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1章 コスで生活

22話 強欲商人

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「ここがヒューマンの街か・・・窮屈そうだ」


エルフの国は森の中に街を作る、それを自慢げにシャシャがアタシに話してくるんだ、だからアタシは言ってやった、アタシを間に入れないでリュウに言えってな、だがどうしてかふたりはアタシを挟んで言ってくるんだ。
リュウはアタシの隣にいるからそんなことしなくても聞こえる距離だ、アタシの訴えは真ん中に入れるなっだ!何度二人に言っても直してくれない、シャシャが話したいのはアタシじゃなくリュウなんだ、だからアタシは位置を変えようと歩くのを早めたりする、でもふたりは息が合ったようにそれに合わせて移動してくるんだ、止まってもふたりは一緒に立ち止まる、そんな時だけ息を合わせやがって、いい加減にしてほしいよ。


「ここにお前たちの依頼者がいるのか、随分趣味が悪いな」


普通の木造店なのに文句を言ってきた、だからアタシを間に挟むなとリュウを睨んだ、だがリュウもシャシャも気にしていないよ、これでリュウがいなくなったらどうなるのか不安しかない。
やれやれって感じでアレーンが店に入ると、依頼者が近づいて来た、ちょっと太目の男性商人だ、アレーンがギルドカードを見せると、ちょっと顔色を変えた、そしてジャッカルとアタシが荷物を降ろすと、報酬を下げるとか言ってきたんだ、アレーンがどうしてだって言い返し始めたよ。


「決まってるでしょう、扱いが雑だからです、これだから低ランクの冒険者は嫌なんです」


言いがかりなのは分かる、アタシもジャッカルもそれほど乱暴に降ろしていない、低ランクの冒険者と分かり足元を見ているんだ、イラっとするよ。
アレーンが低ランクの依頼書にしたのはそっちだって頑張ってる、箱の中に入ってる商品は壊れてないと言い返したんだ、だけど商人は壊れてないからそれだけで済んだとか言ってきた、壊れてたら弁償してもらう所だったと更に言いはなつたんだ。
アレーンは壊れてないなら、報酬を引かれる筋合いはないって反論したけど、依頼者であるそいつは引かなかった、これ以上文句を言ったら、ギルドに報告するとか最後通告までしてきた、アレーンが悔しそうだよ。


「もういいよアレーン、とにかく成功したんだ、承認をしてもらおう」

「だ、だけどリュウ」


リュウには何か考えがるようだ、アレーンがそれを察知し、商人から完了の印として親指をカードに押し付けてもらった。
そして馬車を返して街を歩き、リュウの作戦を聞く体制だ、シャシャがあの商人の悪口を言ってるが、それには賛成したよ。


「それでリュウ、どんな作戦があるんだよ、正直搬送の依頼はかなり報酬が良いんだぞ、あいつ3割も引いて来た」


このクエストは銀貨3枚になる、日数は往復で10日だから少ないと思うかもだが、他の事も出来るから報酬は倍くらいと考えた方が良い、帰る時また他のクエストを受ければ儲けはまた増えるんだ、だけど3割も引かれたら食料や装備の手入れを入れたら片道分は赤字だ。
それを伝えたら、リュウは良い勉強だって言ってきたんだ、そしてリュウのして来たことを思い返すように言われた、アタシたちが休憩してる間、リュウは採取をしていた、それがここで実を結ぶんだそうだ。


「なるほど、森の恵みを金とするわけだな、森は素晴らしいからな、はっはっは」


シャシャが珍しく嬉しそうだよ、リュウは森以外でもモンスターを倒したりしていたらしい、そして最後に見せたのは、あの商人の箱に入っていた小さな小箱だ、フタの裏に小さな鏡が付いている。
まさか盗んだのかとみんなで焦った、だけどどうやら違うらしい、リュウの持ってる箱は商品をマネて自作していたんだ。
依頼品をマネるなんてダメだろうっとジャッカルは言ったけど、そもそも依頼書にはそんな事は書いてなかった、そしてそう言った品物を運ぶ場合、追加料金が発生する、つまりそれが記載されてなく、低ランクの冒険者に依頼したのだから、それほど重要な商品じゃないって事になるんだ。
それを全部リュウが説明しジャッカルは納得した、だからこそアレーンは報酬を満額貰っていいはずだと思っていたんだ、だけど結果は貰えなかった、そこでリュウは商人が失敗したと言ってきたよ。


「運んでくれた冒険者は、もう二度とあの商人からの依頼は受けない、アレーンたちが高ランクになって行ったらどうなる?ズシズシ重くなってくるだろ、あの商人をきっと悔しがるはずさ・・・それにこれを見て」


何処も変わった事のない小箱だ、しいて言うなら箱の外部分だな、綺麗に彫られた模様が素敵だ、チラッと見たあの商人の箱とは少し違うかもと疑問を持った。
みんなは分からないみたいで、ちょっと高い置物程度にしか見てない様だな。


