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第12話 皇帝からの依頼

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端整な顔立ちに綺麗な金色の少し男にしては長い髪をした一人の青年が城のバルコニーで優雅に紅茶を飲みながら座って居た。


「君がオーガグランを倒した冒険者か、中々強そうじゃ無いか」


紅茶を啜りテーブルに置くと身体はバルコニーの外に向けたまま顔だけをこちらに向ける、不思議な雰囲気の皇帝だった。


皇帝にしては若すぎる、そしてこの風格……流石天才軍師アルシャルテと言った所だった。


「君の分も淹れようか?」


「いえ、お気持ちだけで充分です」


用意されていたティーカップを持って尋ねるアルシャルテにアルセリスは首を振った。


「そうか、残念だ……まぁいいアダムス、少し外してくれ」


「かしこまりました」


アルシャルテに退出を要されたアダムスは深々とお辞儀をしてその場から去って行く、そしてバルコニーにはアルセリスと皇帝の二人だけになった。


「このバルコニーから見える景色は美しいだろ」


そう言ってバルコニーから見える景色を指差すアルシャルテ、大小様々な風情ある建物が立ち並ぶ街、奥にはマゾヌ森林の深い緑、そしてその奥に雪山の白……確かに綺麗な風景だった。


「私が皇帝になってから2年、起きた戦争は5回、戦死者10万は下らない……この数字をどう思う?」


そう遠くを見つめ言うアルシャルテ、5度の戦争で死者が10万人と言われてもあまりパッとしなかった。


戦争なんてものはテレビだけでしか知らない、だが大勢の人が戦死するのは分かる……それ故にこの数字が多いと言うのだけは分かった。


「戦争の頻度が高いですね」


「そうだ、一年に2回のペースで起こっている、そして今年はまだ一回も起きて居ない……不審には思わないか?」


そう告げるアルシャルテ、今日の日付がログインした日だとすれば10月の中旬、確かに少し遅い気がした。


「確かに遅いですね……しかしそれが何か問題でも?」


依然として話しが見えて来ない、アルセリスは質問を投げかけるが何故ここに呼ばれたのか理解して居なかった。


「まぁ問題は特に無い……だが最近クリミナティの動きが活発でな、今のタイミングで戦争が起こるのは厄介なんだ」


そう言って紅茶を啜り一息つくアルシャルテ、クリミナティと言えば確かマスターの言っていた冒険者の成れの果て見たいな存在の裏ギルドの筈だった。


「さて、本題に入ろう……正直に言う、オーガグランを倒した実力を見込んでクリミナティを壊滅して欲しい」


「クリミナティの壊滅……ですか」


アルシャルテの言葉に少し驚く、確かにオーガグランを倒した……だが何処の馬の骨か分からない奴にそれを頼むと言う事はよっぽど切羽詰まっていると言う事だった。


精鋭部隊もいる筈なのに自分へと依頼した……つまりはそれ程クリミナティは強い組織と言う事、少しそれを利用させてもらう事にした。


「皇帝陛下に言うのは忍びないですが……一つ条件を付けても宜しいですか?」


「なんだ?」


「書庫への立ち入りの許可です」


首を傾げて居たアルシャルテにそう告げるアルセリス、すると拍子抜けの条件だったのかアルシャルテは笑った。


「はっは!書庫か、私の城に勤勉な奴が居なくてな、手に余ってた所だ、存分に使ってくれ!」


そう言うアルシャルテ、意外とあっさり要望が通り少しアルセリスは驚いて居た。


「それと依頼を受けてくれたのだ、城への立ち入りは自由に許可する何なら私の部下達も鍛えてくれて構わないぞ」


その場から立ち上がりそう笑って告げるとバルコニーから離れ中の皇室へと戻って行くアルシャルテ、見た目からは少しクールなイメージだったが意外にも明るい感じの好印象な青年だった。


アルシャルテはそのままアルセリスを残して何処かへと去って行く、それを確認するとアルセリスは耳元に人差し指と中指の二本を当てた。


『マール、聞こえるか?』


二本の指を当てた部分が白い光に包まれる、そしてアルセリスが喋ると次の瞬間大音量でマールの声が聞こえてきた。


『アルゼルズざまぁぁ!!何処に居るんですか!!』


酷く泣いている様子だった。


『どうしたマール!?何かあったのか?』


この世界に来て初めて声が少し荒っぽくなる、かなりの強さを誇るマールが泣く程の事……あまり想像できなかった。


『ざびじい゛です!!!』


そう告げたマールの言葉にアルセリスは少し思考が停止した。


マールが寂しいと言う理由で泣くとは思って居なかった……だが街に一人で残したのこちらの責任……少し罪悪感を感じた。


『す、すまないマール、だが今は聞いてくれ、次の作戦だ』


泣くマールを落ち着かせる、そして落ち着いたのを確認するとアルセリスは本題に入った。


『俺個人に皇帝がクリミナティ殲滅の任務を持ち掛けて来た、俺はその任務に取り掛かる、だからマールは国に戻って皆にある事を伝えてくれ』


『ある事……ですか?』


アルセリスの言葉に通信越しでも首を傾げているのが分かる声で尋ねた。


『アウデラスに俺の代わりをさせる、アウデラスの指示に従えとな』


『アウデラス様の指示に……分かりました!』


そう元気良くマールは返事をすると通信は途切れる、その途端にアルセリスは大きなため息を吐いてガッツポーズをした。


少しだがやっと自由になった。


国の事をずっと考えているのは頭が痛かった。


部下の掌握に加え次のまた次の動きまで考えないといけない先見性も必要……本当にトップと言うのはこれ程苦労するとは思いもしなかった。


そう考えるとこうして皇帝から指示をもらい依頼をこなすのは楽だった……だがそれと同時にアルセリスと言うキャラのプライドが邪魔をして居た。


アルセリスは威厳ある厳格なキャラ、仲間を大切に思い他者には容赦ない……その設定を守るのも疲れるものがあった。


「取り敢えず……書庫に行くか」


バルコニーでグッと伸びをすると空のティーカップに紅茶を注ぎ兜の口部分を開けてグッと一気に飲み干す、そして大きく息を吐くとバルコニーを出て書庫へと向かった。
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