、ほんとに心配よ、そして男たちが遊んでる間、アタシたちも宿屋でその話題でお喋りをしたの。


「じゃあみんなで綺麗になりましょうよファンシャさん、お祭りの間は化粧品も新しいのが出るし、お金もあります」

「そうねサースラ、あなた達は可愛いから、綺麗になればきっと男たちは振り向くわ、アタシとは違うもの」


イーザスにアタシは振られてるの、胸が足りないってハッキリ言われた、嫌いとは言われてないけど、言われたも同然よ、みんなはそんな事ないって言ってくれる、だけど17歳のアタシは成長期は終わったわ、もうこれ以上は成長しない、彼の好みにはなれないのよ。
お祭りで何かあるかも、みんながそう励ましてくれます、あまり期待しないで次の朝からみんなと化粧品のお店に入りました、望みは薄いけどやっぱりアタシ諦めたくない。


「っと思ってるんだけど・・・さすがに胸を大きくする化粧品なんて無いわね~」


それはそうよねっとガッカリしながら商品を見ます、顔や肌に塗って綺麗に見せる商品ばかり、どれもダメです、みんなは楽しそうだけど、アタシだけ外側にいる気分で暗くなるばかりよ。
やっぱり胸は大きくならない、もうダメかも、そう思っていたらアタシの肩に誰かが手を置きました。
アタシに気付かれずに後ろを取るなんて何者よ!?隠し持っていた短剣に手を掛け、後ろを振り向くとエリナさんがいたのよ。


「おはようございますファンシャさん」

「お、おはようエリナさん・・・こんな所で奇遇ね」


武器から手を放し、胸の事が声に出てたらどうしようと焦ります、クランのみんなしか知らない事よ、関係の無い子にまで知られたら、アタシ恥ずかしくて死んじゃうわ。
そわそわしていると、エリナさんが化粧品の話をし始めたわ、ここで生活してる子だからよく知ってて感心したの、どうやら胸の事は聞こえてなかったようでホッとしました。


「この口紅は最近出たばかりなんですよ、ファンシャさんにきっと似合います」

「ありがとうエリナさん、じゃあ買おうかしら」


あまり乗り気じゃないアタシを気遣って、エリナさんが商品を勧めてくれます、肌を白く見せるクリームに唇の潤老いを含ませ綺麗に見せる物、ほんとに色々教えてくれたの。
もしかしたら彼女ならっと、アタシはちょっとだけ勇気と期待を持って聞いてみる事にしたわ、もちろん胸とは直には言わないわ、あくまでも容姿の見栄えを良くする方法ね、胸とは絶対に言わないわよ。


「容姿ですか?」

「そうなの、アタシ背が高いじゃない、だから低く見せる方法とか、おしりを引っ込ませるとか・・・むむ、胸を大きく見せたりとか出来ないかしら?」


本題を最後に聞いたの、背やお尻なんてどうだっていいわ、胸さえ大きく見せる事で出来れば何とかなるの、エリナさんはすごく悩んでくれます、悩むと言う事はあるかもしれないってすごく期待したわ。
そして彼女は「背を低くする事は出来ませんが、姿勢を変える事で低く見せる事が出来ます」っと言ったのよ、そっちじゃない!って突っ込みたいけど、取り敢えず相槌を打っておきます、そして本題の方はどうなのかと、他には?って聞いちゃったわ。


「ああ胸ですか・・・沢山あってどれにしようか迷いますね」

「そうよねぇ~・・・え!?」


驚き過ぎて変な相槌をうってしまったわ、沢山あるってエリナさんは答えたの、背よりも簡単って事なの?そう思って聞いたら頷いたわよ、ビックリよ。
どうやって、アタシが我を忘れてエリナさんを揺すったのは仕方ない事です、だって今までどこで聞いてもそんな事は出来なかったわ、それなのに彼女は沢山あるって言ったの、アタシは落ち着くまで揺すってしまい謝る事になってしまいました。


「ほんとにごめんね、我を忘れてしまったわ」

「良いんですよ、それだけコンプレックスだったんでしょ、分かりますよその気持ち、僕も背が低いのがちょっと」


テヘッと可愛く自分の悩みを教えてくれたわ、可愛い子だと素直に思いました、ボソッと可愛いと言ったのは仕方ないわ、エリナさんはそれを聞いてもニッコリするだけです、アタシはまたやっちゃったと真っ赤になって顔を隠します、恥ずかしいなんてもんじゃないわ。