「普通の箱だろ?これの何がおかしいんだ」

「実はねジャッカル、この箱の外側の模様は僕の提案なんだ、元の箱には描かれてない、しかも中のガラスは付いてないんだよ」


売り込む為に新しい商品を作ったとリュウは言った、輸送の仕事の合間に作ったんだ、正直すごいと思ったよ、ほんとならあの商人に売りつけようと考えていたらしい、だが相手の態度を見て考えを変えたんだそうだ。


「他の商人に商談を持ち込むよ、これを出されたらあの箱を買う人はいなくなる、あの商人は大損だね」


リュウが怖い!?こんなに顔を隠しているのに片目だけが語っていた、みんなもそれを感じていた、シャシャはそこで振るえていたな、ビビってるアタシたちを置いて、リュウは更に驚きの事を提案してきた、なんとその報酬をアタシたちにも分けると言い出した。


「ま、まじかよ!?」

「イヤイヤダメだろジャッカル、リュウ!俺たちは臨時で組んでる仲だ、リュウが個人で作ってた物の報酬を分ける理由は無い」


アレーンが正解だ、個人の時間で得た物は分ける必要はない、そう言ったんだがリュウはPTに入った時の話を持ちだしてきた、リュウはアタシたちのPTに無理なお願いをして入った、それが無ければクエストは受けれず、この商品は生まれなかった、つまりPT全員の物という訳だ。


「リュウなら時間があれば出来ただろう、それが今だっただけだ」

「それが大切なんだよアレーン、タイミングを逃すと簡単には思いつかない、ひらめきってのはそんな物さ、これはみんなの物だよ」


リュウの事情はエリーヌさんに聞かされ知っている、だからアタシたちは信じられなかった、孤児院の為にお金が欲しいはずなんだ、自分の時間を使って作ったのだってその為だ、そんな大切な物の利益を分けようなんて、普通出来る事じゃない。
話しの内容が分からないシャシャは、アタシに事情を聞いて来た、リュウの事情を簡単に教えると、シャシャは体を震わせて泣きだした、同情しているのがすぐに分かったな、でもどうしてかアタシの手をぎゅっと握って来た、アタシじゃなくリュウなら分かるんだが、どうしてアタシなんだよ。


「すす、素晴らしい!!そなたたちに感動した」

「なな、何でアタシたちなんだ!リュウの方だろ」

「だから両方素晴らしいと言っているのだ、傲慢なヒューマンだと思っていた我は恥ずかしい!」


シャシャがPTに入れて誇らしいとか言い出した、それは良いから手を放してほしい、シャシャにそう伝えてるが聞いていない、アタシたちが互いを思い、譲り合っているのが心に響いたとか言って泣いている、確かにそうなんだが顔が近い、美形なんだからもう少し自重してほしいな。
アタシはシャシャを振りほどき、顔を押した、そして話を終わらせる為に「7:3で良いんじゃないか?」って提案したんだ、あまり下げ過ぎるとリュウは引かない、おかげで話は直ぐにまとまった、早速ギルドと宿屋に別れ、アタシたちは適当な宿を取って商業ギルドに向かったんだ。


「だから!どうしてアタシが登録者なんだリュウ!」


商業ギルドに着いて、どういう訳かアタシがギルド登録をする流れになった、リュウは名前が出るのを嫌い、シャシャは新参者だからと断って来た。
リュウは姉に内緒にしないといけないから分かる、しかしシャシャでも問題ない、だけどアタシは早々に諦めた、シャシャが登録するとは思えないし、さっきからアタシはシャシャの顔が見れないんだ。


「それでは、別室でお話を致しましょう」


職員に案内され、アタシたちは商品を提示した、職員のローファスドスさんにリュウが作り方を説明し、色々な工夫が施している事を話している、アタシには良く分からない。
話しの途中で分割して作れるとか、外側の模様は外せるとか色々言っていた、分解して作れるからリュウが作るのを見てなかったのかと納得したな。


「なるほど、しかしこの鏡は素晴らしい、どうやったらこれほど薄く出来るのですかな?」

「企業秘密ですよローファスドスさん、とにかく契約です、それと一つお願いがあります」


リュウが取り扱う商人を選ぶ時、サーンバ商会を使わない事を約束させた、その理由ももちろん説明したぞ、ローファスドスさんはそれを聞き、笑顔を絶やさなかった、どうやら商人の間でも嫌われてるようだ。
生産準備等も商業ギルドに任せ、アタシたちは契約をした、これから売り上げが毎月入って来るそうだよ、アタシたちが3でリュウには7割、リュウは全額孤児院のエリナ宛てに送るように言ってたな。


「リュウ、少しくらい手元に残しても良いんじゃないのか?」

「匿名のお金持ちが贔屓してくれてるって分かるようにしたいんだ、姉さんは目立つからね」


そこまで考えてるのかと、リュウの姉さんを見てみたくなった、PTを抜けたら最初に会いに行くかな。
そう思いながら合流予定地の酒場に向かった、余談だが、あの太った商人はこの後、店をたたむことになる、リュウの鏡付き宝石箱が話題になり、生産が進んで行くからだ。
アタシがそれを聞いた時、ざまぁないなとシャシャと笑い合ったんだ。
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