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第5章

第25話 お嬢様は強制送還される

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「私のそばに、いなかったくせに……」



せいいっぱいの強がりを見せる。
 
もうネオを、そばには置いておけない。

恋愛感情がなくても、あんな行為ができるネオなんか。



 
そばにいれば傷つくのは自分。

ネオを困らせてしまうのも自分。


 
だから、お願い…

もっと酷い言葉を口ずさんで。


 
 
あなたのことを…

キライにならせてよ…。


 
ネオは小さなため息をついた。

そして――…
 


 
「失礼いたします、シアお嬢様」

「ひ、ひやぁっ!」



突然、世界が反転した。


体は宙に浮き、同時にあたたかい手の感触。
唾液で濡れている 胸元を、隠すように、ネオのもとへと引き寄せられる。

 
ゆっくりと睫毛を動かすと、横抱きにされた体勢。

シアの小さな体は、ネオに抱きかかえられていた。
 
 


「な、ななな……っ」

「動かないでください。いくら私の腕力でも、暴れているお嬢様を抱えることは、困難ですから」
 


暗に、重いといわれている気分だ。

ぴくりと眉を動かしたが、ネオは素知らぬ顔でクライムに向き合った。
 


「お騒がせして申し訳ありません、クライム様」



シアを抱きかかえているため、軽く会釈で済ませる。

クライムは、ため息をつくと、前髪をかき上げた。



「埋め合わせは、今度してくれよ」

「えぇ、お茶会の埋め合わせでしたら、させていただきます。しかし、お戯れの埋め合わせでしたら、お約束いたしかねますので」

「おまえ――…ついに、本性をあらわしたか」

「さぁ、なんのことでしょうか」



ネオは、からかうように、くすくすと笑った。


「では、失礼いたします」


まっすぐ伸びた背筋を、ていねいに折り曲げて一礼。

その姿が様になっていて、思わず心臓が跳ねあがった。
 
 


「そうだ、シア」

「……?」

「今度はシャリマティーじゃなく、ジンジャーティーでも飲もう」

「…お茶会だけ、よ…?」

「そう警戒するな。――…それとも、期待してるのか?」

「なっ!! クライム兄様の、バカ!!」



顔を真っ赤にさせているシアをみて、クライムは笑顔を向けた。



「冗談だよ。怖い番犬が睨んでるから、僕も諦めるしかないかな…」

「クライム様ほどのかたであれば、素敵な女性が、たくさん殺到しますよ」


 
部屋を退出するときにクライムを見ると、小さく手をふっていた。

 
ネオの背から見ていたシアは、困ったような表情を向けた。


その顔を見たクライムも、困ったような表情を浮かべて、頑張れ、と口を動かした。
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