「教えてくれるかしら?どうしたらいいの」

「形を整える・下着を変える・服でごまかす・かさましをする、大体こんな対策があります、どれが良いですか?」


そんなに沢山あるの!?アタシはすごくビックリです、でもエリナさんは本気です、だから教えてもらったのイーザスを騙さない方法をね。
そしてアタシは、お店の端っこでエリナさんに胸を触られてます、それが必要なのは分かるわ、でも聞いても話てくれないのよ、ただ寄せたり上げたり色々されちゃったわ。


「アタシ、もうお嫁に行けないかも」

「言い過ぎですよファンシャさん、これは形を整える為に必要な事です、普通の服や下着を着てるならこんなに崩れなかったんですよ、ファンシャさん、冒険者でも下着は考えましょう布を胸に巻くだけじゃダメです、その上に鎧を着たら胸の形が崩れるのは当たり前です」


ぎゅっと潰れた胸を治すマッサージをしただけ、そう言って服の上から整えましたと言われたわ、本来は裸で治した方が良いから、次からは仲間にやってもらってくださいとか真顔で言われました、胸だけを鏡で見せてもらったけど、胸がいつもより大きくなってる気がする。
いえ確かに大きくなってる!?これがマッサージの影響なんだと納得したわ、自分で胸を触って確かめたけど、ほんとに大きくなってるの。


「これならイーザスも見てくれるかな?」

「きっと平気ですよファンシャさん、念の為にこれも着けて見ましょうか」


変わった形の胸の形をした下着をくれたわ、それはすごく良い布で作られてたの、触り心地も良いし来たらきっとフワフワよ、ここで着るには服を脱がないといけないから、買い物の後にします。
でもそれはエリナさんには通じませんでした、みんなと服屋さんに直行し試着室で着けられました、今度は全部をエリナさんに見られてしまい、お嫁にほんとに行けないわよ。


「うぅ~ひどいわエリナさん、仲間にだってここまで見せた事ないのよアタシ」

「これには着け方もあるし、マッサージも教えなくちゃです、だから諦めてくださいファンシャさん、ほら付けたら寄せて上げて整えてください、位置がずれて付けたらまた崩れます、これも覚えて仲間の人にやってもらってくださいね」


ブラジャーという下着を着けて、確かにさっきよりも大きく見えました、アタシは嬉しかったけど同時に失った物も大きかったように思えます。
それでも願いは叶った、そう思ったアタシはイーザスに聞きに行ったわ、もちろん告白をしに行ったわけじゃない、今後の予定を決めつつ質問をしようとしたの。


「ど、どうしたんだファンシャ、いつもとその・・・違い過ぎないか?」


部屋に来て直ぐにアタシの胸に目線が向いたのが分かった、ひと目で分かるのは良いけど、いつもそんなに見てるのか!っと普通は怒るんでしょうけど、アタシはそれでも嬉しかった、今まで興味を持ってないと思っていたけど違ったの。
そう思ったら、アタシは気持ちを抑えられなくなってイーザスに抱き着いてしまったわ、そして好きだって伝えたの。


「オレも好きだった・・・ほんとはな、俺胸とかどうでも良かったんだ、お前の気持ちから逃げていたんだよ」


イーザスは言ったのよ、アタシを妹みたいに育てていたって、だから惹かれる思いを封じ込めていたの、それを抑える為に他の女性と遊んでいたの、アタシから逃げていたんです。
貴族には血を濃くする為に家族で結婚する人もいるわ、だから血のつながりのないアタシたちは、そんなに気にする必要はない、アタシはイーザスに口づけをしたわ、そしてもう一度言ったのよ。


「アタシはあなたが好き、それじゃダメかな?」

「ダメなわけないだろ、オレも好きだ!愛してるよファンシャ」


イーザスからの口づけを受け、アタシの願いが叶ったわ、結局胸は関係なかったけど、そのやり方が合ってて良かったわ、エリナさんに次会ったらお礼を言わないといけないわ。
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