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第三章 クリミナティ調査編

第33話 騎士団長ライノルド

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色取り取りの鮮やかな花が咲く広い城内の中庭に一人の赤い鎧を着た男が佇む、後ろ姿だけでも十分に強い事が分かった。


「ライノルド、作戦会議を始めましょう」


シャリエルは丸い机にライノルドを手招きすると先に腰を下ろした。


「それは構わないが此方の黒い騎士は誰だ?」


アルセリスを指差して尋ねるライノルド、その言葉にシャリエルは気にしないでと返事した。


「気にするなと言われてもな……とにかく俺はライノルドだ」


「冒険者セリスです」


ライノルドが差し出した手を握る、その瞬間ライノルドはアルセリスをぶん投げようと力を込めた。


「っ!?」


力を込めてもその場からピクリとも動かないアルセリスを見てライノルドは驚いて居た。


「実力は充分ですか?」


アルセリスはライノルドの手を払うと椅子に座る、その言葉にライノルドは笑った。


「充分ってレベルじゃ無いさ!こんなに強い冒険者がシャリエル以外に居たとはな!」


そう言って大声で笑うライノルド、一連のアルセリスへ行った行動に対してライノルドを睨みつけるアルラを落ち着かせると椅子に座らせた。


「実力を測るのも終わった見たいだし作戦よろしくね」


シャリエルの言葉に頷くライノルド、そのまま椅子に座らず立ったまま机に両手を付くと彼は話し始めた。


「あぁ、シャリエルから聞いたと思うが作戦は至ってシンプル、アラサルの捕縛だ」


「捕縛……と言う事は絶対に殺してはいけないと言う事ですか?」


「出来るだけその方向で行きたい、だが相手はダイヤモンド級の強さを誇る、自分の命が最優先だ」


ライノルドの話を聞きながらメイドが持って来てくれた紅茶を飲もうとする、だが兜がある事を思い出すと隣のアルラに手渡した。


「くださるのですか?」


「今は気分じゃ無くてな」


そう言いアルセリスは言うとアルラは嬉しそうに紅茶を受け取る、今思えばこの兜の下はどうなって居るのだろうか。


このアルセリスと言うキャラクターはゲームを始めた時からずっと鎧を見にまとって居た、本来なら初期のアバターメイクがあるのだが俺の場合DLコンテンツの鎧姿キャラで始めた故にアバターメイクをした記憶がなかった。


この世界はもう仮想ではない……自分の元の顔が兜の下にあるのか、もしくは新たな顔があるのか……少し胸が踊った。


「セリス、ここまでは良いか?」


「え?あぁ、はい」


ライノルドからの突然な問い掛けに思わず適当に返事をする、その返答を聞くとライノルドは溜息を吐きもう一度説明をした。


「アラサルの拠点候補は三つ、エルフ族が住む森にある大樹の幹下、もう一つはセルナルド王国から北に100キロほど言った場所にある砂漠地帯、そして最後が東に500キロの位置にある元アルファンテ国跡だ」


「成る程、それで配置は決まってるんですか?」


「大方な、俺はエルフ族の森、シャリエルは砂漠地帯、セリスがアルファンテって感じだ」


その言葉にアルセリスは腕を組む、絶対に遠いからと言う理由で押し付けられた気がした。


だがアルファンテ跡は転移の杖に登録済み、その他の場所も登録してある故なんの問題も無かった。


ただひたすら並んで座り紅茶を飲み続けるサレシュとアルラ、その背後に一人の老人が姿を表すとライノルドはすぐさま膝をついた。


「これはセルナルド国王!どうされましたか?」


セルナルド国王、そう呼ばれた老人はニッコリと笑みを浮かべる、彼がこの国の国王なのだろうがそれにしては身なりが国王っぽく無かった。


国王と言えば勝手な想像だが赤いマントに豪華な装飾の施された杖と冠を被っているイメージ、だがセルナルド国王は木製の杖をつき長い白い髭を蓄えたどちらかと言えば魔術師の様な見た目だった。


「アラサルの件、大丈夫そうですか?」


「はい、彼、セリスも作戦に加わり問題は無いです」


「そうですか、それは良かったです」


その言葉を残し何処かへと去っていく国王、今の一瞬でサーチをしたがかなり病に身体を蝕まれている様子だった。


セルナルド国……ゲーム時代は三ヶ国とも均等なパワーバランスだったが見た所この国が1番財政から軍事力まで……全てに劣っていた。


正直この国が存在するのもライノルドお陰だった。


(ライノルドのお陰で国民は安心して暮らせる……その精神的支柱が無くなれば国民は絶望……か)


この国を傘下にするのは意外と容易いかも知れなかった。


「一先ず今日は顔合わせって事で解散だ」


ライノルドはその言葉を残すと国王を追って去って行く、そしてサレシュもフラフラっと何処かへと行くと中庭にはシャリエルとアルセリス、そしてアルラの3人だけが残っていた。


「解散と言われてもな」


クエストに行く気分では無く、とは言え王国に戻ってもやる事は無い……定期連絡では特に進歩の無ければ問題も無い、何もする事が無かった。


「セリス様、昼食でもどうですか?」


紅茶を飲み終わったアルラはそっとカップを置くと珍しく自ら進言した。


昼食……この兜の下も気になる故悪くは無かった。


アルセリスはその場で立ち上がるとアルラやシャリエルに何も告げずに歩き始める、それを見たアルラはいつも通り無言で後ろを歩く、だがシャリエルはついて行くべきなのか混乱していた。


「え、あ、ちょっと……1人にしないでよ!!」


城内にはシャリエルの元気な声が響き渡って居た。
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